牙チョコ①
「先輩それ何食べてるんですか?」
講義が終わりサークルの部室に行ったら先輩がお菓子を食べていた。机の上に置かれたスナック菓子の袋は今まで見た事のないような物だった。
「牙チョコだよ」
「牙チョコ?……って何ですか?」
「なんかコンビニにあった。新製品みたい」
サクサクと音を立てながら先輩はその牙チョコというお菓子を口に入れていく。言われてみれば動物の牙か何かに見えなくもない見た目をしていた。大きさは3cmくらいの一口大で食べやすそうだ。
「1個食べる?」
そう言うと先輩は「牙チョコ」とパッケージに書かれた袋をこちらに向けてくれたので、お言葉に甘えて1つ食べようと袋に手を入れてみる。
「それ、100個に1個本物の牙が入ってるみたいだから気を付けてね」
「え? 本物の牙ってめちゃくちゃ危なくないですか?」
「うん。だから気を付けてって言ってるじゃん」
「えぇ……」
まあ100個に1個だし当たらないだろうと思って食べてみる。
だが、その予想は外れた。ガチっと大きな音を立てて口の中で硬い物が割れた。
「先輩、これ牙でしたよ!」
「ほんとに?」
「ほんとですよ!明らかにさっきまで先輩が食べてたサクサクしたものとは別物ですもん!」
「じゃあちょっと口から出してみてよ」
そう言われるがまま真っ二つになった牙を取り出してみる。それを見て先輩はため息をついた。
「うん、それは牙じゃないね」
「でも硬かったですよ?」
「本物の牙を真っ二つに割れるくらいの勢いで噛んだら多分すごく痛いよ?」
「で、でも明らかに先輩のさっきまで食べてたサクサクした触感とは違いましたよ!」
そう主張すると先輩は失笑した。
「あのね、そもそも牙チョコはサクサクなんてしてないんだよ」
「え? でも」
「本物の牙チョコは柔らかいチョコで作られているからサクサクというかホロホロって感じで音も全然しないよ」
「じゃ、じゃあさっき先輩が食べてたのは……?」
「牙チョコの中に100個に1個入っている牙型ビスケットだよ」
「え?……」
「あとさっき君が食べていたのは多分牙チョコの中に100個に1個入っている牙型の飴だね。後他にも100個に1個の確率でかりんとうとか羊羹とか、大根の切れ端とか……あ、そうだチョコレートが入っている確率も100個に1個だね」
「それはもうお菓子の名称を変えたほうが良いかもしれないですね……」
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