美味しいキャンプ飯
「ねえ、これってキャンプ飯って言っていいの?」
私は彼氏の慎司と共にキャンプに来ていた。慎司が、美味しいキャンプ飯を作るから楽しみにしとけよと言ってたから結構期待していたのだけど……。
「キャンプ場で食べたらなんでもキャンプ飯だろ」
慎司はそう言ってズルズルと豪快に、汁を飛ばしながら、スーパーで売っているカップ麺を頬張っている。
慎司が作ってくれたキャンプ飯というのは、なんの変哲も無いカップ麺だった。せめて具でも追加してくれていたり、麵ごとここで茹でてくれていたり、お皿にでも盛り付けてくれたらそれはキャンプ飯と呼んでも良いのだろうけど……。
こんなことなら、私がサンドイッチでも作ってくれば良かったと少しがっかりする。思ってたキャンプと違うし来るんじゃなかったという気持ちも湧いてくる。
「カップ麺なんてお湯入れるだけじゃないの。中身はほとんど工場で作ってるんだから、これじゃあキャンプ飯じゃなくて、工場飯よ」
「でもお湯は今キャンプ場で沸かしたんだからキャンプ飯じゃないか?」
キャンプ飯というより、キャンプ水よね、これじゃあ……。がっかりしながら、麺を啜るとなんだかいつもよりも少し美味しい気がしてきた。空気が美味しいからそう感じるのだろうか。それとも場所がこれだけ解放感溢れる場所だからかもしれない。周囲は明るい太陽に照らされて、緑が輝いていて眩しいし、そのおかげかもしれない。
「よく食べるカップ麺であってもこんな自然豊かな場所で食べたら、いつもより美味しいし良いだろ?」
どうやら慎司も同じようなことを考えていたみたいだ。なんだか悔しいから返事をせずにいると、慎司が付け足す。
「まあ、何を食べるかというよりもどこで誰と食べるかが重要じゃねえかなって俺は思うんだよな。美咲と一緒にこんな眺めの良いところで食べれば、普通のカップ麺もフランス料理みたいに豪勢な物に感じるよな」
そう言って慎司が私に向かって無邪気な笑みを浮かべてくる。そんなことを言われると、やっぱり慎司と一緒にキャンプに来て良かったなと思ってしまう。随分現金な性格だなと思いながら、カップ麺を啜った。
うん、やっぱりこのカップ麺、美味しい!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます