たずねる

俺はこの仕事に誇りがある。

気高く、崇高な仕事だと思っている。


俺の仕事は、NHKの徴収人。どこであれ、NHKの番組を受信できる環境にあるところに訪ね、受信料を徴収する。それが俺の仕事だ。


「電波が届き、受信機がある。ならばそこに、徴収人がいる。それが我々の、たったひとつのシンプルな使命だ。だがこれはシンプルゆえに奥深く、そして過酷だ」


これは俺が、新人研修のとき最初に言われた言葉だ。

その言葉通り、この仕事は辞める者も多かった。


戦地へ赴き、死んだ同僚が何人もいる。

沈没船へ赴き、帰ってこなかった同僚もいる。


亡くなる人員を少しでも減らすため、NHKでは安全な移動手段の開発も行っていた。

絶対に外部からの攻撃を受けない、身に着けられる核シェルター。

どんな高水圧下でも活動できる潜水スーツ。


そして今回、我がNHKは更なる高みを目指すことになった。


月だ。月に、アポロ宇宙船の置いてきた受信機があることが、判明したのだ。

トランシーバーのようなものだが、NASAの公開資料を調べる限り、NHKを受信することが可能である。


ならば、我々は受信料を徴収せねばならない。

技術班は早速、日本初の有人月宇宙船を作り上げた。


俺はその船に乗り込み、いま、打ち上げを待っている……。


え、なに? なんだって?

新たな情報が入ったって?


え、NASAのボイジャーが、NHKを受信できる? あの、海王星の外にあるやつ?

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