高級なお寿司屋さん

「へいらっしゃい!」

引き戸を開けて暖簾をくぐると、早速板前の威勢の良い声が聞こえてきた。ゆっくりとカウンター席に座ると、目の前にあるショーケースには活きの良さそうな魚が並んでいる。なるほど、さすが高級寿司店、雰囲気が違う、と感心してしまう。


「お客さん、何にしましょう?」

目の前に温かいお茶が置いてくれた板前が尋ねてくる。

「何かいいネタとかは入ってるの?」

尋ねると、板前はどや顔で返答してくる。


「へい、うちは新鮮さを売りにしているからそんじゃそこらのお店とは一味違うよ」

「新鮮なのは嬉しいね。どこで取れたんだい?」

「取れたというか、作ったのはこの裏の工房なので、本当にもう作りたてですよ」

「工房で作った?……」


「へい、この湯呑はつい先程完成したばかりの新鮮なものなんですよ。よくできてるでしょ?」

「湯呑……」

そう思って湯呑を見ると、たしかに味のある良い湯呑ではある。


「魚のほうの産地は?」

「魚の方はよくわからんですけど、その辺の海から獲ってきたんでしょうね!」

ガハハと豪快に笑う板前を見ながらお茶を飲む。湯呑にこだわるのなら、魚の方にももう少しこだわって欲しかった、なんて考えながら。

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