伏魔殿の如く未知なる可能性を秘めた新しい水滸伝。

 本作品を見て「お、新しい水滸伝だ!」と飛び付いた私。

 「序章」を読むと舞台がいきなりどこかの海洋で登場人物たちもカタカナ名。これはもしや異世界ファンタジーな水滸伝なのか?と思いながら「第1章」に突入すると舞台はどうやら中国の北宋、すなわち水滸伝の舞台で間違いなさそうだ……と状況を整理しつつ読み進めれば、次から次へと登場人物が現れる。原作の登場人物もいれば、この作品における108星らしき美少女たちも続々と出てくる。原作水滸伝には存在しない話の展開に戸惑いながらも「第1章」の終盤まで読み進めたところではたと気づく。

 これは原作水滸伝「第一回」のオマージュだ! 原作本編より半世紀前の時代に大尉・洪信が過って伏魔殿を開き108の魔星を解き放ってしまい、それが梁山泊の好漢たちに転生するという物語の発端。それを本作では、伏魔殿を皇帝の命令によって世界各地から攫われてきた美女たちが閉じ込められる宮殿とし、そこから彼女たちが脱出するという展開に置き換えたわけだ。

 だが、本作「第1章」はただの置き換えではない。原作では108人が全員揃うまでにだいぶと時間がかかってしまい、いささか数合わせで印象の薄い者たちも少なくない。本作ではこの段階で全員の存在を提示することで、個性的なキャラクターたちを強く印象づけている。彼女たちがどの好漢に対応するか推測するのも楽しい。

 長大なプロローグにして登場人物紹介である「序章」「第1章」を経て「第2章」から物語が本格的に動き始めるといったところか。