第3話 事件
朝の冷え込みも厳しくなった十二月の初めにその事件は起きた。
そう、私にとってそれは人生においての大事件だった。
いつもと変わらない朝のホームルーム。
担任教師の先生がちょっと寂しい顔をしながらその話を始めた。
「今日はみんなに悲しい知らせがある」
先生は蓮くんの名前を呼んだ。
蓮は立ち上がってゆっくりと前へ出た。
「え? 何?」
全身に嫌な予感が迸った。
「とても残念なことだが、柊木が家の都合で転校することになった」
教室内がどよめいた。
思考が止まって騒ぐ声も出なかった。
どうして? どうして?
その言葉が繰り返し頭の中を走った。
しかも転校するのは明日だと言う。
中学卒業まで、ずっと蓮くんと一緒にいられるものだと思い込んでいた。
そして頑張れば高校だって…。
転校することをずっと黙っていたことを蓮くんはみんなに謝った。
いつもと変わらない日常をみんなと過ごしたかったらしい。
それは理解できることだった。
でも、明日だなんてあまりにも急過ぎる。
転校先はふたつ隣の県だった。
遠くないけど近くもない。
少なくとも同じ高校へ行くことはできなくなった。
目の前が真っ暗になった。
このまま離ればなれになるなんて嫌だ。
心の中で叫んだ。
みんなは蓮くんとラインの交換を始めた。
基本、この
蓮くんも個人のスマホを持っていた。
でも私は持っていなかった。
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