13.孤独で優しい人

*コメント欄では初めまして、ダラシーノでっす。

僕のこのHNハンネですが、おっしゃるとおりに本名が『篠田』なので、少しもじって『ダラシーノ』になっています。

元はですね。僕の先輩で上司でもあった北星秀さんが、北海道に移住した際に開設したアカウント名を、いかにも写真家みたいな、しかも先輩らしい生真面目な名付けだったもんですから、じゃあ、僕は真面目にしないで、ふざけちゃおうということで『だらだらしちゃう篠田=ダラシーノ』と付けました。真面目な先輩が大爆笑の絵文字(→🤣これです)をいっぱいつけて『篠田君、なにそれ!!』と大ウケしてくれたことを思い出します。

みなさま、北星秀の写真集をお手元に迎えてくださって、ありがとうございます!! コメントも、ハコちゃんと一緒にひとつひとつ大事に眺めています!!




*北星さんと、そんな思い出があっての『ダラシーノ』だったんだね……

そんなエピソードも写真集でほしかったな。

ほんとうに、篠田さんと北星さんが、よき先輩後輩として親しかったことが伝わってきました。


北星さんのメートル・ドテル姿、クレープフランベをするお写真を拝見しました。

お顔は見えないけれど、イメージ通りの方でした。佇まいに、その生真面目さと、強い信念をお持ちだと感じ取りました。

ダラシーノさんが、そのお写真に寄せたコメントのとおり、静かに誠実に生きているその中に、いつでも燃え尽きることができる強い炎を、そっと持ち続けていたんですね……。


その絶えずに胸の奥にあった炎が、あの吹雪の明け方、燃やそうと決め向かって行くその行為に、触るとこちらの手が切られるかのような鋭利な信念を垣間見ました。その先に行き着いた『美しさ』は、ただ綺麗ではなく、何事にも、険しいことや、ままならないこと、なかなか手に入らないこと、欲しいものを掴むときは覚悟がいること、強い信念が必要だということを知りました。


何度見ても、泣いています。

この写真を、大事に引き継いだ十和田シェフの男気があってこその北星秀の写真でもありますが、シェフのお嬢様で北星さんが最後に育てようと愛情を注いでもらったハコちゃんが、どうしてあそこで『意味がない』と言われながらも、唄い続けていたのかも、この写真から初めて真意が伝わってくるようでした。


ただただ、リクエストをすれば唄ってくれる、楽しませてくれると応援をしていただけですが、そこにはハコちゃんなりの『エゴ』があったんだと感じました。



*『エゴ』ってなんだろう。本当は、そんなにたいそうなことじゃないと、写真集を見て思いました。悪い意味ではなく、誰にでも、身近に、普段日常でなにげなく生きている中にもあるんだなと思った。俺にはエゴなんてないと思っていた。でも、自分の夢とか思いを叶えること、それだってエゴなんじゃないだろうか。なにかを手に入れようと自分のために生きていることだってエゴなんじゃないだろうか。


北星さんが、近しい親しい人々を切り捨てるように行ってしまった3月10日の朝。ハコちゃんの『今日もあなたと一緒に働けると思っていた』という言葉からもわかるように、彼女にはいつもの日常だったはず。なのに、突然、上司の北星さんが隠し持っていた『エゴの炎を一気に燃やす』ために、ホワイトアウトの中に飛び込んでいった。それだって、日常の中、突然だったはずだ。


エゴはすぐそこの日常に潜んでいる。北星さんが特別なことをしたわけじゃない。

ある日突然、心の中で燻らせている炎が一気に燃え上がる。

だからこそ、日常を侮ってはいけないんだと思えた。誰にでもありえるかもしれない。俺はそう感じた――。最後の連写、命が燃え尽きようとしているのになおシャッターを押していただろうその時を、ハコちゃんは『至福』と喩えていた。そうだと思う。北星秀は満足して去ったのだ、きっと。




*こんな強烈なエゴをそばで感じてしまったからこそ、ハコちゃんは唄い始めたんだと思いました。

当初は『プロになれなかったから、悪あがきで、動画で唄っている自己満足』と言われていましたけれど、周りの声を気にせず邁進していたのは、北星さんの写真を伝えるためだけでなく、そこで彼の背中を追って『エゴってなに、なんなの』とハコちゃんは探していたんですね。


それならもう、悪あがきと言われたところで、ハコちゃんにとっては見当違いの声、本当は心を痛めていたかもしれないけれど、あなたが強く突き進むのはどうしてなのかと思っていたこと、写真集を見て、やっと腑に落ちた思いです。もう教えてくれない師匠の背中を、あのポイントでずっと見つめて追っていたんですね。


北星さんもプロにはなれなかったけれど、写真が好きで自然が好きで、人が愛おしいと感じる日々を生きていた人だったと、日常の写真から感じ取りました。どれも優しい写真でした。特に、給仕をするハコちゃんの姿勢を撮影した写真は、給仕長としてのシビアな目線と共に、大事に思う優しさに溢れていました。ハコちゃんが気がつかない『綺麗』を見つけていたのでしょう。


でも、その優しさはどこから来たのでしょう。どうして写真を撮り続けていたのでしょう。その中に私はうっすらと、彼の孤独を感じました。だから、優しい――。

人のぬくもりを知りながらも、彼が全てを切り捨て逝ってしまったあの日。やっぱり彼は孤独だったんだと思います。どんなに愛されても、愛しても、それが引き留めるまでには至らなかった。


こんなことを書くと、それでは、ハコちゃんが、ダラシーノが、ハコパパシェフが可哀想だと言われそうですが、その本当に辛い哀しみに襲われ直撃されたのは、この方たちで、誰よりも『引き留められなかった』と悔いているのだと思います。なのに、北星さんが生前にどれだけこの方たちと『しあわせに過ごしていたことか』。それも伝わってきます。


孤独だから一人で逝くことができただろうし、しあわせだったから、満足して『エゴ』を実行したんだと思います。


哀しみも宿るのに、不思議と心が温かくなる。そんな写真集でした。

ハコちゃんが、もう毎日唄うのを辞めるという気持ちも通じてきました。

寂しいけれど、でもハコちゃんはやり遂げたんだと思います。


これからは、北星さんが遺してくれたセルヴーズのお仕事に本腰を入れていくとのこと。そして唄も続けるとのこと。またここで会えることを楽しみにしています。

あなたたちのレストランに近いうちに、お邪魔にならないよう、訪れたいと思っています。



*ハコです。皆様のコメント、毎日嬉しく読ませていただいております。

自分でわかっていたつもりのこと、第三者である皆様の目から見えている北星と私の姿に、改めてハッとさせられることが多いです。

それがまた北星の弔いにもなっているし、私の心も慰められています。

また近いうちに唄いますね。リクエスト、お待ちしております――



*写真集を見ました。北星さんの――

*ハコパパ、十和田シェフのコメントに泣けました・・

*矢嶋社長さんの言葉が、生前の北星さんをよく語られていて――

*ダラシーノが見てきた北星さんの中にあった炎……

*ハコちゃんのお姿、初めてでしたがイメージ通り……

*大沼の散策道、素敵だった。近いうちに絶対に行く、レストランも予約入れるからね!

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