君の言葉が聞きたくて

篠騎シオン

答えはいずこ

「息子さんは、余命半年です」


どうして当事者の僕じゃなくて、親に向かって話すんだろう。

僕はそんなことを思った。

それと同時に、ああ、人生なんてこんなものか、とも思った。

反応の薄い僕と母さんに、医者は少しだけ困ったような顔をしていた。


◇◇◇


「余命半年だって。まあ、あんたにかかってるお金を考えたら、それくらいのもんね」


家に帰って、タバコを吸いながら母さんはそう毒を吐く。

将来に期待の持てない僕が大人になるまでにかかるお金の負担よりは幾分か医療費のほうがマシ。そう言うことか。

僕は家にとっては厄介者で、この家は優秀な兄の独壇場だ。

僕はお菓子やお小遣いを与えられたことなんて一度もないけれど、兄は言えば何でも買ってもらえたし、食べられた。

そういう、格差がある。

世間は格差社会と言うのを聞いたことあるし、僕らの家族はきっとその縮図なんだ。

そんなことを考えて、僕はつらいという気持ちや、なんでという気持ちをどこかに置き去りにして、論点をずらす。

それに僕はもう死ぬんだしな。

そう思うと、なんだか少し楽になる気がした。


◇◇◇


「この子、余命半年らしいから」


家族が一堂に会した食卓で、母から僕の余命が父さん、兄さんに告げられる。


「そうか」


「ふうん」


父さんと兄さんのコメントは一言ずつ。

そっか、そうだような、うん。

少しだけ期待していた自分がいた。

なんてったって、死、だ。

なかなかのトピックじゃないか?

