コネ面接

「では、以上で面接を終わります」

「失礼します」


就職面接が終わり、部屋を出た青年は余裕の笑みを浮かべていた。面接自体はとくに可もなく不可もなくという内容だったが、名古屋の支社で父親が部長をしている彼にとって、面接なんてやろうがやるまいが初めから合格なんて決まっているようなものなのだ。


「いやあ、コネっていうのは本当に便利だな」

そう言って青年は良い結果を楽しみにして帰っていった。


☆☆☆☆☆


「さっきの子名古屋支社の大田部長の息子さんらしいですね」

「ああ、大田部長か……」


面接が終わり、面接官をしていた社員2人が話していた。2人の脳裏には、本社にいた頃に社員へのパワハラが問題になって、本社に居づらくなり、自ら名古屋へと転勤願を出して問題をうやむやにした大田部長の姿が浮かんでいた。


「大田部長の子どもさんだったら、ちょっと性格に難があるかもしれないな……」

「可もなく不可もなくって感じで特に光るものもなさそうだし、上手いこと理由作って落としておきましょうか」

「そうだな」


コネというのは常に良い方向に向かうとは限らないのである。

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