29.仕方ないよね
どんなに親しい
雇用であれば、
ノンナートンの家は、大した財産のない貴族社会の
「おお? おもしろそうなのが増えてるね」
「カミル=ヤンセンです!
「ほんと、ごめんね……気にしないで、敷地の外に放り出しとくから」
フリード侯爵家の応接間に入るなり、うなだれたあたしの頭を、ここぞとばかりイルマがなでる。
いいよ、もう。契約を一度も
リーゼはリーゼで、
「外か。良いね!
言うが早いか、ギルベルタが手に持っていた棒のような物を、一番後ろにいたランベルスに投げた。受け取って、ランベルスが
「
「手加減」
ギルベルタの足元で、いっちょまえに
ランベルスが、
「なるほど、これは良い。先日の
「受けて立つ」
鼻息の荒い二人が、早速、庭に駆け出していく。
ランべルスは、どうやら本当に認識を改めたらしく、幼女に向ける剣を持ち合わせたようだ。良いのか悪いのか、わからないが。
「まったく……アルフレットも、身内の評価は甘いわね。ランべルスのどこが良い
「いやあ、あれでちゃんと、合わせてくれてるよ。本気で打ち合ったら、さすがにランベルスが勝つって」
ギルベルタが、言葉とは裏腹に、悪い顔をする。
「でも、それはまだまだ、体格と筋力の差ってのが大きいね。ジゼリエルには、そういう相手を振り回す技術をきっちり仕込んであるから、油断したもんじゃないわよ」
あ。アルフレットやウルリッヒに
子供っぽくて意地っぱりか。男とか女とか、関係ないんじゃないか?
「私やウルリッヒだと、どうしても教えるばっかりになっちゃうからね。
ギルベルタが、あたしを見て笑う。
さすがは人の親、あたしを含めて、子供を良く見ている。知らないうちに
素直に反省する。一緒に楽しむ気持ちが、まずは大事だ。
「ねえ、ギルベルタ。あの棒みたいなの、あたしの分もあるかな?」
「その言葉を待ってたよ! なあに、アルフレートをちょっと驚かせるくらい、すぐできるようになるって」
「あー。ユーちゃんがやるなら、私もー」
「わ、私も御一緒させて下さい! 体力的な自信は、ありませんが……」
「あたしより駄目ってことはないから、安心しなよ。カミル、あんたもまさか、逃げないわよね?」
「ええ? いや、お断りですよ! だってこれ、俺を練習台で、ぼこぼこにする流れっしょ?」
「へえ。気は
あたし達の含み笑いに、ギルベルタがぽん、と手を叩いた。
「思い出した! ヤンセンって、あんた、あの
「ギ、ギルベルタ
まあ、そうか。カミルには説明してなかったけど、ギルベルタも軍にいたんだもんな。知ってておかしくないか。
それにしても、ひどい言いようだな。
「あんにゃろう、顔を合わせれば、やれ女は早く結婚しろだの、子供を産んで引退しろだの、うるさくってさ! むかついたから、一度だまして格闘訓練に引っ張り込んで、部隊のみんなで、ぼこぼこにしてやったら、それも
「は、博士は軍人じゃないよね? それは半分以上、ギルベルタが悪いと思うよ?」
「いやいや!
なんだ、こんにゃろう。まともなこと言いやがったな。
「よし! 私を入れて、全部で五本ね! 次までにそろえておくわ。いやあ、あの
「ひ、必要ないっす! 俺はれっきとした、男女平等主義者ですって!」
「それじゃあ平等な一票で、多数決ね。全員参加が良いと思う人ー」
「数の暴力っすよ、それ!」
うん。世の中には、いろんな暴力があふれてるよね。
仕方ないよね。現実だもの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます