母の日の花
「姉ちゃんは母の日に何かあげるの?」
「ちゃんとカーネーション用意してるよ」
そう言ってカーネーションの花束を弟に見せてあげる。
「姉ちゃん毎年黄色のカーネーション渡してるけど母の日のカーネーションって普通赤色じゃねぇの?」
私は毎年黄色のカーネーションを用意する。
「こっちの方がオシャレじゃないかなと思って」
「そんなもんかな」
「あんたにもついでに1本あげる」
そう言って花束から1本黄色のカーネーションを弟に手渡した。
「俺はいいよ」と苦笑しながらも一応受け取ってくれる、母親の深い愛を受けて育った優しい弟。
それに対して母の私への口癖は「弟はあんなにできがいいのに……」
私へ向けられる分の愛は全て弟に与えられていた。
子どもの頃は躾と称して真冬に一晩をベランダで越すこともあった。
それでも私は子どもの頃から母の日にはきちんと贈り物をしている。
弟が贈り物を渡しているのに私だけ何も渡さなかったら、また何を言われるかわからないから。
数年前の母の日に私は花屋に行ってカーネーションを選んでいた。
小学生の頃、私がどの色がいいのかよくわからず黄色いカーネーションを買おうとしていたら、
「お母さんに渡すんだったら赤色がいいよ」
と花屋のお姉さんは優しく教えてくれた。
「きいろはだめなの?」
私は気になり花屋のお姉さんに聞いた。
「軽蔑とか嫉妬とかそういうあまり良くない意味を表しちゃうから……、って君にはまだ難しいかな」
花屋のお姉さんは笑顔で教えてくれた。
それ以来私は母の日には黄色のカーネーションを渡している。
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