カエルものカエル場所を探して

@akari615

第1話探し物なんですか?

アルドは水の都市、アクトゥールを歩いていた。

エイミの父であるザオルがエイミに用があるとかでエイミだけが未来に向かっていた。

アルド達も一緒にいくといったが、エイミいわく大した用じゃないと思うから

アクトゥールで待っててといわれたのでアルド達はアクトゥールを特にあてもなく歩いていた。

「ん? あの子、さっきからきょろきょろしているな。何か探しているのか?」

先ほどから辺りを見渡している少女が一人いた。

明らかに何かをさがしているような様子だった。

「……何か探しているのならば、手伝おう」

アルドは少女に近づくと優しく声をかけた。

「なぁ、そこの君、何か探しているんだよな? よければ俺も手伝うよ」

声をかけられたことに気が付いた少女は一瞬驚いたような表情をしたが声をかけたのが優しそうな表情をしていた、アルドだったので安心したようだった。

「お兄ちゃん、手伝ってくれるの?」

「ああ、それで何を探しているんだ?」

「カエルさんを探しているの!」

「カエル? カエルってあのケロケロ鳴くカエルであってるか?」

「そう、その、カエルさん!」

幼い少女がカエルを探すなんてアルドは驚いた。

アルドの周りのこの少女と同じくらいの子はカエルのことがあまり好きではなかった。

むしろ毛嫌いするほどだった。

だから自ら探そうとする少女に驚いた。

――まあ、でも、いろんな趣味の子はいるし、そんなに変でもないのか?   

           

「それで、どんなカエルを探しているんだ?」

普通のカエルなら問題はないが何か目的があって探しているのならば特徴を聞いておくほうがいいとアルドは判断したから聞いたのだが、思いもしない特徴が出てきた。

「人間ぐらいのサイズで喋れて、刀っていう東方の武器を携えているカエルさんを探しているの!」


――サイラスを探しているのか!?


まさかサイラスを探しているとは思わず、驚いてしまった。

「どうして、そんな大きいカエルを探しているんだ?」

「私のお父さんが無事にカエルことができるようにってと思って……」

「無事に帰ってこれるように?」

「そうなの! 私のお父さん漁師で今は海に漁に出ているの!」

「それとカエルに何の関係があるんだ?」

「たぶん、その子は東方に伝わる伝承を少し知っているのでござろうな」

「サイラス⁉」

「なにやら、アルドがそこの幼子と話しているのが見えたゆえ、気になったのでござる」

「あー探していたカエルさんさんだ! お兄ちゃんの知り合い?」

「ああ、旅の仲間だ」  

「そうなんだ、じゃあ一緒にお父さんの帰りを待ってもらうわけにはいかないよね」

「確かにそれはムリでござる、その代わりといってはなんでござるが、カエルさんの置物を用意する、それで納得してくれぬでござるか?」

「えっ、いいの? 大きいカエルさんが無理なら他のカエルさんを探そうと思っていたんだけど……」

「拙者、父君の帰還を願う、幼子の心意気に感動したゆえ」

「ありがとう!」

不安そうにしていた少女は少しだけ安心したのか微笑んだ。

そんな彼らの傍に女性が近寄って、少女に話しかけた。

「アニー、こんなところにいたのね、お母さんが探していたわよ」

「あっ、お姉さん! もしかしてそろそろお手伝いしないといけない時間?」

「そうよ、あなたのお母さん、カンカンに怒っていたわよ」

「どうしよう、もうそんな時間なんだ……」

先ほどは違い、母親の怒りに身体を震わせておびえている。

「大丈夫、あとは拙者達に任せるでござる。かならず届けるでござるよ」

「本当?」

「本当でござるよ、安心して母君のお手伝いをしてくるといいでござるよ」

「ありがとう、親切なお兄ちゃんと大きいカエルさん」

少女は手を振って、母親の手伝いをするためにこの場から離れた。

この場には少女を呼びに来た、女性だけが残った。

その女性は嬉しそうにアルド達に話しかける。

「アニーの話相手になってくださってありがとうございました」

「別に大したことはしてないよ」

「アニーの父親が行方不明になってから、あの子はふさぎ込んでいたから」

「あれ、あの子の父親は漁に出ているって話じゃ?」

女性は少し言いづらいそうに口を開いた。

「……あの子はそう言っていたんですね」

「ということは……」

「あの子の父親の船が大破している状態で見つかったんです。」

大破している状態ということは乗っていた人物は助かったとは思えなかった。

「よく似た船という可能性はないのか?」

アルドはもしかしたらよく似た船だったのではないかと思い聞いた。

「それはありえません、大破した船にはあの子の父親が描いたカエルの絵が入っていたので。ただあの子の父親自身は見つかっていないので、行方不明という扱いになっているのです。……早く見つかるといいのだけれど」