母さんはともかく、率先して僕に暴言を吐くでもない兄さん、父さんは少しは心配してくれるような気が、ううん、期待をしていた。

でも、僕のそんな気持ちは粉々に打ち砕かれる。

だけどもう僕死ぬから、いいんだ。

こういうのもあと半年くらいで終わりだから。

終わりが間近にあるってことは、なんて安心することなんだろう。

苦行はもうすぐ終わりを告げる。


◇◇◇


「あんたは今日から学校じゃなくてここに通うんだ。迷惑かけるんじゃないよ」


もう死ぬからあんたの好きにはさせない私たちに迷惑をかけるな、そう母親が言う。

死ぬから最後くらい自由にさせてやろうという意識は、彼女にはないらしい。

将来お金を稼いでくる見込みもない僕は、管理下に置かれて当然。

暗にそう言われて、少し落ち込む。

母さんにとっては僕は道具でしかないらしい。


連れてこられたのは、僕くらいの年齢の子供たちがたくさんいる不思議な場所。

病院の敷地内に併設されている。

でもそこにいる子供たちは、どう贔屓目に見ても明るい雰囲気ではなかった。

推察する。

ここには僕みたいな子が集められているんだろうと。

そう思うと学校よりは幾分かマシな気がして僕は母親に向かってうなずこうとする。

そうして振り向くと、後ろにいたはずの母親は、すでに影も形もなかった。

僕にかける時間が惜しいみたい。

僕についてたと父さんに嘘をつき、浮気相手のところにでも行くのだろう。

子供が何もわからないと思ったら大間違いだ。

でもわかっても何も出来ないのが、子供でもある。

母さんが不倫をし、それを知ってて何も出来ない僕は本当に社会の縮図でしかない。


◇◇◇


トントン、と肩を叩かれて振り向くと、後ろには少女がいた。

洗っていないのか、少し不潔そうな髪の毛に、手には紙とペン。

正直、なんで僕に話しかけてきたのか分からなかった。


「なに?」


心に溜まる鬱憤のせいか、口から出た言葉は思いのほかきついもので、僕は慌てて言い直す。


「どうしたの?」


最初怯えた顔をしていた少女は、言い直した僕の言葉を聞いて小さくうなずくと、手元の紙になにか懸命に書き始めた。

直接話せばいいのにと僕は思ったが、少女のあまりの一生懸命さに何も言わず待つことにする。


『あなたはどうしてきたの?』


お世辞にもうまいとは言えない文字をなんとか解読する。

その言葉を読み取って考える。

仲間入りの理由が知りたいらしい。

僕は少女の流儀に従って紙に綴ろうとするが、少女は紙を大事そうに自分の方に引き寄せてNOの意志を示した。

そして自分の耳を指差し、その後にOKとハンドサインをする。


聞こえるから話せってか。

最初から自分も話せば下手に紙に手を出さないのに。

そう思いながら僕は理由を話す。


「もうすぐ死ぬから」


そう言うと、小さく聞こえてた周りの喧噪がしーんとなった。

僕みたいな子が集められているんだろうと思ったが、僕は思いの他珍しいらしい。

それとも、みんなが知らされていないだけか。

僕の母親は面倒くさがって僕にも聞かせたが、普通の親はきっとそんなつらい現実を子供に直接聞かせられないだろう。

と思うのは僕だけだろうか。

悲劇のヒーローぶってるだけだろうか。

まあ、いいか。

死ぬんだし。

特別でも特別じゃなくても、人間はいつか死ぬ。

そして僕はその死までの時間が少しだけ短い。

だからちょっとくらいヒーローぶったっていいんじゃないか。


その言葉を聞いた少女はその日はもう僕に話しかけてこなかった。

僕は母さんが迎えに来るまで、その少女のことを観察して過ごした。

なんで直接話さないんだろう。

そんなことを思ってみていたのだが、その日彼女が話すところはついぞ見なかった。


◇◇◇


次の日も、その次の日も、僕は母さんに送られてその場所に行った。

僕と同年代の子供たちが、くすんだ顔をしている場所。

子供らしく、はしゃぎ笑う声は聞こえず。

どんよりとした空気が漂っている。

僕みたいに余命宣告を直接受けた人は珍しいとはいえ、みんなどこかでうすうす気づいてるんだと思う。

それは、体を突き抜ける規格外の痛みだったり、抜かれない点滴だったり、並べられた薬の数だったり、家族のくすんだ顔だったり、反対にからげんきだったり。

そういうものによって。

僕ら子供は大人が思っている以上に雰囲気に敏感だ。

なぜなら、親の裁量一つで僕らは命を失ってしまう存在だから。

機嫌一つで僕らはどうされるかわからない。

もちろん、僕だって多少は小学校に通った身。子供の権利がいろいろと保証されていることは知っている。

学校に行かず引きこもっている間は、本ばかり読んでいたしね。

でも、後々罪に問われることとしても、その瞬間子供の運命を決めるの親だ。

非力な僕達では操れない運命を、親というものは大人というものは簡単に決めることが出来る。

それを心のどこかで僕ら子供は恐れている。

