45.雪が降り始めた
昼を回る頃には街が白くなって、物音が小さくなった。
ラングハイム公爵家の、
明るい
夜会と言っても、夕方の早い時間から、招待客が集まり始める。特に
会場は、さすがに学校の
天井は二階分の高さで、内装も色とりどりでぴかぴかなのに、うるさくないのが不思議だった。
正面扉から入って一番奥、玄関広間みたいな両脇に広がる階段があって、上の
会が始まって名前を紹介されたら、
緊張は、していないと言えば
でも、もっと大きな覚悟が決まっている。
あたしは、いつ、どんな形でその時がきても良いように、頭の芯を冷静にしておくだけだ。
今日も、ぎりぎりまでギルベルタ達が調査を続けている。
船の
控え室の扉が開いて、
モニカさんは
「話は全部、聞いているわ。私ももう、立場はあなたと似たようなものだから、今日は招待客じゃなくて手伝う側に入れてもらったの。なにがあっても、支えになるわ」
「ありがとう、モニカさん……ランベルスも、リーゼも」
「カミルも、その辺をうろついている。なにかあれば、言ってくるだろう」
「イルマさまにも、なにもなければ良いのですが……」
あたしは
雪は、静かに降り積もっている。
アルフレットが、いたわるように、あたしの肩に
「
アルフレットの声に、控え室の外の、騒々しい声が重なった。
反応は、ランベルスが早かった。
「カミルだ。問題ない! 私の友人だ、その者を通せ!」
扉の向こうで、ラングハイム公爵家の使用人達だろう、ランベルスの大声にためらいがちの返事があった。
そして扉を
「ランベルス!
「よくわからんが、よくやった! その女性は誰だ?」
20歳を少し超えたくらいの、肩にかかる
「あ、あの……ヴァネッサ=カーラーと申します。ご、御無礼を承知で、お願い致します! ユーディット=ノンナートンさまに、お取り次ぎを……っ!」
「あたしよ。大丈夫だから、落ち着いて」
ヴァネッサさんに歩み寄り、しゃがんで手を取りながら、考える。
誰だろう。どこかで、聞き覚えのあるような気がする。
「ユーディットさま、小間使いの方です! イルマさまのお屋敷の!」
リーゼの声で、思い出す。
お姉さんみたいな
「私が……私が、間違っていたんです……っ! どうか、お嬢さまを……イルメラさまを……」
「最善を尽くすと、約束するわ。知っていることを話して」
ヴァネッサさんが、
「私……もうすぐ、結婚するんです。でも……その彼から、少し前に一通の
あたしは、目線だけをアルフレットに向ける。アルフレットが
「それを……お嬢さまの、
「イルマの
「はい……っ! 彼は、迷惑のかかるような物じゃないと……運んでもらうだけ、恩のある取引相手に頼まれて、断れなかったと……私、それを信じようと、思ってしまって……っ!」
ヴァネッサさんが、泣き崩れた。
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