15分でどこまで書けるのか

ヨーグルト


「好きなの? それ」

黒くて長い髪に光が透けて、まぶしかった。近づいてくるそれをぼんやりと眺めてはいた。昼休みのがやがやとうるさい教室の中で、向井が自分に近づいてくるのには気づいていたけれど。

でもまさか、話しかけられるとは思っていなくて。

「え」

「いつもたべてるから」

そういっていたずらっぽく笑う向井の視線の先をたどると、自分の手のひらに収まったヨーグルトのパッケージ。プラスチックのフタが蛍光灯を反射してぴかぴか光っていた。

「いや、まあ」

「いつも、イチゴ味だよね」

いつも……。向井はいつも、自分をみていたのだろうか。

そんなことは夢にも思っていなくて、顔が熱くなる。

「おいしい?」

「、おいしいよ」

「へえ」

ひとつ前の席に向井が座る。こちらの目をのぞき込む。

「ひとくちちょうだい」

そういって、向井はゆっくり口を開いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る