僕みたいな、心のひねくれた人間だけかもしれないけど。


◇◇◇


初めてこの場所に来てから一か月は経ったか。

もう残りの6分の1ほど人生を過ごしたらしい。

余命短い僕にはほかの子達は寄ってこず、必然的に最初に話しかけて、いやコンタクトをとってきた少女と僕は一緒にいることが多くなった。

というか、僕が一人でいるとなじめてない僕を心配してか職員が彼女を僕に差し向けるのだ。

さしずめ、彼女は大人たちにとっての便利屋ってとこか。

孤立した僕がトラブルを起こすのを避けさせる狙いだろう。

彼女は少し不安そうな顔をしながらも、それでも職員に逆らわずに僕のそばにやってくる。

そして彼女は変わらずに、紙に言葉を書いて記す。

ここまでくると、僕は彼女はしゃべれないんだろうと僕は推測をする。


『いくつ?』


『すきなたべものは?』


『かぞくはなんにん?』


筆談しかしないわりに彼女は結構おしゃべりだった。

けれど本当に最初にされた質問以外、僕の病気に踏み込んでくるものはなかった。

それに家族に対しての質問も。

家族構成は聞くものの、不覚は質問してこない。

僕がそれを嫌っているのを知っているように。

もしかしたら、彼女もそういうのにトラウマがあるのかもしれない。

それに、もしかしたらしゃべれないのも家族に関係があるのかも。

僕らはそれに踏み込まない。

それがここのルールだから。

そんなことを考えながら、僕は彼女とのおしゃべりを今日も、続ける。

彼女のトラウマに、喋れないことに、触れないようにしながら。


僕はただでさえ短い残りの人生の多くの時間を、彼女が紙に文字を書くのを待つ時間に費やした。

別に文句はないけどね、文句は。


◇◇◇


それからまた二月が過ぎる。

僕の寿命は半分になってしまった。

3か月経つ間に、何人かの子供がいなくなった。

彼らが退院したのか、それとも寿命を迎えたのか、転院したのかは、僕らには知らされない。

子供がパニックを起こさないようにとの、病院側の配慮だろう。

まあ、当事者の僕から言わせてもらうと、どうなったのか分からない得体のしれない恐怖のほうがずっと恐ろしい物なのだが、普通の子供はポジティブに考えるものなのだろうか、わからない。

そして、僕の体の方にもなかなか不都合が起き始める。

薬を飲んでも、症状がだんだん抑えられなくなってきたのだ。

医者からはもうそろそろ入院したほうがいい、そう何度も打診されたが、母さんは渋った。

入院代を出来るだけケチりたいんだと思う。

僕にかける費用は最小限にしたい。

でも、家でずっと面倒見るのは無理だし、勝手に死なれてても周囲の評判が怖い。

その落としどころが今僕のいるこの場所なのだろう。

粘りに粘った母さんは、結局面倒なことを呼びよせる。

僕は家で発作を起こしてしまったのだ。

慌てふためく家族に、呼ばれる救急車。

ここが日本でよかったの声。

最後までお金のこと気にするんだね。

僕が死んだら、保険金とか出るのかな?

そう思ってダークに笑いながら、僕は痛みを受け入れ、意識を手放した。


◇◇◇


「お、おう。起きたか」


目をあけるとそこにいたのは、血を分けた血も涙もない兄だった。

父さん、母さんはどこにいるのだろうか。

分からないが、僕は一命をとりとめたらしい。

そうしてくれなきゃ困る。まだ寿命は3か月もあるのに。

そう腹立たしく思ったが、無理に延命する理由も目的もないんだよなぁ、と自分で気づいてしまって笑う。

そんな笑っている僕に、兄さんは気持ちが悪いものを見るような眼を向けてくる。


「お前、死ぬっていうのによく笑ってられるよな」


なんだか焦っている様子。

僕とそっくりな顔で焦る彼は、なんだかおもしろい。

余命宣告の話をしたときは、あんなあっさり流していたのに、何だっていうんだ。

そこで僕はやっと気付く。

馬鹿で天才な兄が、やっとソレに気付いたことを。


「お前が死んだら、どうしてくれるんだよ」


僕が死んだら僕がどうもこうも出来ることないと思うが、兄の言いたいことはきっとそう言うことではない。

要は、兄が両親に天才と持ち上げられるきっかけとなった、読書感想文とか自由研究とか書道のコンクールを誰が代わりにやるのかということだ。

そりゃ自分でやれとしか言いようがない。

なぜなら僕は死ぬのだから。


「僕は死ぬからもう無理だよ?」


「ふざけんな。お前には最後まで頑張る責任があるだろ。俺がどんな思いでっ」


憤慨して声を荒げる兄さんだが、そもそもそれは僕が望んでやっていたものではないから、責任も何もない。

作っておいた課題が根こそぎ名前を付けくわえられて兄さんのものとして提出されて、それが賞を受けちゃっただけって話だ。

僕は課題を持ってこなかったロクでなしの判を押され、先生には責められ、それがきっかけでクラスメイトにいじめられた。

真相を訴えなかったかって?

もちろん訴えたさ。

けど、みんなは普段から成績と素行のよかった兄さんがやったんだって譲らなかった。成績がいいって言っても僕よりちょっと高いってだけだ。

兄さんは天才でもなんでもない。

僕の死んだ後にそれを目の当たりにして絶望する両親が見れないのがちょっと残念に思える。


「僕の病気を治してくれたら、また続けてあげるよ」


僕は続けて笑いながらそう言うと、兄さんは顔を真っ赤にして病室を出ていった。

爽快だった。

こんな兄さんの顔を見れるなら死ぬのも悪くないな、なんて思った。


◇◇◇


その後、兄さんが病室に来ることはなかった。

代わりに、病室にあの少女が来てくれるようになった。

あの場所の外まで大人からの指示で来るわけがないから、彼女自身の意志で来ていることになる。

使命感かなにかなのだろう。

ご苦労なことだ。

それとも彼女なりに、コンタクトを取らなかった人間の行く末がわからない謎を解明しようとしているのかもしれない。

今日も筆談で話す彼女の言葉を待ちながら、それにしても、と見つめる。

それにしても彼女は病院にいていいとは思えないほど、不潔だった。

最低限体はタオルで拭いているのか、そこまで臭いはしなかったが、髪の毛がひどい。

洗って手入れをしたら、綺麗なサラサラの黒髪になりそうなものなのにもったいない、なんてことを思った。

どうして彼女は体を洗わないんだろう。

そう思ったが聞こうにも聞けない。

だって、あなたはどうして臭いんですか、なんて聞いたら、それこそ彼女も顔を真っ赤にしてこの部屋を出ていってしまうだろう。

彼女がいなくちゃいけない、というわけではなかったが。

父さんも母さんも、兄さんも来ない病室で、僕の話し相手になってくれるのは彼女だけだった。

出来れば失いたくは、ないと思っている。


◇◇◇


夜、どうしても、不安になることがある。

死ぬのも悪くない。

そしていま生きていることに何の希望も抱いていない僕だけれど。

急に、死ぬのが怖くなったりすることがあるのだ。

そういう時は枕を抱きしめてとにかく小さく縮こまってやり過ごす。

そんな時に、昼間一緒にいる少女の、声を想像することがある。

看護師さんのやり取りを聞いた限り、彼女は声を発する機能に問題があるわけではないらしい。

だから僕は彼女がしゃべれないのは、彼女の心の問題ではないかと思っている。

僕はそんな彼女の声を取り戻す、ヒーローになることを夢想する。

そうして夢の中で幸福を享受して、現実の苦しみをかき消し、僕は今夜をなんとか乗り越える。


◇◇◇


目覚める。

もう宣告された日から5か月が経っていた。

余命宣告っていうのは正確じゃないことは僕も知識として知っているから、発作が起こる度そろそろ死ぬんじゃないかなぁって、僕は自分の死を強く感じていった。

痛みも、つらさも、発作の度ひどくなっていた。

そして、その日。

僕は、あの少女がやってきている時に、発作を起こした。

ベッドの上で急にのたうち回る僕を見て、慌てながらも彼女は最善の策であるナースコールを押してくれる。


「い、痛い。苦しい……」


バタバタとのたうち回る僕の手を、彼女は、ぎゅっと握ってさすってくれる。

でも、彼女の声は聞けない。

僕の死でも、彼女の声を取り戻せないのか。

なんだか悔しくて、ふっと意識が遠のいて、そして僕の全身から体の力が抜けていく。

だらんと手を垂らす僕の手は強く握られ。

そしてつんざくような音が声が、刹那僕の意識の中に入り込む。


「いや、いやだぁ。しんじゃいやあああ」


聞いたことのないその声を耳にしながら。

僕はガッツポーズをして、取り戻したぞ、とおもったところでソレに意識を刈り取られた。





◇◇◇






ピ、ピ、ピ


バイタル。

僕の心音を指し示す音がする。

どうやら、まだ生きているらしい。

僕は心の中で小さく舌打ちをする。

なんだよ、このままヒーローで終わりたかったのに。

そう思って目覚めると、部屋の隅で看護師さんに叱られている彼女がいた。


「大声出して病状に触る患者さんもいるんだから、気をつけなさい」


「はい」


普通に、喋っていた。

彼女は声を取り戻したんだ!

その喜びとともに、僕は体を起こそうとして、せき込む。


「あ、めがさめたんだね!」


少女は寄ってくると、にこにこと笑顔を浮かべた。


「しゃべれるように……なったんだね」


僕はやっとのことで言葉を絞り出す。

この喜びを彼女と分かち合いたかった。

けれど、彼女は僕の言葉に首をかしげるとわからないというように看護師さんの方を見た。

なんだ、なんでそんな反応なんだ。

ずっとしゃべれなかった少女が喋ったんだぞ。

自分のことなのになんでそんなにぽかんとしているんだ。

そう思って僕も看護師さんの方を向くと、その人は小さくため息をしてこちらに寄ってきた。


「もうあなたがちゃんと説明しないからしゃべれなかったと思われてるじゃない」


「だってきかれなかったし……」


口をとがらせて言う少女は、かわいい。

けれど僕は混乱した。

確かに、彼女はしゃべれなかったはずだ。どうして、みんなそんなこと言うんだ?

じゃあ、どうして僕は今まであの面倒な筆談に付き合わされていたんだ?


「この子ね。自分から何かを出すと、寿命が縮まると思い込んでいるのよ」


は?


「だからほら、髪とかもなかなか洗わなくて困っているの。ほら、声を出しても寿命は縮まなかったでしょ? だから、シャワーに入りましょ」


少女は大きく体の前で、バツ印を作ると、捕まえようとしている看護師さんの手をすり抜けていく。

そのまま病室を出ようとしている彼女を僕は慌てて引き留める。

僕の。

僕の今までの苦労は。

夢は。

何だったんだ。

ただの思い込み、願掛けみたいなものに振り回されていたというのか僕は。

希望なんて、どこにもなかったのか。


「どうして」


少女が振り向く。


「じゃあどうして、あの時は叫んだの?」


僕の言葉に彼女は少しだけ考えると、紙じゃなくて、言葉で、僕に言った。


「わたしのいのちをわけてもいいから、あなたにたすかってほしかった」


その言葉に、僕はぱーっと霧が晴れるような気がした。

イラついた思いが霧散する。

そして心にじんわりと、穏やかなものが広がっていく。

そして同時に自分の思い込みがすべて、ばっと眼前に引き出されたのだ。

確かに僕は、彼女から話せないとも、その原因が精神的な問題だとも聞いていなかった。

それは、彼女のトラウマで、聞かれては嫌なことだから聞いてはいけないと勝手に思っていたからだ。

でも実際彼女は聞かれなかったから言わなかっただけだと言っている。

僕はただ、全部、思い込んでいただけなのだ。


そうして他のことについても思い出す。

僕は母さんが実際に浮気しているところを見たことがないということを。

兄の課題の件もあれ以来登校していない僕には、本当に学校の中で兄がやったことになっているのかもわからない。そもそもあれは、課題に苗字しか書かずに出してしまった僕も悪かった、出品する際に双子の兄と取り違えがあったのかもしれない。

そしてあんなに受賞を自慢していた両親だったのに、家の中で一度もその賞状を見ていないことも思い出す。

そして、こんなに思い込みがあるのなら、もしかしたら、寿命の件だって僕の思い違いかもしれない。

勝手に宣告されたと思い込んでいるのかも!!


ノックの音。

どうやら珍しく、家族全員で僕の様子を見に来たらしい。

僕がさっきの発作で死ぬと思ったのか、それとも。

ううん、考えるのは止めよう。

僕はいつだって考えすぎる。

ちゃんと、みんなの話を聞こう。

もうすぐ死ぬんだ。

一度くらい、曲がらずにぶつかってみてもいいのかもしれない。


僕はこれから、家族と話し合う。

すべての真実を、知るために。


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