25.どいつもこいつも
フリード侯爵家のお屋敷は、街からも、アルフレットの屋敷からも、だいぶ離れた
広い庭が、すぐ横の森とほとんどつながっていて、小さな川まで流れてる。
それでも木々が
なるほど。これなら、あの怪獣が剣を振り回しても、近所迷惑にならなさそうだ。
玄関扉の前で、
「いやあ、やっと約束通り、うちに呼べて良かったよ! あと少し遅かったら、またこっちから遊びに行ってたね!」
「先生、いらっしゃい」
ギルベルタは男物の
ジゼリエルは、少し背が伸びた。推定3歳、そろそろ4歳かな。
長い黒髪はギルベルタ
上品な赤い一つなぎでお
いたたた。
「ジ、ジゼリエルちゃん……! 私にも、私にも抱っこー! おいでおいでー」
「近寄るな、
「ランベルス=ラングハイムです! 本日は
「うるさいよ! なんであんたは、そう、いちいち大声はり上げるの!」
「リーゼロッテ=ラングハイムです。そ、その、
「あんたもあんたで、なに言ってんのっ?
ああ、もう。どいつもこいつも、第一声からこの騒ぎかよ。
「あはは、にぎやかで良いね。夕飯ぐらい、食べていけるだろ? そのうちウルリッヒも帰ってくるからさ。なんだか、アルフレートだけ
「ごめんね、ほんと……こんな、おもしろ半分のおまけが、たくさんひっついて来ちゃって。次からは、ちゃんと一人でやるから」
「細かいこと言いっこなしよ。自分で頼んでおいてなんだけど、まだまだ勉強なんて
ざっくり受け入れてくれるのはありがたいんだけど、異論はある。
人間、生まれた瞬間から勉強だ。
効率的で集中的な授業という形態に順応するには、それなりの成熟が必要だけど、能力と適性に合わせた指導であれば、
ちょっとした理想に燃えるあたしを尻目に、他の五人は早速、運ばれてきた
いじけるぞ。
仕方がないので、ギルベルタ、イルマと並んだ
ジゼリエルの方は、気にした風でもない無表情だ。まあ、いざとなったら、イルマをぶん殴って助け出そう。
向かい側に座っているランベルスとリーゼは、意外と
「そっか。二人とも、今までユーディットと面識なかったんだ。まあ、ラングハイムの家は大きいからね。
「お
「あんたはいろいろ、
「は、はい……ありがとうございます」
悪かったわね。その通りだけど。
「ゾフィーは元気にしてるの? この間は、いろいろ立て込んでたからさ。今度ゆっくり遊びに来てって、伝えておいてよ」
「
うん。そうだろうけど、そこは定型文で返せよ。正直なら良いってもんじゃないぞ。
「ギルベルタさま、気さくで、お優しい方ですね……素敵です」
リーゼがこっそり、
「叔父さまのお友達なら……やっぱり、その……そういう御関係でも、おありかも知れませんけれど……」
「だいぶ失礼なこと言ってるよ。両方に」
あたしにこぼす神経も、どうかしてるぞ。
「あたしが見る限り、そんな感じじゃないよ。男友達に近いって言うか……ああ見えて強いのよ。アルフレットに、剣で勝ったこともあるんだから」
「叔父さまにですか? すごい……!」
「こーらこら。本人の前で、こそこそうわさしない。はっきり言って自慢なんだから、むしろ聞いてよ! なんなら家庭教師のお礼に、ジゼリエルと一緒に
「い、いえ、私はとても……!」
「あ、あたしも無理! すぐに死ねる自信あるわ。そういうのは、ほら、出番よ、ランベルス!」
「
あ。
言っちゃった。
ギルベルタが、にやりと悪い顔になった。ついでにジゼリエルも、目が光ってる。
「それは聞き捨てならないわね……アルフレートの紹介状にも、良い筋だって書いてあったし。いっちょ、お手合わせ願いましょうか」
「は? いや、それは……」
「勝負」
ジゼリエルがイルマの膝から降りるなり、木刀を大上段に構える。おお、ちょっと前より、さまになってるよ。
ギルベルタも調度品の
ここ、応接間だよね? 寝台に忍ばせてるあたしが言うのもなんだけど、
放り投げられた一本の木刀を受け取って、ランベルスが、ばあちゃんより先に
「いえ、あの、侯爵夫人? 重ねて言いますが、自分は……」
「問答無用ぉー!」
「無用」
さすが
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