おざごん

「嘘」

25歳。

なんの変哲もない、普通の日。

いつもと変わらない朝、いつもの授業、いつもの放課後。


5つ下の好きな人にこう言われた。


「付き合ってください」


俺は答えた。


「ありがとう。付き合おうか」



初めてのデートの前日。


彼女から喫茶店「te amo」を集合場所に指定された。

僕は別れようと言った。



初めてのデートの日。


喫茶店に着くと彼女はホットコーヒーを注文していた。

机の上を見ると彼女の前には

「30年前に発行された小説」があった。

私は別れようと言った。



初めての夜。


彼女はイタリア料理店で頼んだワインで酔ってしまったらしい。

ニタっと笑って「大好き」と言った。

私は別れようと言った。



85歳。私はベッドの上にいた。


消毒液の匂いが部屋の中に広がる。

彼女に伝えた。

いい人生だった。

彼女は「別れよう」と言った。

そして、嘘をつく人は嫌いじゃあなかったの。と言った。


私は別れようと言った。




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おざごん @Ozagon

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