30.脳内警告音が鳴る
放っておいたら暗くなるまでやってそうだったので、適当に声をかけて、ジゼリエルとランベルスもお茶に呼んだ。
いつも夕食を
この家の料理長は、腕も良いけど、とにかく量を出すのが好きみたいだ。
食べるけど。
「そう言えば、そろそろ
ギルベルタが、なんだか
「今年も
「ええと……学校の公式行事ではありませんが、中央講堂を一晩貸し切りにして行われる、生徒自主企画の
隣で、リーゼが解説してくれた。ありがとう。脳内警告音が大きくなったよ。
「ユーちゃん、友達いないから、聞いてなかったんだねー。みんなでお
「大きなお世話だよ。そんな金持ちの
「全員参加っすよ。家族の
さっきの仕返しか、カミルが満面の笑みだ。腹立つな。
まあ、仕方がない。お父さんに一晩、死んでもらおう。
「ちなみに招待状は、実行委員が家に持参して確認するんで、
「ユーちゃんやみんなと、学校で
「
のんきなイルマとリーゼの言いように、ランベルスが
「一部に、そういう現象が見られたというだけだ。閉会後は実行委員が責任を持って全員を確認、
途中で逃げられもしないのか。変な汗が出てきたよ。
他の場所は閉まってるだろうし、講堂で一人、教本と
いかん。死ねる。
「楽しそうで良いねえ。私も一度は、参加してみたかったよ」
「ギ、ギルベルタは逃げ……参加したことないの? どうして?」
さすが、頼りになるぞ。
「私とアルフレートは女子を集めすぎるってんで、出入り禁止だったのよ。実行委員に、頼むから来ないでくれって、土下座されてさ。仕方がないからアルフレートを遊びに誘ったんだけど、生意気に先約があるって言うのよ。無理矢理ついて行ったら、そこでウルリッヒに出会ってさ。あの時はまさか、旦那になるなんてねえ」
駄目だ、自慢とのろけだ。なんの参考にもなりゃしない。
どうしよう。そんな
「……実行委員は、当日も運営の事務作業に追われる役回りで、候補者が少ない。手伝うか?」
「やるっ!」
ランベルス、おまえ良いところあるな! 口が裂けても言わないけど!
よっぽどの顔をしていたんだろう。ランベルスの目が、可哀想ななにかを見る目だった。
「ユーディットさま、実行委員の方は当日、軍服に似た
「えー、素敵ー! ユーちゃん、その格好で私と踊ってよー。約束ねー」
リーゼとイルマが、好き勝手に平和なことを言う。こっちは死地から生還したばかりだよ。すぐには、言葉を返す余裕もないわ。
「いいんすか? せっかく、婚約者さんの目が届かないところで、
ほとんど同時の、多分、
「お母さま、私も行きたい。楽しそう」
あたし達が学校の話をしている間、おとなしくお菓子を食べていたジゼリエルが、ちょっと恥ずかしそうに主張する。
すっかり、あたし達の一員のつもりだな。可愛いな。
「お。良いこと言ったね、ジゼリエル! 十年越しのお礼参りに、アルフレートにも声かけて、のり込むか!」
「ちょ、ちょっと、ギルベルタ?」
「大丈夫、アルフレートのつき
いや、別に、実行可能かどうかを言ってるわけじゃなくて。
まあ、いいか。卒業生だし、見つかっても教授陣に知り合いくらい、いるだろう。
なんだか大きな話になってきたけど、こうなったら開き直って、立派な仕事をこなしてやる。来年も再来年も実行委員だ。逃げ切るぞ。
浮かれている連中を尻目に、あたしは全力で後ろ向きの決意を固めていた。
**************
それからも盛り上がって、帰り際は、もう暗くなっていた。
あたし、イルマ、ランベルスとリーゼは、
「大した手間ではない。ついでに送っていく」
「いやいや、公爵家の車なんて、堅苦しくって乗れやしないよ。それじゃ
カミルだけは、なんでもない顔で、一人で歩いて帰った。
あたしだってノンナートンの家にいた時は、もっと遅くまで出歩いていたし、男子が気にする時間でもないだろう。
そう普通に思っていたから、ギルベルタが小声であたしだけに話しかけてきた時、正直、
「ねえ。あのカミルって子、少し変だった?」
「そりゃ、変な奴だけど……いつもと違って、てこと? あたし達が知り合ったのは昨日の今日だし、ランベルスじゃないとわからないよ。でも、ずっとあんな感じだよ?」
「そっか。なんか、変な距離あるな、って思ってさ……
「んー、わかった。得意じゃないけど、注意して見てみるわ」
他の人が言ったなら、心配性だな、と笑っていた。
でも、万事ざっくりしているギルベルタがわざわざ言うなんて、少なくともギルベルタにしてみたら、それほどのことなんだ。
あたしだって、最初はアルフレットのことを
カミルもヤンセン博士と、いろいろあるんだろうな。
アルフレットにも話しておこう。ついでに、ギルベルタが
きっと二つ返事でのるんだろうな。子供っぽいからな、そういうところ。
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