水が飛び出す不思議なひょうたん

「あれ? これは一体なんだろう?」

洗濯機がピーピーと洗濯終了の合図を知らせていたので、蓋を開けると中にはなぜか洗濯物と一緒にそれなりに立派な、水筒くらいの大きさのひょうたんが入っていた。なかなか珍しいものだし、せっかくだから友達に見せてやろうと思い友人の家へと向かう。手ぶらにひょうたんだけ持っているという随分変わった恰好をしていたから時折すれ違う人からチラチラと見られながら歩く。


友人の家に向かう途中の道路はイベント中なのか知らないが、歩行者天国になっていた。普段よりも随分と人が多くて歩くのも大変である。何十人もの人とすれ違いながら先を急ぐ。すれ違う人が増えれば当然手ぶらにひょうたんという変わった格好をチラチラ見てくる人の数も増えて恥ずかしい。とにかく急いで向かおうと早歩きで歩いていると突然ひょうたんから水が出てきた。力もかけていないのになぜ水が出るのかと困惑していると、真正面から歩いてきた男の人から声をかけられる。


「あの……」

男の人が着ていた白いポロシャツを指さして見せてくるので何があるのかと思い見てみると、服にひょうたんの水がかかってしまっていたのがわかった。

「え、あ、す、すいません!!」

慌てて謝ると、男の人がゆっくりと首を振った。


「いえ、謝らなくても大丈夫です。そのひょうたんの水一体何が入ってるんですか?」

何が言いたいのかよくわからず首を傾げていると、男の人が言葉を続けた。

「僕の服にさっきまでミートソースが付いてたんですよ。食事中にうっかりつけてしまってどうやって落とそうか悩んでいると、その水がかかって突然汚れが落ちたんです」

そう言われて、もう一度ポロシャツの水のかかった位置を見てみるとミートソースがかかっていたのか分からないくらいに綺麗になっていた。


「いやー助かったなー」と言って去っていく男の人の背中を見送り、先を急ぐ。それからも時々汚れに反応しては突然ひょうたんから水が飛び出しては綺麗にしていく。細かい服の汚れに反応して次々と水が出て行くので、地面は水浸しになってしまっていたが、暑い日だったので、打ち水代わりにもなるし、服も綺麗になったからみんな感謝してくれた。


その後1Kの間取りのアパートの3階にある友人の家へと向かい呼び鈴を押すと、友人が忙しそうにしながらドアを開けてくれた。

「よお、今衣替えしてて忙しいんだよ」

玄関から直接部屋の中が見える間取りの友人の家の中には確かにたくさんの服が散らばっていた。

「衣替えか、それは大変そうだな。邪魔したら悪いから俺は帰――」

その瞬間ひょうたんから飛び出した大量の水がものすごい勢いで服へと飛び出していった。床がびしゃびしゃになり周辺の部屋に住んでいる人たちに怒られたことは言うまでもない。

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