師は剣と共に②
ガイルが玄関へ向かうと、ルイネス王国騎士団の鎧を纏った、銀髪の青年が立っていた。
「お前は、何処かで...」
「ガイルさんですね?ここでヴィル氏、僕の父を殺害した暗殺者を匿っている、という情報が入り参上しました。」
「お前、ジールか?大きくなったな。歳は?いくつになった?」
「21になりました。」
「そうか。取り合えず入れ。話は中でしよう。」
ガイルは、ジールを中へ招き入れる。
「ガイルさんは、父の暗殺についてはご存じですか?」
「あぁ、知っている。こいつが教えてくれた。」
そう言って、そばに立っているジンを指さす。
「そちらの方は?」
ガイルとジンは、お互い目を合わせる。
ジンが軽く、しかし力強く頷く。
「こいつはジン、暗殺部隊『ナンバーズ』の元隊員だ。」
「ナンバーは...」
「
ジンは、気まずそうに顔を背ける。
「あんたが....あんたが父を.....、何故だ!!何故殺した!!」
ジールは、先ほどまでの落ち着きから想像出来ないほど怒り狂い、今にもジンに斬りかかろうとしていた。
「落ち着け!ここでの面倒は、俺が許さん!」
ガイルの一言で、ジールは少し落ち着く。
「いいか?よく聞け。ジール、お前は何故殺されたか考えてみろ。ジン、お前は何故ヤツが死んだか分かるか?」
「....分かりません。」
「俺にも分からん!」
「「は?」」
ジンとジールは気の抜けた顔をする。
「あいつの考えることなど知らんわ。だが....」
ガイルは、少し考える素振りを見せた後、話を続ける。
「お前たちに、どうにかして欲しかったのだろうな。」
そう言って立ち上がり、工房からある物を持って来た。
「あいつから預かったものだ。」
一振りの剣を見せる。
「それは!」
「あいつが、王の命により作った"宝剣と呼ばれているもの"だ。」
「何故、父の剣がここに....」
「死ぬ間際、ジンにあいつが託した。お前ではなく、ジンにだ。」
ガイルは、ジンがここに来た時に事のすべてを聞かされていた。
「まったく...面倒事を持って来やがって....」
「何故.....」
「あ?」
「何故、僕ではなくこいつに!」
「当時のお前には、荷が重すぎると思ったんだろ。そして、時が来れば剣と一緒に事実をジンに話させようとしたんだろ。........だが、お前は感情に流された。父親の跡も、想いも継がずに!」
ガイルの言葉には、怒りがあった。
「お前は父親を侮辱したんだぞ?それにその様子だと復讐の為に騎士団に入ったんだろ?」
ジールは頷く。
「継がなかった事もそうだが、騎士団への入団理由も騎士道を馬鹿にしている。ルイネス王国の騎士道の教えは何だ?」
「えっと....『剣は人を制する。鎧は己を制する。』です。」
「お前はそれを、自分の復讐の為に使っているんだぞ?お前の考えは余りにも、未熟だ。」
ジールは目を伏せる。
「さて、少しは頭が冷えただろう。」
「「........」」
「さっき、ジールに聞いたルイネス王国騎士道の教えだが、ここを出る時、ヴィルにも聞いたことがあった。騎士は教えを信じるが、お前は何を信じると聞いたら、『俺は僕の道具を使う人を信じます』と。くせぇ言葉だと思ったが、それがこんな形になるとはな....」
そう言って、剣を撫でる。
「感傷に浸ってはいけないな。さて、あいつが残した仕事を片付けるか。」
ガイルは、奥からもう一本の剣を持ってくる。
その剣は装飾は綺麗だが、剣自体は年季が入っていた。
「それは?」
「ジール、お前は知らないだろうが、この剣が宝剣だ。毎年手入れを頼まれていてな。」
「え?」
「ジン、お前は見たことあるだろ?」
「はい。よく、前国王が手元に置いてました。」
「ルイネスの宝剣というのは本来、先祖代々受け継がれ、人を導くとされる。戦いに使うのはあり得ない。」
「じゃあ何故ヴィルさんに?」
「ヴィルの剣は、宝剣ではない。"聖剣となりえる剣"だ。そして、現国王はこれに加護を付け、聖剣にし、また戦争を起こして世界征服を行おうとしている。推測としては、妥当だろう。」
「それが本当なら、早く本国に帰って止めなければ!」
「証拠も無しに行ってどうする。」
そう言って、ガイルは近くの小窓に待機している伝書鳩に、殴り書きした手紙を持たせ飛ばした。
「すぐ返事は帰ってくるだろう。帰ってきたらすぐに出るぞ、準備しとけ。」
「「どこに?」」
「決まっているだろ。ルイネス王国だ。」
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