ズル
「たしかに俺もわるかったかもしれないが、ほんのできごころじゃねえかよ。たかが遊びでそんなにも怒るなよ」
友人があきれた様子で俺を宥める。
「いや、別に怒ってはないんだよ。怒っているというよりも驚いているんだよ……。まさかお前がそんなことをするとは思わなかったから」
俺がそう言うと、友人はあきれ顔で俺を見つめる。
「あのなあ、久しぶりに童心に帰ってジャンケンで勝った分だけ階段を上れる遊びを楽しくしてただけなのに、なんでそんなにムキになってるんだよ」
たしかにそうかもしれない。たかが子どもの遊びをしていただけなのだから、そんなにも躍起になることはないのだ。だが、やはり納得がいかない。
「いや、ムキになっているというか……」
このままでは子どもの遊びでムキになる大人げない人物と思われるだけだし、とにかく状況を整理するしかない。冷静に、先程起きたことについて確認していくことにした。
「お前、さっきパー出して勝ったよな?」
「ああ、そうだよ。だからパイナップルって言いながら上っただろ?」
「そうだな。でもな、お前パーで勝ったらパイナップルで何段上れるか、分からないわけじゃないよな?」
「そんなの誰でも知ってるだろ。パ・イ・ナ・ツ・プ・ル、6文字だから6段分だよ」
「お前ズルして6段以上上がっただろ?」
「だからほんのできごころだって言ってんだろ? ちょっとくらい多く上ってもバレないって思ったんだよ」
「ちょっとって……。お前結局何段上ったんだよ?」
「さあ、数えてねえからわかんねえけど50段くらいじゃねえのか?」
「それはちょっと多いでは済まされねえんだよ……」
「ぱぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃなぁぁぁぁぁっぽぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」と言いながら突然ものすごい勢いで階段を上り始めた友人にようやく追いついた俺は、まだ荒れた呼吸のまま、友人を追及するのだった……。
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