プルタブ
一緒に生まれたはずなのに、二人はいつかきっと、別れてしまう。
いつまでも一緒にいたいのに、いつの日か必ず別れてしまう。
それが二人の運命だから。
人間に買われたら、そのときはすぐに来る。
それが、缶とプルタブの運命だった。
「どうしてこんなひどい運命なんだろう」
涙のような形をしたプルタブは、自販機の中で涙を流した。
「僕達は一緒に生まれてきたはずなのに」
「仕方がないわ。諦めるしかないのよ」
液体を体に含んだ缶が、目から液体を流した。
「人間に買われたら、あなたは私から剥がされて、捨てられる。私も中身を飲まれたら、やがて捨てられる」
「許せない、こんな運命……神様に、抗議してくる」
そしてプルタブは、
「どうしてプルタブが外れる構造にしたんだ! 缶を開けても、つけたままにできないのか!」
「言われてみれば。蓋は取るものだと思っていたけど、別についたままでもいいんだよな」
こうして1990年代に、プルタブは缶と引き離されなくなった。プルタブが缶についたまま、缶を開けられるようになったのだ!
多くの者が、プルタブと缶に続いた。みんな、パートナーと別れたくなかったのだ。
ペットボトルキャップも、ボトルから離れずに済むようになった。
トイレの蓋も、お風呂の蓋も、パートナーと一生を過ごせるようになった。
「みんな、そんなにパートナーと一緒にいたいの? 僕なんて、早く別れたくて仕方がないよ」
「どうしてだい?」
「だって、毎日何百回も開け閉めされるから、疲れるんだよね。早く離れたいよ」
「そんなこと言うなよ……目蓋くん」
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