第47話、実は転生者は転生者であること自体が、最大のチートスキルなのだ。
「それこそコミー主義国やナチスドイツのような全体主義国で無ければ、個々の国民の権利と自由を最大限に尊重すべきでしょう。──しかしそれは当然、国民全体の権利と自由である『公共の福祉』を、阻害するものであってはなりません。我々の『同志』の一人である、21世紀の日本から来た転生者に聞いたところだと、戦後の日本国の憲法も、この『個人の権利と公共の福祉とのバランス』こそに、最も重きを置いているとのことでした。例えば21世紀において問題となっている、『夫婦別姓』や『同性婚』の法制化なんかは、一見個人の自由と権利の拡大を実現するので、結構なもののように映りますが、実は公共の福祉を著しく阻害する、『憲法違反の愚行』でしかないのです。例えばぬけぬけと『夫婦別姓化の請願』において、『深刻な災害が多い日本には、夫婦別姓がふさわしい』などと記されていたのですが、嘘つけ、逆だろうが! この憲法改悪を目論む『民主主義と自由主義の敵』どもが! 地震や台風等の大災害に見舞われて、住民を避難させたり行方不明者を捜索しなければならない場合に、夫婦や親子の姓がそれぞれバラバラだったりしたら、無用な混乱を呼ぶばかりとなり、救助作業が著しく阻害されてしまうではありませんか!」
「……あ」
「結局、『夫婦別姓』などといった余計なことをごり押ししようとする輩は、日本の社会システムを破壊しようとする、外国勢力の息のかかった工作員に過ぎないのですよ!」
「ちょっ、ホンマものの『外国勢力の工作員』である貴様が、それを言うのか⁉」
「……おや、そういえば我が南半島政府も、何かと言えばブロッケン皇国に対して、『夫婦別姓』や『同性婚』を法制化させるように、工作をしていましたよねえ?」
「──うっ」
「そう、『同性婚』制度も同じことなのです。何せ『同性愛者』なんて、存在さえしないのですからね。居もしない者を対象に法律なんて執行できないのだから、『同性婚』の法制化なんか、絶対に不可能なのですよ」
「──はあああああああ? 同性愛者が存在しないなんて、そんな馬鹿な⁉」
「ほう、まさか女王陛下は、『愛には貴賤は無い、どのような者にも、どのような相手を愛する権利がある』という、『人類にとっての普遍の真理』を、否定なされるおつもりですか?」
「
「そうですよ? 言ったじゃないですか、『人類にとっての普遍の真理』って。当然同性愛を嗜む方々も含まれるのです。──それなのに、自称『同性愛者』の方々は、存在自体が、この真理に背いているのですよ」
「え、どうして?」
「この『真理』に基づけば、『真に愛する相手が、異性でも同性でも、愛の形としては同等なのだ』と言うことになるので、現在異性を愛している者が、将来同性を愛することになろうとも、現在同性を愛している者が、将来異性を愛することになろうとも、別におかしくも何とも無く、『人間同士の愛の形』としては何も間違って無く、誰からも咎められることなぞあり得ないのであって、つまるところは、『同性愛』はちゃんと存在するし、それは愛の形として間違って無く、憲法や各種法律において罰せられることなぞ無いけれど、『同性愛者』などと言った、愛する相手を同性に限っている『差別主義者』なぞは、その者が将来異性を愛することになる可能性をけして否定できないゆえに、絶対に存在し得ないことになるのですよ」
「──な、なるほど! 人の心は常に移り変わるものなんだから、将来にわたって絶対に『同性しか愛さない』なんて、誰にも言えないのであって、固定的な『同性愛者』などといったものは、原則的に存在し得ないんだ!」
「そして、『同性愛』については、『内心の自由』として、21世紀の日本国の憲法でちゃんと保障されているのだから、『同性婚』に関する法令なんて、新たに制定する必要はまったく無いのですよ。──もしそれでも、『同性婚』や『夫婦別姓』を無理やり法制化しようとするのなら、憲法を改悪してでも日本の社会システムをぶち壊しにしようとする、『国民の敵』以外の何者でも無いことになるのです!」
「……すげえ、ニッポンの『真の護憲派』には、これほど聡明なやつがいるのか⁉ マスゴミどもによる『外国勢力の
「ふふふふふ、怖いのは国内においてだけでは無く、国外に対してもですがね。第二次世界大戦当時アジアにおいては並ぶ者のいない、自他共に認める強大なる軍事国家だったのであり、同じ列強のアメリカとイギリスとソ連との総掛かりによって、ようやく敗戦に追い込むことができたのですからね。──しかもこの世界に転生してくることによって、コミー主義者以上の『
「……『
「強いて申せば、『転生すること』自体ですかねえ」
「はあ?」
「何を訝しげな表情をなされているのです、今あなたの前に、格好な『
「……何言っているのよ、魔女どころか、あなたは女ですら無いでしょうが?」
「そうですよね? ──しかし、間違い無く私は、今回の戦争において、ブロッケン皇国の立場に立って行動いたしました。それは一体、なぜでしょうね?」
「──ッ」
「そう、それは何よりも、私がこの王国の臣民どころか、ブロッケン皇国の魔女でも無く、大日本帝国からの『転生者』だからなのですよ。──ほんと、怖いと思いません? 外見上は一国の外務大臣だったり、普通の一般家庭の主婦だったり、いかにも無害そうな幼い少女そのものだったりする者たちが、いきなり豹変して、自分のことを『大日本帝国からの転生者』と名乗って、世界各地で示し合わせて一斉に武装テロを始めるなんて。下手なチートスキルや、この世界における最大級の戦略魔法や、私が元いた世界における大量破壊兵器なんかよりも、世界にとって、『最強かつ最凶の脅威』になり得るのではないでしょうか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます