生乾き
梅雨は嫌いだ。
洗濯物を干す気力がなくて、洗った後のそれが洗濯機の中に積もっている。
それが梅雨の微妙な暖かさとあいまって最悪な匂いを発していた。
俺は中途半端なあくびをする。
朝から何も食べていなかった。
調理をするなんて面倒なことができるわけがない。たしか一昨日買ってきて残した寿司が冷蔵庫にあったな。魚だからやばいかな? まあ大丈夫だろ。
で冷蔵庫見たら2個しかなかったので足りん、と思って古いご飯チンして卵かけて食った。奥に春巻きがあるのも発見したので食った。
全部足が早い食品だったのでさすがにやばいかと思ってビールで流し込んだ。これで大丈夫だろ。
なんもやる気が出ん。俺は床に寝転んで、固まる前のコンクリートのように重力に身を預けた。
インターホンが鳴る。めんどくさいので口元でだけ「あ〜い」と言って応対はしなかった。
パソコンをつけ、YouTubeをつける。推しのVTuberがライブ配信しているのを見つける。クリックする。何も考えていなくてもここまではできる。ルーティンだ。
歌配信だった。しかも何周年記念だとかなんだかで、歌も(演奏まで!)ライブだった。
小憎らしいその笑顔と八重歯がかわいい。
普段よりも露出度の高い衣装からチラ見えする太ももに俺は唾を飲み込む。
こんな張り合いのない日々が明日も明後日も続いていく。
つまり、
生暖かい気温で生乾きの匂いの充満した部屋で俺は生あくびを噛み殺す。
生魚と生卵と生春巻きを生ビールで流し込む。
生コンクリートのようになった俺は生返事をする。
生意気な推しの生放送で生歌と生演奏を聞き、俺は生足に生唾を飲み込む。
そんな生易しい日々が明日も明後日も続いていくのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます