アサシンは闇へと消える②
翌日の夕方、僕はヴィルさんの店へと足を運んだ。
カランカラン
「すまねぇが店は.......ん?」
「遅い時間にすみません。」
「君は.....」
ヴィルさんは作業の手を止め、僕と向き合う。
「君に会ったのは、終戦後のあの日以来だったな。それで?ナンバーズの君が、何の用で?」
「ヴィルさんは、宝剣が盗まれたのはご存じですか?」
「いいや?、まず盗まれたも何も、まだ献上の儀すらしてないぞ?」
聞いていた話と違うので、ヴィルさんに事の発端を話した。
「何故だ?.....何が目的だ?.....。」
ヴィルさんは何か引っかかるのか、呟いていた。
「ヴィルさん、この国を出られたほうが......」
「君はどうする?]
「あなたを殺したことにして、宝剣を王に渡します。」
ヴィルさんは、少し声を大きくして言った。
「それはダメだ。あの剣にはまだ、やり残していることがある。」
そう言って、奥から剣を取ってきた。
その剣は、煌びやかで、刀身は赤く、ほのかに光っていた。
「それが、宝剣ですか?」
僕は、思わず見とれてしまった。
「あぁ。まだ、名前は無いがな....。」
ヴィルさんは、剣を見つめる。ただ、その目は悲しそうだった。
「この剣の名前は、息子に決めさせようと思っていたのだが、仕方がないな。君の
名前を聞いてもいいかな?」
「ジン。ジン・アルビオ、21です。」
「そうか.....。ジン君、私を殺してくれないか?」
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「今、息子は出かけているから大丈夫だ。」
「.........本当にやるんですか?」
ジン君を説得し、自分を殺してもらうよう頼んだ。
「なるべく苦しまないようやってくれよ?本業なんだろ?。」
軽く冗談を言いながら、ジン君の武器に目が引っ張られる。
「ジン君、その短剣を見してもらえるかな?」
「はい。」
ジン君の手から短剣を受け取る。
「ほう。いい武器だ。これを作ったやつは、君のことを余程、心配しているようだな。」
ジン君は少し笑う。
「この短剣で殺されるなら本望だ。」
お互いの準備が整い、向き合う。
「もう、老いぼれが歴史を動かす時代じゃない。次は君たち若者の時代だ。ジン君、」
はい、と言う彼の眼は今にも泣きそうだった。
「後は頼んだ。」
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僕は今日も、エミリーの店へと足を運んだ。
「ジン、おかえり。」
「うん。」
「どうしたの?」
「今日は、お別れを言いに来た。」
「!?」
「僕は、この国を出る。もう会えない。」
エミリーは、悲しそうにこちらを見る。
「どうして?」
「言えない。」
「どこに行くの?」
「アガート山脈に行く。」
「私も行く。」
「ダメだ。君には、ナンバーズの皆を見てもらわないと。」
「けど.....」
「ある人との約束なんだ。ごめん。」
「そう.....なの....。」
エミリーは、うつむいて手を強く握っていた。
「じゃあ、もういくよ。」
店から出ようとすると、
「ジン!」
「?」
エミリーは顔を赤く染めながら、モジモジしていた。
「す........す.......」
「??」
しばらくモジモジした後、今までに無い笑顔でこう言った。
「いってらっしゃい。」
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