第7話 失恋

高校がっこうが始まると、私はテニス部に入った。

自他共に認める筋金入り運動オンチの私だが、スポーツ好きの蓮くんを見習って運動部に入ることにしたのだ。


蓮くんは高校でもバスケ部に入ったようだ。当然だろう。


『バスケをやってる時の柊木くんはカッコ良くて私の憧れです』


そう伝えた。

相変わらず自分の気持ちは伝えることはできなかった。


運動スポーツ初心者の私には高校の運動部はキツかった。

筋トレと素振り。そしてランニング。 

一日の練習が終わるともうヘトヘトだった。


あまりにもの辛さに蓮くんに何度も弱音を吐いた。

でも、その度に蓮くんは私を元気づけてくれた。


私は人一倍運動神経が鈍かったから一年生の中でも際立って覚えが悪かった。

全然上達しない自分が情けなかった。

下手で滑稽な私を見て笑う人もいた。

そんな自分が悲しくて泣きそうになった。


もうテニス部を辞めようと思い、蓮くんにその思いを伝えた。

そして蓮くんから返事が来た。


『綾瀬は一生懸命に頑張ってるんだから、下手だっていいじゃない』

『なんでも上手くできる柊木くんには運動神経が悪い私の気持ちなんか分からないよ』

勢いでそんな返事をしてしまった。


すぐに猛烈に後悔した。

せっかく元気づけようとしてくれているのに、馬鹿だ、私は。


最後に送ったメッセージの既読がついたあと、しばらく返事は来なかった。

蓮くんを怒らせちゃったかもしれない。


謝りのメッセージを入れようとした時、蓮くんから返事が来た。

『スポーツでも何でも、一番大切なのは結果を恐れず一生懸命にやることだよ。上手いとか下手とか、結果なんて関係ないよ』


私は目が覚めた思いがした。

私は何をしてたんだろう?

いつも人目や結果ばかりを気にしていた。


私はもう少し頑張ってみることにした。

たとえ下手でも、たとえ笑われてもいい。


蓮くんへの想いは日に日に大きくなって、もう抑えられなくなっていた。


また蓮くんに会いたいとメッセージを送った。

でも、やはりいい返事は来なかった。


これ以上を望むのは思い上がりだろうか。

でも、蓮くんへの想いはさらに大きくなる。


私はもう一度メッセージを送った。

今度は強い想いを込めて。


『柊木くんに会いたいです。どうしても』


心臓が締め付けられそうになりながら返事を待った。

しかし返ってきたメッセージに私は愕然となる。


「もう連絡し合うのは止めよう」


目の前が真っ暗になった。

私は馬鹿だ。


蓮くんは私のことなんて迷惑だったんだ。

それなのに無理やり付き合ってくれてたんだ。

恥ずかしくて、悔しくて、そして最後に悲しさが込み上げた。


私は『わかった』と一言だけ返した。

そのメッセージに既読が付く。

その後、返事が来ることはなかった。


思わず涙が頬つたった。

ひと晩泣きじゃくった。

不思議とすっきりとした自分がいた。


もし「会いたい」と言わなければ今まで通りの関係を続けられたのだろうか。

でもいいんだ。

私は自分の気持ちに正直になっただけ。

フラれちゃったけど、一生懸命にやったから後悔しない。

蓮くんにフラれて、蓮くんの言葉に救われていた。


よし、今日からまた頑張ろう!



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