第13話 研修の終わり

 最初に町に入った時は西から入ったが、今回は北にある検問所を抜けて町に入る。

 特に目的地は決めずに、話すために人が少ない方へ動く。

 周りにあまり人がいなくなってから、ピーちゃんがなんかすごくいい人たちだったねと話し始めた。

 今回の研修の引率をしてくれた森の盾のメンバーを、3人が思い出している。

 アルバートとサラもピーちゃんの意見に頷いてから話す。


「はい、そういう方々だからこそ新人研修の引率に選ばれているのでしょう」

「ピーちゃん に接する態度もだいぶよろしかったですし、ああいった方々となら仲良くできそうですね」

「使役獣過激派だと思われてるから、彼らだったんだね」


 ピーちゃんは、森の盾のメンバーもだいぶ気を使ったんだろうなと考えて、決めた。


(うん、なにか彼らが困ってたらこっそり助けてあげよう、後でファーストにも言っておこう)


 ピーちゃんは今日の夜やることを決め、そのあと明日からは自由だったなと思う。

 ならやることは1つと口を開いた。


「明日からなんだけど、とりあえず勇者パーティのメンバーを探そう。冒険者ギルドは行くけど、勇者たちを追ってからでどうだろう」

「勇者パーティの強さの確認ですか?」


 アルバートの疑問にピーちゃんが答える。


「そうそう、この町一番の冒険者に〈状態解析〉をかけてステータスが見たいんだ。この世界の人達にステータスがあるかは分からないけど、たぶん強さくらいは何となくわかるんじゃないかな」


 冒険者の人達は、勝手に暴かれるのは嫌そうだから我慢してたけど、とピーちゃんはつぶやいて続けて言う。


「かけたことがバレても、最初の1回なら許されるんじゃないかな。ピーちゃんがかけるんだし、最悪ピーちゃんを退場させればいいよ」


 それを聞いてアルバートとサラは顔を見合わせて、アルバートが真剣に伝える。


「ピーちゃん 1つ失礼なこととは思いますが、申し上げたいことがあるのです。聞いていただけますか」

「うん、いいよ。反対意見でもなんでもそんなに畏まらなくて良いんだよ、アルバート、いつでも言っていいよ」

「ありがとうございまず。では意見の1つとして聞いていただきたいのですが、ピーちゃん が退場しなければならないとなったのならば、この町を滅ぼしてあげた方がよいのではないかと思います。我々の同胞が知ればあまりいいことは起きないかと思います」


