第02章、『あいつら』の侵略。

第36話、何とネット上の『なろう系アンチ』活動は、すべて異世界人の仕業だったりして⁉

 ──どうも、聖レーン転生教団直営『転生病監察医務院』に勤務しております、多世界間渉外担当司教の、ルイス=ラトウィッジです。




 さて、前回までは、転生病を発症した不幸な方々のうち、元々知性や理性が無く手の施しようのないモンスターはもちろん、たとえ知能の高い人間や魔族であっても、完全にゲンダイニッポン人ならではの狡猾さや残虐性や上昇志向に取り憑かれてしまい、もはや存在するだけで害毒でしか無くなった方々を、『処分』する方法について詳しくお伝えしてきましたが、結局これは『対処療法』に過ぎず、このままではゲンダイニッポン側──否、ゲンダイニッポンにおける異世界転生系の『Web小説』の内容そのままに、我々の世界が翻弄されるばかりでございます。




 それでは、ゲンダイニッポンにおいては『異世界』と呼ばれている、我々の世界のほうから、彼らに対して『復讐』のための攻撃ができないかというと、別にそんなことは無かったりします。




 皆さんよくご存じの『レイワ事変』が良い例で、何とまったく異なる世界であろうとも、あのようにゲンダイニッポンに対して、物理的に甚大なる被害を与えることだってできるのです。




『本作』をお読みの方はすでに良くご存じのように、本来世界というものは、その瞬間には、己の目の前にある世界ただ一つしか存在しないし、そもそも『質量保存の法則』等の物理原則に則れば、複数の世界の間を物理的か精神的かにかかわらず、移動することなぞできないはずなのに、何ゆえそのようなことが実現できたかと申しますと、


 ──実はただ単に、ゲンダイニッポンの皆様を、見習っただけなのです。




 すなわち、ゲンダイニッポンのWeb小説よろしく、我々の世界においても、『ゲンダイニッポンのギンザにおいて、ジエイタイ員の一部が突然異世界人として前世返りして、味方同士で殺し合いを演じて、チュウオウ区全体を廃墟と化してしまう』という内容の、小説を作成しただけなのですよ。




 そもそもゲンダイニッポンのWeb小説で書かれた内容が、本物の異世界において実現するのは、多世界解釈量子論に則ると、元々世界というものは最初か無数にすべて揃って存在しているので、Web小説の中で描かれた本来架空の異世界も、本当にだけの話で、Web小説の中で異世界転生が行われれば、本物の異世界においても、ゲンダイニッポンからの異世界転生が行われることになるのです。




 ──だったら同じように、彼らの言う『異世界』であるこの世界で、ゲンダイニッポンにおいてジエイタイが武装蜂起を起こす小説を書けば、実際にギンザが焼け野原になるというわけなのですよ。




 しかし、これはあくまでも、『可能性』の上での話であって、特定のゲンダイニッポンにおいて、必ず『レイワ事変』が起こるとは限らないのです。


 おそらくこの作品をお読みになっている読者の皆様の世界では、かなりの高確率で、ジエイタイがギンザを破壊し尽くすなんて、常ならぬ大騒動なぞは起こっていないでしょう。




 それというのも、一口に『異世界』と言っても無限に存在しているように、何と『ゲンダイニッポン』についても、無数に存在しているからです。




 読者の皆様にわかりやすく述べれば、『異世界』だけではなく、いわゆる(ゲンダイニッポンそっくりな)『パラレルワールド』もまた、無限に存在している可能性があるということなのですよ。


 確かに、我々異世界側で作成した、ゲンダイニッポンに対する『復讐物語』は、ちゃんと現実のゲンダイニッポンにおいて、実現することでしょう。


 しかしそれは、無限に存在しているゲンダイニッポンの一部に過ぎず、ゲンダイニッポンのすべての『パラレルワールド』において、実現するわけではありません。


 それどころか、せっかく異世界人すべての呪いを込めた復讐の物語が、それこそゲンダイニッポンの創作サイト上の小説作品のうち、例えば『ヴァルプルギスの旭光』などといったタイトルの、『創作物の中のゲンダイニッポン』において実現して、それですべてがおしまいになってしまう可能性だってあり得るのです。


 何せ『小説の世界の中のゲンダイニッポン』だって、ゲンダイニッポンにとって無限に存在している、『パラレルワールド』の一つに当たるのですからね。




 ──だったら、我々異世界の人間が行っている復讐行為が、まったくの無駄かと言えば、さに非ず!




