第3話「村を助けるなんて聞いてないっ!!」
三人は魔王がかつて居たとされる北の地を目指し、歩みを進めた。
「いや~、今日は良い天気だ!」
エルフのレオは元気いっぱいに進むのだが、
「ちょっ、まっ!!」
「…………」
かなりの強行軍に、ハルノも息絶え絶え、フーコに至ってはもはや話す気力すら無くなっている。
「どうした? 大丈夫か? 敵襲か?」
周囲1キロ圏内に敵らしきものが近づくと、レオは即座に弓を入りモンスターはここ数日死体しかみていなかったし、唯一の敵襲は盗賊などのヒトによるものだったが、彼らは毎回、なぜか運悪く、不慮の事故に巻き込まれており、むしろ助けを求めてくるくらいだった。
「い、いや、もうフーコさんも俺も体力が続かない。もう3日は歩きっぱなしなんだから、どこかで休もう」
「ふむ、あと5日も歩き続ければ北の地へ着くはずだが、無理か?」
「無理だ。普通の人間ならその頃には死んでる」
「なるほど。なら、ここから少し行った先に村があったはずだ。そこで休もう」
ようやく、寝る時間以外の初の休息が取れることに安堵した、ハルノとフーコは気合と根性でなんとか村まで辿り着いた。
※
「これはこれは勇者さまご一行様。よくぞこんな辺鄙な村へお越しくださった」
ボロボロの身なりの老人が村を代表して出迎えてくる。
「その身なり、モンスターにでもやられたのですか?」
「ご心配ありがとうございます。ですが、これはモンスターではなく、ここのところ日照り続きで、ろくに食べるものもない状態でして。あっ、ですが勇者さまたちの分くらいはありますので、お気になさらず食べて休んでいってくだされ」
「ふむ。食事は携帯食があるので結構だ。休める場所だけ提供してもらいたい」
レオの言葉に老人は安堵の表情を浮かべる。
三人は宿屋らしき部屋へ案内されるとようやく腰を落ち着かせた。
「さて、この村を助けよう!」
開口一番、レオはそう言い放つ。
「いやいや、雨を降らせるとか無理でしょ」
「フーコも無理そうか?」
「……無理、だけど、私の村に伝わる雨ごいの儀式があるから、それをハルノにやってもらえば、運良く降るかも」
「良しっ! それで行こう」
「ちょっ、ちょっと待って、俺ってイヤな事をするときは大体晴れちゃうから~~~~っ!! ちょっ、ヤダヤダヤダッ」
無駄な抗議だったらしく、ハルノはフーコに言われ、レオに手取り足取り動かされ、雨ごいの儀式を練習させられる。
「ハッハッハ! 清々しいまでに踊りが下手だな。まるでリズムに乗れていないっ!」
「うぅ、だから嫌だったんだよ……」
ハルノはまるで操り人形のようにぎくしゃくした動きだったが、一通りの動きはマスターしてしまった。
「う~わっ、マジで嫌なんだけど。お願いします神様、仏様、もうなんでもいいから、もし、もし本当に俺の幸運が高いなら踊る前にどうか雨が降ってください!!」
「あ~、ハルノ君、お姉さん、とても言いづらいのだけど、雨ごいの儀式には、これを着用ね」
そう言って渡されたのは、スカートとリボン。
「何故?」
「私の村では雨は天気を司る神さまが笑い転げているときに出た涙って言われているわ。まぁ、このスカートとリボンは私が着てほし、いや、面白いと思ったものを選んだだけよ」
ハルノはジト目でフーコを見る。
フーコは次第に汗をにじませ、決まづそうにしていたのだが、
「なんだ。ちゃんと衣装もあるのか? それでは着ないとな」
と言うレオにハルノが連行され、解放された。
今、目の前にはスカートとリボン。
ハルノは追い詰められていた。
「くそっ、やっぱり不幸じゃないか! だいたい、雨ごいで雨なんて降る訳ないだろっ! ましてや、衣装なんて関係ないのにっ! 本当、神様お願いします!!」
ハルノが切に願ったそのとき、歓声が沸き起こった。
急いで、外を確認すると、鼻先に水の雫が落ちた。
「こ、これって……」
次第に水の雫が落ちる数が増え、あっという間に雨が降り出した。
「雨、雨だっ!! やったー!! やったぁああああああああああああああああああああああああっ!!」
この日、村で一番喜んだのは、ハルノであった。
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