 それを聞いてピーちゃんは町を滅ぼす必要性について考える。

 ピーちゃんのことで長い期間この町の人達が苦しむのは問題があるけど、それはピーちゃんが無理やりにでも止めれば問題ない。

 そもそも本当にピーちゃんが退場した程度で、そんなことが起きるのだろうかと疑問にすら思う。

 あとはどうしてもグルークについて知りたいので、滅んでもらっては困る。

 もしこの町を滅ぼす必要があるとしたらと考えて、ピーちゃんには理由が思いつかなかった。


 ピーちゃんは結論を出して伝えた。


「それも可能性としては考えたけど、グルークの資料が読みたいからやめとこうね。サラもそう思わない?」

「グルークさんのお話はお聞きしたいですけど、ピーちゃん が退場されるようなことになるのであれば、この町が消えるのも仕方のないことかと」


 この町が滅びるとしたら、この2人が勝手に町中で暴走した時だということに気がついたピーちゃん。

 優雅な曲を演奏しながら、高らかに歌って歩き回るだけでこの町は滅び去るだろう。

 なので町中で暴走させない方法を考えて言った。


「そっかー、じゃあ町中ではやめとこう。森まで勇者パーティをつけていってから全力で、スキルを掛けたことをばれないようにしよう。バックアップも呼んどくね」


 これなら町は無事だし勇者パーティも無事に何とかなるだろう、とピーちゃんは思った。

 それから今日しないといけないことは、と想像しながら話す。


「あと、今日は勇者パーティが帰って来るのを城門前で待ってようか、どんな人か分からないと追いかけられないし」


 アルバートとサラは、はいと返事をして城門がよく見える場所に移動した。




 あ! 勇者パーティだ、という子供の声が聞こえる。

 周りの人々は同じ方向を見ている。

 きっと勇者パーティがそこにいるのだろう。


 さて、どんな人たちなのか見てみよう。

 ピーちゃんがそう思い、人々が見ている方向を3人が見るとそこには、80人越えの団体が城門から入ってくる光景が広がっていた。


 ピーちゃんは、あー、最低でも10パーティの冒険者を雇ってるんだもんね、そりゃあこうなるよね、と思った。


 ピーちゃんが2人に聞く。


「どの人達が勇者パーティか分かりそう?」


 2人は目を細めている。


「「少々お待ちください、一番強そうな者を探します」」


 2人にとっては誤差の範囲の集団から、頑張って勇者パーティを探しているようだ。

 ピーちゃんはスキル使ってばれたら困るし、歩いてるところ見て強さが分かるわけないし、2人が見つけてくれるのを祈ろう、と祈りの体勢に入っている。

 やっと集団の全員が、町に入って少し進んだころ、アルバートの方が、先に見つけたようで話してくれた。


「おそらくになりますが、見つけました」


 ピーちゃんはどんな人達かな? と聞く。

 アルバートはこれは説明するのが難しい、と内心不安に思いながら伝える。


「勇者パーティは中央に固まっているようです。リーダーのウィルは、ベージュブラウンの髪に、皮のコートを着ているようです」


 大勢いるなとピーちゃんは思った。


「ルティナはおそらく回復術士なので、白系のローブを上に羽織って、中の装備は皮で急所を守る形ですね、髪はピンクブラウンです」


 回復術士も大体のパーティにいるんだね。


「グローは足止めを担当していたとのことですから、おそらく近くにいるレンジャーです。一番すっきりとした皮の鎧で、髪はゴールドブラウン」


 パーティのバランスが、良くなってきたね。


「ダグは大きな盾を持っているので一番見分けやすいかと、彼は皮鎧に金属で補強を多めにしているようですね。髪はアッシュブラウンだと思います」


 タンク職かな、森の中で動きやすいように皮装備なんだね。

 アッシュは灰色だったかな? 後で考えよう。


「ナリダは魔術士だと思われるので、緑色のローブを着ていますね。ルティナと同じように皮で急所を守っていますが、こちらはアクセサリーが多めですね。髪はオレンジブラウンだと思います」


 以上になります、とアルバートが締めた。

 緑色は森に同化するためかなとピーちゃんは思う。

 サラは強さと一緒に考えることで、何とか見分けることができたようだ。


 ピーちゃんは思った。

 集団を見ていて髪や装備の見た目が、違うことは分かる、分かるけど、


(髪色全部ブラウン! 茶色!! 分かりません!!!)


本当にごめん、アルバート。

 でもこの町の人だいたい髪色ブラウンだから、黒とか金髪とかあんまりいないんだ。

 あとそんなに髪色の名前まではあんまり覚えてない、さっきも気になったけど確かアッシュは灰色のくすんだ感じの色だったかな、あとは名前の通りと信じたい。


 アルバートはどこからこの知識を仕入れたんだろう……。

 ピーちゃんは羽をくちばしの下にあてて、拠点の施設について思い出す。


(あー、そういえば美容院とか作ったし、そのための資料は集めたからそこかな)


 うんうん、と1人納得する。


 そして、もう1つの特徴について考える。

 ローブを着てたりはするけど、全員皮装備なんだね。

 まあ、あの集団ほぼ全員が皮装備だから、見分けがつかないんだけど。

 やっぱり、グレイトホーンの皮かな。

 この町って、グレイトホーン経済で動いてそうだしなー。

 

 ピーちゃんはそこまで考えて、考えることを放棄した。


(まあいいや、アルバートとサラが分かるならそれで問題ない)


 ピーちゃんは2人に感謝を伝え、今から宿に戻ることにしようと続けた。

 そこで、バックアップから誰かを呼ぶこと、その時に今の集団の写真を見せるから、どれが勇者パーティか教えてやって欲しいことを話した。


 2人はそれを聞いて、はい、お任せくださいと言う。

 そのあと集団を見て、間違いがないか再確認するようだ。


 ピーちゃんも集団を見ながら考える。

 あの集団は、冒険者ギルドに向かってるみたいだね。

 今から呼ぶ人には冒険者ギルドから出た勇者パーティを、つけてもらうことにしよう。

 それで明日、勇者パーティが宿か家があるのかは知らないけど、そこから出てきたら教えてもらって、森に出るようだったらついてこう。

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