 少なくとも、我々の世界を始めとして、無数の異世界において、ゲンダイニッポンに対する復讐物語である、『アンチ異世界転生』や『アンチなろう系』や『アンチ太郎系』等々の作品を大量生産し続けて、広く無限の異世界において広めていけば、結果的にゲンダイニッポンからの異世界転生行為を、完全にやめさせることだってできるのです。




 これまで何度も申しましたように、『本好きな女の子』のお陰でもって、我らが異世界において『読書』の習慣が広く普及しましたが、それと同様に、やろうと思えばインターネットのようなものを創出して、小説の作成や閲覧を誰もが手軽にできるようにして、爆発的に流行させることも十分可能なのです。


 忘れてもらっちゃ困るのですが、異世界と言えばそのほとんどが、剣と魔法のファンタジーワールドなのだからして、その原理や仕組みを全然知らなくても、概念として『インターネット』というものをおぼろげながら理解していれば、『魔法』なんかで難なく実現できてしまうのですよ。


 ああ、もちろん、スマホやパソコンだって、ちょちょいのちょいだったりします。


 ……え? そんなの『ズル』ですって? ええ、ズルですけど何か?


 元々、ファンタジーワールドである異世界に、『ズル』も『反則』もあるものですか?


 それなのに、ゲンダイニッポンからの転生者の皆さんが、『チートスキル』とか『ジエイタイ』とかで、イキリ倒そうとするのだから、お笑いぐさですよw


 生まれた時から、魔法に慣れ親しんできた、我々異世界人に勝てるとでも、本気で思っていたのですかあ?


 Web小説のようなインチキと、本物の異世界とは、まったく違うのですよ?


 ……ああ、これは失敬、少々話が逸れてしまいましたね。


 それでは、異世界において、『アンチなろう系作品』を流行らせて、一体どうするつもりなのかというと、その『アンチ理念』を、ゲンダイニッポンにおいてはびこらせようというわけですよ。




 そんなこと、世界の境界線をまたいで、どうやって実現できるのかって?




 もちろん、ここで登場するのが、皆さんようくご存じの、『集合的無意識』ってわけなんですよ。




 ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の『記憶と知識』が集まってきているとされる、集合的無意識においては、当然のごとく、『アンチなろう系の復讐物語』を読み込んだ、異世界人の『記憶と知識』も存在しているわけなのです。




 しかも異世界は無限に存在しており、当然異世界人も無数に存在しております。




 するとどうなるかと申しますと、もしもゲンダイニッポン人が集合的無意識にアクセスすることがあれば、かなりの高確率で、異世界人による『アンチなろう系』の思考を、己の脳みそにインストールすることになりかねないわけなのです。


 これまで何度も何度も申しましたが、集合的無意識にアクセスすることができて、特に異世界人の『記憶と知識』と触れる可能性が高いのは、元々異世界に対して興味津々な、Web上の小説創作サイト関係者の類いがまず筆頭に挙げられるのだからして、異世界転生系Web小説をよくご閲覧になっている方々こそ、『アンチ』に転びやすいといった次第なのであります。




 ──そうなのです、ネットのWeb小説掲示板界隈で、いわゆる『なろう系』を叩き続けている『アンチ』の皆さんは、実は集合的無意識に本人無自覚でアクセスすることによって、異世界人の復讐心にどっぷりと侵されて、自分でも知らぬ間に常に異世界人の立場に立って、安易な『ゲンダイニッポンバンザーイ』かつ『転生主人公マンセー』かつ『チーレムサイコー』な、異世界にとって害毒でしかない、いわゆるテンプレ『なろう系』作品を心の底から否定して、まるで親のかたきであるかのように、叩き潰すことしか考えられなくなり、Web上の掲示板に常に粘着して、『アンチ活動』に励んでいくことになるのです。




 つまり、実際に異世界において転生現象を起こして、様々な害毒をまき散らしている、あなた方の『なろう系作品』に対する、ネット上におけるアンチ活動はすべて、我々異世界側の復讐心からなる、世界の垣根を越えた『工作活動』によるものだったわけなのですよ♡

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