3.授業に集中しよう
学校だけは、あたしの
最前列、真ん中の席に
生理現象以外はここを離れないと、強く心に決める。学問の世界は理路整然として、
授業の内容をしっかりと理解するために、始まる前に資料に目を通す。
書かれていることの背景、その先まで認識しなければ、
周りは雑談でうるさいが、あたしに話しかけてくる人間はいないから、気が楽だ。
いじめても自分がみじめになるだけだし、なにより、あたしは
そんなわけで、あたしの周りには真空状態と言うか
「ユーちゃん、おはよー。今日もがんばってるねー」
あっさりと破られた。誰だ、迷惑な。
見ると、ふわふわの
胸もお尻もふくよかで、
「ええと……イルメラ=イステルシュタインさん?」
「長いよー、イルマで良いよー」
間の抜けた声で笑いながら、隣に座る。いや、座るなよ。
「今日こそユーちゃんに話しかけようと思って、遅刻しないように早起きしたんだよー。仲良くしたいの、良いでしょう?」
「そんなこと言ってると、他の人と仲良くできなくなりますよ」
「私、あんまり頭良くないから、そういうのわからなくてー。きっと大丈夫よー」
イステルシュタイン家と言えば、名前ほどではないが、長く
面と向かっていじめの標的にはし
こちらの
思い出してみれば、確かによく遅刻して、後ろの方で寝ている姿を見た気がする。
「どこに座るかは自由ですけど、勉強の邪魔はしないで下さい」
最大限に
「ありがとー。私ね、ユーちゃんみたいな可愛い子が大好きなのー」
だったら
「だから将来は、たんぱくな旦那様つかまえてー、月一回くらい
前言撤回、最悪の危険人物だ。
いきなりなにを言い出すかと思えば、おまえも敵か。あたしの平和を乱す敵なのか。
「……ここ、学校なんだけど」
「あ。ごめんねー、
「だから! 学校だって言ってるでしょ! 思い出させないでよ、あんな奴のこと!」
たまらず大きな声が出た。ちょうど入って来た教授が目を丸くする。
「あー教授ー。私、今日からユーちゃんを見習って、まじめにがんばることにしたんですー。よろしくお願いしまーす」
ほう、じゃない。感心するな。生徒の身の安全を確保しろ。
言いたいことは山ほどあったが、ぱくぱくと言葉にならない。
今この場で、こいつの危険性を立証することは不可能だ。不毛な
もろもろ飲み込んで、座り直す。もういい。全部雑音だ、授業に集中しよう。
頭にちらつく顔も雑音だし、髪にかかる
***************
夕食の時、ぐったりしているあたしを見て、アルフレットがあれこれと聞いてきた。
適当にはぐらかすつもりだったが、これも狩りの経験なのか、あっと言う間に
「イステルシュタイン家のお嬢さんですか。確かにいろいろ、うわさもあるようですが、まあ可愛らしい程度ですよ」
「いや、あたしにとっては充分、本格的に不幸なんだけど。あんた、聞いたからにはあたしの幸せのために、なんとかする気ないの?」
「適度な困難を自力で乗り越える成功体験も、幸せには欠かせないものですよ」
「それ言ったら全部片づくわ」
本気であてにしたわけでもなかったが、それにしても聞いた自分が
子供の不幸なんてそんなもんだ。大人から見たら、鼻で笑う程度の
「お話を聞く限り、少し個性的ではありますが、良い学友になれる気がしますよ。人生の若い時期、お互いの足りない部分を
「あたしに足りないのは胸とお尻ってことね」
言ってしまってから、気がついた。
これは
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