第2話「世界を救う旅に出るなんて聞いてないっ!!」
あれから10年。
苦竹には新たに、ハルノという名前が付けら、すくすくと育った。
ハルノは10年間特になにもなかったという幸運を噛みしめ、幸運の三毛猫というのもあながちウソではないのかもしれないと思い始めていた。
そんなある日、ネコの獣人の成人である10歳を迎え、ハルノは両親に呼び出された。
簡素な木で作られたテーブルを挟んで向こうには両親が座る。
母親はハルノと同じミケ色で、線が細く見目麗しいネコ獣人。父親は黒白色でがっちりとした体躯をしている。
ちょうどハルノはその2人に似たのか、細い体つきながらも、その実、筋力に溢れ、単純な力ならば父親に劣るものの、瞬発力やスピードでは上を行っていた。顔つきは母親似で男ながら細面ですっきりとしている。体毛の色とあわさってよく女の子に勘違いされる程である。
「ハルノ。実は……」
父親が重苦しそうに口を開いた。
「ミケ色の男が生まれたネコ獣人は昔から勇者と聖女様と共に魔王討伐の旅に出る習わしなのだ。なんでもその3者は同時期に生まれ、世界を救うとされている」
「父さん。俺、そんな話聞いてないよっ! それに魔王? それだって噂すら聞いたことないけど、本当にいるの?」
「う、う~ん、そうなんだよな。でも、お前と一緒で、最近生まれたのかもしれないしな。その調査も兼ねてだ。とにかく、国からの命令なんだ。とりあえず行ってこい!」
「は~い」
ハルノはしぶしぶ了解し、外へ出ると、そこには2人組が待ち構えていた。
「やぁ、キミがハルノ君だね」
先に話しかけてきたのは、鎧をまとった青年。
長い銀髪に尖った耳、そして人間とは思えない整った顔立ち。
「ボクは勇者のレオ、種族はエルフだ。歳はこの中では最年長だけど、気軽に話してもらって構わない。魔王討伐を一緒に頑張ろう!」
爽やかすぎる笑顔にハルノは眩しいものを見たかのように目を細めた。
レオの隣にいた女性は軽くレオに小突かれると自己紹介を始める。
「え~っと、なぜか急に聖女に選ばれたフーコよ。見た目最年長だから労わるように。種族は人間よ。はっきり言って魔王とかどうでもいいから帰りたいのよね。結婚適齢期過ぎてるのに魔王討伐やらなんやらで時間削られるのは最小限にしたい派よ」
見た目、20代後半の女性はげっそりとした顔つきで疲労に色が濃く出ている。
修道服を着ている以外、聖女らしいところは一つも見当たらない。
ハルノはかつての自分のようだと心の中で密かに親近感を感じていた。
「さて、自己紹介も済んだし、さっそく魔王討伐へ向けて行くぞ!」
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