マグマ溜まり+カスの嘘

「この世のすべての池の水を抜き終わってしまった」


 テレビクルーたちは絶望に打ちひしがれていた。

 彼らはこれまで、世界中の池や湖の水を抜いてきた。目的は何もない。ただ水を抜きたかったからだ。

 その過程でゴミを片付けたり、外来種の駆除を行ったりもしてきたが、彼らにとってそれは「ついで」でしかなかった。たとえそれが現地国家に表彰されようとも、ノーベル平和賞に繋がろうとも、彼らには何の意味もなかった。

 ただ水を抜きたい。

 彼らの願いはそれだけだった。


 池と湖の水を抜き終わった彼らは、ついに海の水も抜いた。これには反対意見も多数出たが、一部の悪質な地質学者や海洋生物学者たちのサポートもあり、最終的に敢行された。


「これはいったい……」


 マリアナ海溝の奥深くで、クルー達はあるものを発見した。

 巨大な卵状の物体である。

 彼らは当然のように、海洋生物学者たちとともにその卵を持ち帰った。


***


 その結果が、これだ。

 全長五十メートルを超す巨大な怪物が、富士山を目掛けて、時速百kmを超す速度で走っていた。

 トカゲのような体で、四足歩行で全ての建物を破壊しながら、富士山を目指す。


 彼は、そのまま地面に激突した!


 ……テレビが、その様子を映した。

 怪物はどうやら、地面の中に潜ったらしい。

 地質学者が調べたところ、怪物は富士山直下のマグマだまりに巣くい、卵を産み始めたようだ。


「このままではまずい。あれが孵ったら、世界が終わる」


 テレビクルー達は、世界中から大バッシングを受けた。

 このままでは彼らの軽率な行いにより、人類が滅亡する。


 どうにかして、マグマだまりの中の怪物を倒す方法はないか?

 誰か、マグマだまりからマグマを抜いて、怪物を駆除できないのか?


「……あっ!! 適任者がいる!!」


 世界中が、同時に気付いた。


 彼らだ。

 いま世界からバッシングを受けている、この事態の元凶。


 池の水を抜いてきた彼らに、マグマだまりのマグマを抜かせればいい。


 この物語は、こうして始まった。

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