そういった女性はとてもさみしそうな表情をしていた。

「教えてくれてありがとう」

「いえ、こちらとしてはアニーが少しでも気がまみれえたみたいでうれしかったわ」

「あの子のことを大切にしておられるのだな」

「ええ、血はつながっていないけど妹みたいに思っているから、だから今回のことは私も心を痛めているの……」

「そっか」

そこまで話して女性も用事があるようでこの場から離れた。

「サイラス」

「探すのはやめないでござるよ、約束したゆえ」

「探すのは賛成だし、俺も手伝うよ」

「助かるでござるよ」

「いいよ、あんな話を聞いちゃったら、ほっとけないし」

「アルドはお人好しでござるな」

「それはサイラスもだろ?」

「アルドほどではござらんよ、とりあえず、カエルの置物については少し心あたりがあるゆえついてきてくれるでござるか?」

「わかった」

アルドはサイラスに連れられて、この場から移動した。


「ここは……」

「いまさら紹介する必要はないでござるな」

「パルシファル宮殿か、ここにカエルの置物があるのか?」

「あるはずでござる」

「あるはずって……」

「東方の言い伝えを雑談交じりにラチェットに話したら興味を持ったみたいでラチェットがカエルの置物をすこし集めていたのでござるよ」

「なるほど、手に入れた場所を聞いて、その場所で手に入れようってことか」

「そうでござる」

サイラス達は話をしながら、宮殿の中を進み、ラチェットがいる部屋に向かった。


ラチェットがいつもいる部屋に入るとラチェットはいつもと同じようにいた。

入違ったりするかと心配したが、いたのでアルド達はラチェットに挨拶をした。

「ラチェット、久しぶり!」

「あらサイラスとアルドじゃない、どうしたの?」

「実は……」


アルド達は先ほど、アクトゥールで起きた出来事を彼女に話した。

彼女はそれを 聞くとあっさりと言った。


「そういうことなら、置物を譲るわ」

「助かるでござる」

「でもいいのか?」

「もちろんよ、ただ置物は今手元にないの」

「なんと!?」

「どこにあるんだ?」

「ラトルの商人が持っているの」

「なんでまた?」

「もともと私が持っていた置物が少し壊れちゃっててね、それを直せる人を探してもらっていたのよ」

「なるほど」

「しかし、壊れているものをあの子に渡すわけには……」

「サイラス、最後まで話を聞いて、誰も壊れたものをあげるとはいってないわ、それとは別にカエルの置物を頼んでいたのよ。それでその置物が手に入ったからっていう手紙が昨日届いたのよ、だからその新しく買ったほうを女の子にあげて」

「……ラチェット、恩に着るでござる!」

サイラスはラチェットに頭を下げた。

「気にしなくていいわよ、だいたいそんな話を聞いてほっとけないわ」

微笑みながら彼女は話を続けた。

「ただ今から用事があるからラトルまでいけないのよ。だから申し訳ないけどサイラス達が取りに行ってほしいの、それでそのまま、その女の子に渡してほしいの」

「あいわかった、それでラチェット、すでに商人に金を払っているでござるか?」

「まだね」

「わかったでござる、ではこちらで払っておくでござる。それともう一つ、聞いておきたいことがあるでござる。またカエルの置物を商人に頼むでござるか?」

彼女は少し考えたあと、答えた。

「一応頼んでおいて、もともともう一個ほしいと思っていたから頼んだんだし」

そういいながら彼女は懐から取り出した紙に何かを書いてから、サイラス達に手渡した。

「これは?」

「あなた達が私の代理ってこと書いた紙よ、あの商人しっかりしているから本人以外が取りに行くとお金を出しても物を引き渡してくれないから、まあそういう意味でも信頼できる商人よ」

「確かにしっかりしているな」

「ラトルでも一番の商人って言われてるらしいわ、さてと私はもう行かないといけないからこれで失礼するわね」

「気を付けて行ってくるでござるよ」

そういって彼女はこの場から離れた。

彼女を見送った後、サイラスはアルドのほうを向いた。

「さて、アルド、聞いたとおりにラトルの商人のところに向かうでござるよ」

「ああそうだな!」

アルドがうなずき、サイラスと共にラトルの村に向かったのであった。


ラトルは火山が近いので他の場所と比べて暖かく過ごしやすい場所でいつも活気にあふれているが今はいつもの活気とは質の違う雰囲気が漂っていた。

妙にざわついていた。

「なんかおかしいな、いつものラトルと違う」

「そうでござるな、何か周りが不安を感じているようでござる」

「そうだよな、少し聞いてみるか」

アルドはあたりを見渡し、人が集まっているのを発見した、アルドはその集団に近づき立っていた若い男性に声をかけた。

「なにかあったのか?」

「……あんた旅の人か?」

「そうだけど」

男性は少し悩んでからアルドに説明した。

「実はここを拠点に商売している商人が仕入れのために火山に続く山岳に行ってからもう二日も帰ってきていなくて」

「仕入れに時間がかかっているのでは?」

サイラスは至極当然のことを口にした。

男性もその可能性を疑っていたが商人の人柄をおも出し、機微を横に振って否定をしながら言葉を続けた。

「そうも思ったんだけど、その商人と約束した人がいて、その人が約束の時間に来ないから知らないかという話になってね。あの商人は約束は守る人だからさ」

「なるほど、だから何かあったのかもって雰囲気になっているのか」

「そうなんだよ、ただのうっかりならいいけど、心配だからみんなで探しに行こうと集まっていたんだ」

事情をはなしてくれた男性は心配そうな表情を浮かべた。

「確かにそれは心配だな」

アルドは不安そうに目を伏せたあと、男性の顔を見て、力強く言った。

「よし俺達も探すのを手伝うよ!」

「いいのかい!?」

「ああ、実は俺達も商人に用事があったからさ、それに困っている人を見捨てたくないし」

「助かるよ! それで君達は腕が立ちそうだし山岳の奥のほうを見てきてほしいんだ」

「わかった」

「申し訳ないけど頼むよ」

そういった男性はアルド達に簡単に商人の特徴と名前を教えてくれた。

それを簡単にメモをして、山岳に入る準備をした二人は山岳に向かっていった。

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