師は剣と共に①

アガート山脈。


北にルイネス王国、東に東アガート王国があり、西側に海が広がる巨大な山脈。


その麓に、ガイルという男が住んでいた。


「よっこいせっと。」


ガイルは木材を運び終え、家へと帰る。


「おい!、坊主!いつまで寝てやがる!早く起きねぇと氷水に漬けるぞ!」


家に入るなり、怒鳴るガイルに返事が返ってくる。


「今行きます!」


声の主が、2階から降りてきた。


「坊主、朝飯の準備だ。」


「僕には、ジンという名前があるんですけど.....」


「じゃあ"人殺し"の方がいいか?」


「それは....」


「嫌なら早くしろ!」


そうして、朝食を済ませたガイルは工房へと足を運んだ。


鍛冶師であるガイルの元には、多くの仕事が来ている。


「さて、今日はルイネスのところの依頼を済ませるか。」


ガイルが、作業に取り掛かろうとしていると、工房の扉が叩かれた。


「ガイルさん、お客様が来られてます。」


「分かった。坊主は材料でも取ってこい。」


そう言って、客間へと向かった。


「久しいな。」


「お久しぶりだね。」


フードを深く被っていて顔は分からないが、座っていても分かる、高身長とそのやさしい声色で誰なのかはガイルには判別できた。


「で、何のご用件で?」


「最近、物騒な噂を耳にしたんだ。」


その言葉と同時に、お互い真剣な雰囲気になる。


「ルイネス王国の王が交代したのは知っていいるだろ?その交代した新国王が、また戦争を始めるんじゃないかと噂されているんだが、君は何か知らないか?」


「俺は政治家じゃないし、そもそも関係の無いことだ。」


「関係無いことはないだろ?お得意様だし、何よりお弟子さんがいるだろ?」


「あいつは、死んだよ。」


「........そうか、それは残念だな....」


フードの男は目線を下に向けた。


「彼とはもう少し、話がしたかったが、病気か何かか?」


「いや、殺された。」


「殺された?誰に?」


「国にだ」


「なぜ?」


「知らん」


「確か、彼には息子さんがいただろ?彼は無事なのか?」


「知らん」


「そうか、無事か」


「おい、勝手に人の心を読むな。」


「だって、素直に答えないじゃないか」


フードの男は、口を尖らせながら答える。


「これだからエルフは....」


「フフッ」


場の雰囲気が少し緩み、話題を変える。


「新しいお弟子さんはどうだい?」


「俺は、あいつ以外に弟子を持った覚えは無い。」


「そんなこと言って....、ジン君だっけ?良い子じゃないか。」


「どこが.....」


その後、少し話をして男とは別れた。


夜、ガイルは工房で一人、黄昏れる。


「こんな物を持って来やがって.....」


「ガイルさん、お客さんが.....」


「なんだ?今日は客が多いな...」


玄関へ向かい、扉を開ける。すると、銀髪の騎士が立っていた。

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