8.それだけじゃない気がしてきたよ
昼を回っていたので、食事にした。
にぎやかすぎない
店の周りは人通りが多かったので、少し離れたところに車を停めて歩いたのだけれど、この頃には
アルフレットが堂々としてくれているんだから、あたしも、変にいじけてちゃ駄目なんだよな。
身体は今すぐどうしようもないけれど、アルフレットが笑ってくれるんだから、あたしも笑っていれば良いんだよな。
車まで戻ると、すぐ横に、知らない女の人が立っていた。
30歳を少しすぎたくらいで、
「やっぱりアルフレートか。見覚えのある車だったから、そうじゃないかと思ったよ」
「
「たまにはね。ちょうど良いから家まで送らせるつもりだったんだけど、なんだ、女連れか。ひょっとして、その子が例の……」
「将来的には本人の意向次第ですが、婚約者のユーディット=ノンナートンです。ユーディット、こちらは私が世話になっている友人の奥方で、ギルベルタ=フリード侯爵夫人です。気さくな方ですので、かしこまった
「は、はい。その……よろしくお願いします、フリード侯爵夫人」
「かしこまるなって。ギルベルタよ、よろしくね! こいつ、とんでもない女たらしだったくせに、急に
そんなこと言われたら、普通は気にするよ。はげましてくれてるんだろうけど、なんか、ざっくりしてるな。
よく見たら美人なのに、格好とか
「それにしても、ずいぶん
「ありがとうございます。ウルリッヒにも、よろしく伝えておいて下さい」
ギルベルタは、男みたいに後ろ手を振って、歩いて行った。
屋敷に来る客は
「友達、いたんだね」
「心外ですね。たくさんいますよ」
「やることやったら友達じゃないからね。ちゃんと区別してる?」
アルフレットが車を運転しながら、珍しく、
昼下がりの
ギルベルタは、旦那さんと娘さんがいるって言っていた。
あたしと同じ、一人娘かな。お父さんにもお母さんにも、ずいぶん会ってない気がするな。
「このまま、寄り道しても良いですよ。なんでしたら後日、迎えに行くということにしても構いません」
実家に帰らせていただきます、とは、婚姻関係に納得いかない女の
ううん、違うな。
いろいろあったけど、結局、アルフレットのおかげで
人の一生の問題を
あたしが認識できる範囲に限れば、イルマの言葉じゃないけど、大事にされてるっぽいんだよな。
「……いいよ、家に帰ろう。最初、しぶってごめんね。今日は楽しかった。その分、ちゃんと勉強もしないと、このまま寝ちゃったら明日の授業が大変だよ」
「そうですか」
ちょっと照れくさくて、顔が見られなかった。
アルフレットは苦笑したのかな。安心したのかな。
「あ。でも、途中でお菓子が買えないかな? 隠しておいて、夜に食べたい。最近、料理長の目が
「条件があります」
アルフレットがほくそ笑む。今度は見られた。あたしもきっと、同じ顔をしていた。
「一緒に食べましょう」
車が、軽快に道を曲がった。
少し遠回りだけど、こっちの先に、学校でも女子に評判の有名なお菓子屋通りがある。
知っていたな。さすが元、女たらし。
なんだよ、もう。どうせ小娘だよ。こんなの、のぼせちゃっても仕方がないよ。
あたしはただ、勉強ができれば良かったはずなのに。
困ったな。なんかもう、それだけじゃない気がしてきたよ。
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