第2話 太平洋気象前線異常あり

 翌々日、彼は私の部屋へ文字通り遊びに来た。

 バラエティー番組を観ながら、大きな声で笑って、私のポテチを食べている。

 オマケにゲームもして行く。

 私がケチなのではなく、これでは、中学生の溜まり場かと突っ込みを入れたいだけだ。


 ただ、偶に私にキスを迫ったりして、そこは中学生ではないと思うのだけれども。

 ビターな味がとろっととけるようなキスで、私はそれだけで十分な気もする。

 でも、彼の信奉者となったりしてはいない。


「透哉くん、お母さん好き?」

「うん? 俺のお袋? 普通だけど」


 私は、彼が母性を求めているのかと思って訊いた。


「終わりはないよ」と甘い彼の口づけが波のように誘う。


 私は、猛烈に突き付けたいことがある。

 ――妾の関係は、いつまでなのかと。

 いつ切り出そうか悩んでいた。

 又、シングルベッドで二人夜を明かした。

 私は、挫けているのだろうか。


「今日は土曜だ。ちょっとウインドウショッピングなど如何かな?」


 ◇◇◇


 翌、日曜日、彼は本命彼女の方へ行っている。

 何て詰まらない朝。

 昨日沢山サービスしてくれても、意味がない。

 ふくれっ面をしていたとき、テレビの音が急に飛び込む。


『気象庁です。只今から、緊急連絡をいたします。落ち着いて聞いてください』


「はあ、早速落ち着かないのですが?」


 私の鼓動は鐘を打ったように内側から響いて行く。

 毛細血管まで血流がいい。

 早くニュースの続きを流して欲しい。

 ヘルメットを被ったテレビの中に居る男性が原稿を読み上げる。 


『太平洋沖に巨大隕石が落下することが確定いたしました。皆様は各自家庭内で一番安全な場所で波動に備えていてください』


「家庭で一番安全? ユニットバスかしら?」


 もしも、断水されなければ、水も得られる。

 その前に日常生活用の水をバスに溜めて置こう。

 トコトコトココ……。

 多分、落下したら、こんな水は何にもならない。


 ピンポーン!

 ピンポーン!


「あら、うちのチャイム? できたらバスから出たくないのだけれども」


 魚眼レンズでよく見えない。

 インターフォンがないので、チェーンをしてドアを細く開ける。

 不用心だから格安物件だった。


「美音子さん、俺だ!」

「どうしたの? 透哉くん」

「今からでは俺の家にも、アイツの家にも間に合わない。入れてくれ」


 私は、気配を感じた。


「一人じゃないわね?」


 彼の後ろに誰かがいる。

 香水で飾り立てたようだ。


「はあい。本命ちゃんの新井愛香さんです! いつもお世話様」


 微笑み小指を立ててポージングをする。

 ぶりっ子か?

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