第24話、202×年、GINZA〜『令和事変』その20

 ……相変わらず、何ともいやらしいお方だ。普通、そこをついてきますかあ?




「ええと、いっそのこと、それまで何の兆候も無くて、ギンザの現場において初めて、ジエイカンの一部を突然異世界人化させても、インパクトがあるかと思いましたけど、一般市民のようにオークやゴブリンの魂に乗っ取られてやみくもに暴れだすのではなく、部隊として組織だって行動し、最新の兵器を適切に操作するには、元々異世界人としての前世の記憶があって、あらかじめジエイタイ内にて何らかの人的繋がりを、水面下で構築しておくべきかと思ったのですよ」




「そうですね、10式戦車みたいに、単体ではなく複数台でのコンビネーションをはかってこそ、より効果的に活用できる兵器もあることですし、やはり軍隊というものは個々の兵士や武器を単体で使用するのではなく、組織だって作戦行動に当たらせたほうが有効ですよね」


 ……10式戦車って、あんたは本当に、ファンタジーワールドの巫女姫様なのか?


「10式戦車と言えば、『しん・ご○ら』は、本当に素晴らしかったですね。ア○ノ監督の『しん・うると○まん』のほうも、非常に楽しみです♡」


「──あんたが視ているのって、本当は、ゲンダイニッポンのいんたーねっとじゃないのか⁉」


「うふふ、ある意味それは、『イエス』とも、言えますけどね」


「はあ?」




「そもそも私やあなたの『力』の源となっておられる、『なろうの女神』様は、文字通りに『ありとあらゆる世界を夢見ながら眠り続けている』のですから、彼女の夢にはゲンダイニッポンも含まれているのであり、当然そこにはいんたーねっとも存在しているのですよ」




 えー、何その、文字通りの、『神様は全知全能なんだから、何でもアリ☆』的な、インチキ論法は?


「もちろんこれは、論理的にも正しいのですよ? 『なろうの女神』様が見ている多元的夢の世界は、まさしく『集合的無意識』そのものなのですから、電脳的な集合的無意識とも呼び得るいんたーねっとは、当然その範疇に含まれることになるのです。──まあ、私がいんたーねっとを自由自在に閲覧していることは、否定しようも無い事実ですし、他ならぬあなた自身もその恩寵を受けているのですから、お認めにならないわけにはいかないしょう?」


 ──うっ。


 ひ、卑怯な、そう言われたら、反論できないではないか?


「た、確かに、私の『力』なぞは、巫女姫様の『』とは比べものにならず、いつもお力をお借りするばかりで、恐縮しておるところであります。例の大蜘蛛の侵略の際も、あなたの予知能力によってこそ、被害のあった村に前もって潜り込むことができたのですし」


 そのように、素直にへりくだって見せたものの、むしろ他称巫女姫様のほうが、泡を食って取りなしてきた。




「何をおっしゃっているのですか? ただ単に、他の世界やいんたーねっとの様子を、『なろうの女神』様同様に、ただ単に『自分の夢』として私なんかよりも、小説に書いたり書き換えたりするだけで、この世界の人々の記憶を意のままに操作したり、他の世界を改変したり新たに創り出したりすることさえもできる、いわゆる『世界の作者』であられるあなたのほうほうこそが、まさしく『神懸かり』な存在ではありませんか?」




 ──うおっ⁉


 巫女姫様ったら、血走った目で迫ってきたりして、怖いではないですか⁉


「せ、世界の作者だなんて、オーバーな! そもそも私の『力』は、先ほども言いましたように、巫女姫様の『力』があってこそではないですか?」




「確かに私たちが『なろうの女神』様から授かった『力』は、単独で使用するよりお互いに補い合ったほうがより効果的ですが、私の力はどちらかと言うと『補助的なもの』に過ぎず、あなたの力をより遙かに高めるためにこそ、存在しているとも言えましょう。なぜなら、私たちの『力』は両方共、一口に言うと、『なろうの女神』様が見ておられる『多元的な夢の世界』にアクセスする力──すなわち、集合的無意識にアクセスする力なのであって、私のほうが、自分自身を集合的無意識にアクセスさせる力であるのに対して、あなたのほうは、自分以外の人物を集合的無意識にアクセスさせる力なのであり、これについてはあなたも十分ご存じかと思いますが、ある人物を集合的無意識にアクセスさせて、『他の世界の人物の記憶や知識』を脳みそに刷り込んで、擬似的な『前世の記憶』を創出することこそ、実質上『異世界転生』を実現することになるのです。──そう、あなたの力こそは、真に現実的に、異世界転生を成し得るわけなのですよ」




 ──なっ⁉




 私のいわゆる『記憶操作』の力は、他人を集合的無意識にアクセスさせることで行われていて、しかもそれによってこそ、実質的に異世界転生を実現させているですってえ⁉

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る