16.終わりが見えないよ
あたしはイルマと二人、
「お願い、選んで!」
「選ぶって……ユーちゃんの服を、ってことー?」
「夜、自宅、
「私としては、その下着も脱いでくれるのが最高なんだけどー」
「殺すわよっっ!」
冗談は時と場合と、相手の状態をわきまえろ。冗談じゃないなら、なおさらだ。
イルマも、
大きな
部屋を出ると、屋敷中に緊張感がみなぎっていた。
執事さんが次々と指示を出しながら、迎えに来てくれた。ばあちゃんとギルベルタ達は、もう食堂に案内して、
がんばれ料理長。ギルベルタは、まさか酔っぱらって雑なことしゃべってないだろうな。
食堂に入ると、
ばあちゃんの隣、
え? あたしが
いつもはアルフレットが座っているけど、そりゃ代理ならそうだろうけど、この状況じゃ死刑台だよ!
泣きそうになりながら座ると、軽めの料理の皿が、一人一人に並べられた。
「ユーディット」
「は、はいっ……えええと、その……」
ばあちゃんが、まっすぐギルベルタを見ている。そうだ、まずは紹介だ。
「こ、こちら、アルフレット……じゃない、アルフレートの御友人で、ギルベルタ=フリード侯爵夫人です。お、お隣は御息女で、ジゼリエル=フリード嬢、そちらはあたし……私の学友で、イステルシュタイン伯爵の御息女、イルメラ=イステルシュタインです」
「私はあなたの身内です。先に名乗らせなさい」
もうこれだよ。身が持たないよ。
「無礼のほど、
他にもごちゃごちゃ言っていたけど、耳に入らない。深呼吸、深呼吸だ。
ようやく顔を上げると、また静かになっていた。
心臓が止まりそうだよ。目を泳がせると、イルマが食べる
「ほ、本日は、大したお
全員が一礼して、食事が始まった。
あたしが食べないわけにはいかないんだけど、本気で
「ねえ、イルメラ。ユーディットって、学校ではどうなのかな。勉強で忙しそう? 今度、娘の家庭教師を頼もうと思っててさ。私達は毎日でも嬉しいんだけど、あんまり大変そうなら無理も言えないかな、なんてね」
ありがとう、ギルベルタ。イルマ、なんとか当たり
「ユーちゃんなら大丈夫ですよー。もう学校で一番なくらい勉強できますし、みんなにも親切に教えてくれて、すっごい人気者なんですよー」
あからさまな
「そうですか。女の身で飛び級までして学問など、
「
頼むからやめて、ジゼリエル。
ばあちゃんは
「そりゃいいね! まだちょっと
ギ、ギルベルタ、そんな方向で話ふくらませないで! 女だてら、駄目だから!
「今でも可愛くて、もてもてですよー。男子の目の色が違いますよー」
おまえ、もう黙ってろ! 問題しかないだろ、それじゃ!
じろりと、ばあちゃんがあたしをにらむ。
もててないよ! ばあちゃんの言う通り、男子も女子もいじめ兼ねて、遠巻きに無視してくるだけだよ!
それはそれで問題かも知れないけど、おおむね清く正しく
声を大にして叫びたいのに、おぼれた魚のようにあえぐばかりだった。いや、魚はおぼれないだろうけどさ。
これは本気で死ねる。夜が長いよ。終わりが見えないよ。
自分でも気がつかない内に、口に運びかけて、ずいぶん放置していた野菜の
汁がはねて、白い
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