23.少しわかった気がする
昼休みも、あたしは教室の机から離れない。
昼前の授業の復習と、後の授業の、予習の復習をする。追求すれば、やることなんて無限にある。だから学問は面白い。
料理長は気を
最近は隣で、イルマがあれこれと話しかけてきたり、人のおかずを盗み食いしたり、満腹して昼寝したりなんかする。正直、迷惑なんだけどな。
今日もいつもの通り、あたしの行動は整然としていた。
「ランベルス=ラングハイムだ!」
うるさい。
騎士物語じゃあるまいし、なんで名乗るたびに腕組みして、ふんぞり返るんだ。自分の
「あ、あの、お師匠さま。お昼、ご一緒させて下さい」
あんた達、目立つんだよ。迷惑だよ、かなり本気で。
「リーゼちゃんもランラン先輩も、いらっしゃーい。待ってたよー」
やっぱりおまえの手引きか。
もう少しで質量を持てるんじゃないか、と思うぐらいの視線でにらむ。あたしは純然たる被害者だ。それなのに、気がつけば、教室中から同じような視線でにらまれていた。
理不尽だ。
「大丈夫だよー。ランラン先輩、見た目も良くて、けっこう人気者だからー。みんな
その
「
そんな生徒、ここにはいないぞ。
どうしてこう、当事者が一言もしゃべらない内に物事が進むんだよ。泣くぞ。
「こ、この焼き菓子は、私ががんばって作りました。お師匠さまも、召し上がって下さい」
「ありがと……。言っておくけど、リーゼの方が年上だからね。必要以上にへりくだるのも、良くないと思うよ」
「は、はい! 殿方は胃袋をつかんで尻にしけ、と、
どんな本だよ。ほんと、ため息しか出ないよ。
復習も、予習の復習も、あきらめた。資料をどかして、
ああ、もう。わかったよ。
「リーゼちゃん、お菓子作り
「は、はい! ええと……」
「イルメラ=イステルシュタイン、イルマで良いよー。ユーちゃんの愛人一号よー」
「違うよ!」
「や、やっぱり……そんな気がしてました!」
「なんでよ! おかしいでしょ、常識的に!」
「ユーちゃん優しいから、数で押せば、なしくずしにできると思うのよー。その時は協力してねー」
「優しくないよ! 犯罪計画は、相手のいないところで話し合えよ! 警戒するぞ!」
「昨日も思ったが、女のくせに口調が激しいな。お
「差別主義者は黙ってろ!」
言われて黙るくらいなら、差別主義者なんてやってないよな。
イルマとリーゼも、お昼を食べながら、なんだか二人で盛り上がってる。
あたし、もう
「それじゃあ、今度の週末なんかどうかなー? ユーちゃんも一緒に遊ぼうよー」
甘かったか。
「さっきまでの流れで誘われるのも、怖すぎるんだけど……そうじゃなくても、あたしは無理よ。来週から、ジゼリエルの家庭教師を始めるの。
「あー、いいなあ。私もジゼリエルちゃんに会いたーい。一緒に行っちゃ駄目ー?」
「駄目に決まってるでしょ。曲がりなりにも
さすがのイルマも、一回会っただけの侯爵夫人に、紹介状もなしに使いは出せないだろう。ここは死守するぞ。
「う、うわさの年下女子と、人妻の方ですよね……! よくできた子にご
「あのね。先に言っておくけど、肉体自慢の殿方とやらがその父親で、旦那で、アルフレットの大事な友達なの。無責任な波風立てたら……ほんと、殺すからね」
うん。
すごい低い声が出た。教室中の話し声が
ばあちゃんの気持ちが、少しわかった気がする。こんな連中、うかつに
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