40.なんでいるんだよ
液体燃料の燃焼効率も、
問題なのは、相変わらず自転車に乗れないあたしだ。仕方がないので、後輪を左右二輪、とにかく倒れない程度まで
古ぼけた自転車の後輪部分に、農機具用の小型の
不格好な馬車と言うか、お尻の大きい鳥の骨組みみたいだ。
合計三輪の自動自転車、いや、名詞が自己矛盾してるな。個人用の三輪自動車、か。
よく晴れた休日の昼前、あたしは自分の作品に、まあ、満足していた。いよいよ試乗だ。
「へー。ユーちゃん、変な物を作ってたんだねー」
「ユーディットさまらしい、と言うか、その……やること自体が個性的ですね」
「努力の方向性が
「
なんでいるんだよ、おまえら。呼んでないぞ。
あたしは、来て早々に庭に
こちとら、長くなった分、手入れしなければぼっさぼさの
取り
どうせまた、イルマがアルフレットと
アルフレットも、ああ見えて、子供っぽい
「ユーちゃん、そうやってると、男の子の職人さんみたーい。新しいときめきに目覚めそうだよー」
それは、正常な道に戻ったんじゃないかな。あたしが危険なことに変わりないみたいだけど。
イルマが視界の
イルマは落ち着いた
ランベルスは、たかが遊びに来るのにも
「あのね……どうして休日まで他人の家に来て、
「こっちの
「ユーディットさまの様子を見て来て欲しいと、頼まれたんです。やっぱり、特別、お気にかけていらっしゃるんですよ」
「ユーちゃんが緊張しないように、それなら内緒で行って驚かせようって、侯爵さまにもお願いしたんだよー」
なんてことしてくれてんだ! 最悪だ!
心臓止まったぞ、今! 多分!
「ちょ、ちょちょ、ちょっと! まさか、
「言えるか。適当に口裏を合わせておくから、本番にはもう少し
「た、助かるわ……!」
舞踏会の時も思ったけど、ランベルス、おまえ、ここぞって時に良いやつだな!
イルマは、もう、ほんと、いい加減にしろよ。
我ながら、
「
「そういうところが、ますます可愛いのよー」
こんちくしょう。泣くぞ。
いろいろあきらめて、四人がそろったお茶会の
座ろうとした瞬間、ランベルスが、飛び上がる勢いで立った。
どこに置いてあったのか、片手に、剣術の稽古道具としてもらった
すべるように、軽快に駆け寄った小さな人影と、がっちりと打ち合った。
「そういつまでも、小手先の奇襲に
「やるようになった」
おかしな世界を広げるな。
若干4歳のジゼリエル=フリード侯爵令嬢が、まっ白い砂糖菓子みたいなふわふわを着て、ランベルスと同じ
まっすぐな長い黒髪に、横一本線の
「こんにちは! 今日はお招きありがとう! 言っておくけど、本当に招かれてるからね」
「あれ? 仕事の来客があるってアルフレット言ってたけど、ギルベルタ達だったの?」
娘のジゼリエルと同じ、まっすぐな長い黒髪を背中でまとめた背の高い美人、ギルベルタ=フリード侯爵夫人が、屋敷の方から気さくな笑顔で手を振っていた。
隣には縮尺のおかしな筋肉怪獣、ウルリッヒ=フリード侯爵さまもいる。
これまた娘のジゼリエルと同じ、横一本線の
「ギルベルタ達なら、そう言ってくれても良いのに。変なの」
「今度の仕事は事情があってね、ちょっと特別なのよ。アルフレートなら、その内ちゃんと話してくれるだろうから、気にしないで放っときなよ」
相変わらず、ざっくりしてるな。
アルフレットが仕事の事情で黙ってたんなら、特別ってことも、今言っちゃ駄目なんじゃないかな。
きっと、ジゼリエルを連れてきたり、あたし達に顔を見せることも、もうおかしいんだろうな。後ろにもう一人いる男の人が、
見ると、40歳を過ぎたくらいで、髪の毛がだいぶ薄い。灰色の上下を着て、
だけど、あれ?
少し見覚えがあるような。
「げっ! お、親父っ?」
「なんだ、カミルか? おまえがなんで、ここにいる?」
「あっ! そうだ、ヤンセン博士だ!」
学術書で見た
カミルのお父さんで、聞いた話では女性観が
思わず大声で名前を言っちゃったあたしにも、じろりと厳しい目を向ける。
「これはどういうことかな、フリード侯爵夫人?」
「あれー? 言ってなかったっけ? カミルも、ここのユーディットも、娘の友達なのよ。あっちにはラングハイム公爵家の兄妹と、イステルシュタイン伯爵家の娘さんもいるよ!」
すごい悪い顔で、ギルベルタが笑った。
もう、事情もなにもあったもんじゃないな。
「それじゃあ私達は、特別な仕事の話があるから、ジゼリエルをお願いね!」
多分、ヤンセン博士主体の、研究がらみの仕事なんだろうな。
あたし達が訪問を知ったくらいでどうってこともないだろうけど、秘密にしておきたかった博士への嫌がらせなんだろうな。
ほんと、そういうところギルベルタも、子供っぽいんだから。
あたし達は顔を見合わせて、げんなりした感じのカミルの肩を叩いて、お茶会に戻った。
こういう時、空気を読まない4歳児の存在はありがたい。
すぐにまた、ジゼリエルがランベルスと元気な大立ち回りを始めて、あたしとリーゼは、よだれを
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