子は何をおもう①

父さん、僕はどうすればよかったのでしょうか...


間違ってませんか?


やはり、失望されておられるでしょう....


あれは忘れはしません。


献上の儀の数日前でしたね。


僕が、買い物から帰って来て工房に入ると、父さんが倒れていて、頭が真っ白になりました。


葬儀が終わり、無力感に襲われました。


それからは、あっという間でした。


あっという間に月日が流れ、あっという間に世界が変わりました。


けれど、僕の心は変わらなかった。


復讐という、一心で生きました。


復讐の為に家業である鍛冶師を捨て、騎士団に入り、そしてやっと犯人の手がかりを得たときは、歓喜極まりました。やっとかたきを討てると。


しかし、情報を聞いたときは驚きました。


父さんの師匠である、ガイルさんの家だったのですから。


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僕はガイルさんの家へ訪ねた後、色々あってガイルさんとジンさんと共に、ルイネ

ス王国へ馬を走らせていました。


そして、あることを聞きました。


「ガイルさん?」


「ん?」


「父の修行時代の話をしていただけませんか?」


「断る」


「えー、なぜです。」


「なぜ俺自身から話さなといけねぇんだ。」


「それもそうですけど.....」


「なら、一つだけ話してやる。奴が弟子になって、少し経ったときにあることが起きた。」


僕は、ガイルさんの言葉に聞き入りました。


「ある日、奴と材料を取りに山頂へと向かったんだが、途中で熊のような魔物に遭遇した。そこまで強くない魔物だったから、奴にやらせてみたんだが......、面白いようにボッコボコにされてな。フッ、今でもあの腫れあがった顔を思い出すと、クフフッ、笑えてくる。」


ガイルさんは、笑うのを我慢しながら話してくれました。


「父にも、弱い時があったのですね。」


「そりゃあ誰だってあるだろ。なぁ?"人殺し"?」


「その呼び方、止めてください。」


"人殺し"と呼ばれたその人、ジンさんは父さんを、殺した張本人でした。


「ジール君と話しづらくなるじゃないですか!」


「気にされなくて良いですよ。僕は、あなたを許すと言ったんですから」


僕は、ジンさんから父さんの想いを、遺言という形で聞きました。


それを聞き、僕は後悔しました。『今まで自分は、なんて愚かで浅はかな事をしていたのだろう』と。


だから償いとして、そして野望を止めるため、それが僕がルイネスへ向かう理由でした。


それから暫くして、ルイネス王国領の辺境にある村で泊まりました。


そこの宿でジンさんと、父さんの話をしました。


「ジンさんは、いつ父さんと知り合ったんですか?」


「終戦後に友人と店へ訪ねたんだ。その時、ジール君とは入れ違いになっていたみたいだけどね。それで、その友人は鍛冶師をやっていてね。よく『ナンバーズ』の道具を作ってくれる人なんだ。だけど、本人は"腕"に自信が無いみたいだったから、王国最高の鍛冶師であるヴィルさんに、色々教えて貰いに行こうって事で訪ねたんだ。」


ジンさんに父さんが王国最高と言われ、とても誇らしかった。


「それと、帰る前にヴィルさんに自分の使っている武器を見せたんだけど、見ただけで僕が『ナンバーズ』だって分かったんだ。実際には言われなかったけどね。『1番目の人に、ルインとは仲良くしろと言っておいてくれ』って言われて分かったんだ。うちのリーダー、ルインさんとはあまり仲良くないみたいだから。」


そう言ってジンさんは、苦笑いをしました。


「じゃあ、お互い帰ったら挨拶回りで忙しくなりそうですね。」


「そうだね。」


ハハハッと笑っていいると、後ろからガイルさんの呼ぶ声が聞こえてきたので、会

話はそこで切れました。


王との謁見が、いよいよ明日になりました。


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