フラッシュモブ

とある公園で男が女に告白しようとしていた。いつも静かなその場所が今日は珍しく賑わっていたが、そんなことを男は気にすることもなく気持ちを伝える。

「えっと、俺は前から君のことがす、す、……」

あと一文字加えようとしたその時だった。


「Fuuuuuuu!!」

突如として周りのひとたちが一斉に踊りだした。告白の時に突然周囲の人が一体感を持って踊りだすこれが何か、女も知っていた。いわゆるフラッシュモブというやつだ。そんな状況を理解して女は男に返答する。

「わたしさ、告白の時にフラッシュモブとか使うの、どうかと思うんだよね。告白くらい一人でしてきなよ!」

そういって女は男に背中を向けて歩き出した。

「待ってくれ、これは違うんだ!!」

だが、男の言葉に耳を貸すことなく女は公園から去っていってしまった。


告白に失敗した男はムッとしながらフラッシュモブに向けて言う。

「おい、どういうことだよ! なんで頼んでもないのに勝手にフラッシュモブを始めて人の告白の邪魔をするんだよ!」

フラッシュモブのチームリーダーも変なクレームをつけられてムッとして言い返した。

「自分が告白に失敗したからって言いがかりつけないでくださいよ! 僕らはちゃんと『明日の14時から第2公園で告白するからフラッシュモブをお願いします』って頼まれたから来たんですよ?」

「ここは第3公園だよ!」

「え?……」


ちょうど第3公園でとある男が振られたのとほぼ同時刻に、すぐ近くの第2公園でも男が女に告白をしていた。

「あの、えっと僕は君のことが前からす、す、す、す、す……」

「さっきからずっと『す』ばっかり繰り返してなんのつもりよ……」

ひたすら“すの字”を繰り返す男に呆れて女は帰ってしまった。第2公園で振られた男は一人首を傾げて呟いた。

「おかしいな、好きですの『す』の字を繰り返して言ったらフラッシュモブの人たちが出てきてくれるはずなのに、フラッシュモブどころか公園内に人がほとんどいないんだけど……」

おっちょこちょいなフラッシュモブ集団のせいで同時刻に2人の男が振られてしまったのだった……。

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