マグマ溜まり + カスの嘘

 昆虫がどこから来たのかは、実は未だによくわかっていない。昆虫に至るまでの「進化の途中」の化石が見つかっていないのだ。

 昆虫は昆虫の姿のまま、生物の歴史上に突然現れた。


「オ〜イ、そろそろ引き上げるべや〜!」

 隊長の声が広い洞窟にこだまする。今日の採掘はここまでだ。

 石英、雲母、角閃石。採取されたさまざまな鉱物をもって、鉱夫の一隊が引き上げようとしている。


地中には土砂崩れや熱水の噴出など様々な危険があるが、基本的に生物に関する危険は地上や海中に比べるとそれほどはない。

だから、過去のマグマ溜まりであるこの洞窟での採掘において、何かに襲われる危険はない、と隊は安心しきっていた。

ジリ。ジリ。

隊の後ろで何かが動く音がする。


昆虫の大きな特徴は、その外骨格だ。骨が内蔵を包んでいるような、つまり哺乳類などと比べると逆転した形を取っている。

その外骨格が発生するにはどのような環境が必要であろうか。

そう。高い圧力だ。


隊の混乱する声が響く。虫。虫。虫。巨大な虫から小さな虫まで、見たこともない生物群に隊は襲われていた。


昆虫は昆虫の姿のまま、生物の歴史上に突然現れた。それは、高圧の地下に長らく潜んでいたからであると、今では考えられている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る