第14話 話し合い2回目

 オルセア皇子に目を付けられたような発言の後は、さらに呼び止められることは無く宿屋に戻って就寝した。さすがに2度も食事をキャンセルするのは良くないし、誘われることもなかったので朝食は宿屋で取った。

 そして、予定通り基地のエリアに行こうと思ったところで、今日話し合う時間を決めていない、と言うか一切決めていなかったことを思い出した。


「ねぇ、デュレン。今日の話し合いって何時からなのかしら。貴方は知っている?」

「いえ、そういえば私も聞いていませんね」

「どうしましょう?」


 このまま、基地の中に入ってしまって良いのだろうか。さすがに案内なして基地の中に入るのは拙いのは理解できる。この場合、基地の出入り口に居る兵士に聞くなり、連絡を取って貰った方が良いのかしら。とそう思っていると、基地の入り口がある方向から兵士らしき人が走ってくるのが見えた。


「あ、レフォンザム様! もしかして前線基地の入口へ向かっている途中でしょうか?」

「ええ、そうですね。どうかしましたか?」

「あ、いえ。私はレフォンザム様を案内するようにと言われておりまして。それで、急いで向かっていたのですが、良かったすれ違いにならなくて」


 なるほど。元から用意が出来次第、案内役を送るつもりだったから詳しい時間を指定していなかったのね。まあ、それならそうと言っておいてくれたらよかったのに。言い忘れかしらね?


「それは良かったわ。私もいつ頃行ってよいのか聞いていなかったから、とりあえず向かっていたのよ」

「そうですか。ならこの先は私が先導されていただきます」

「よろしくお願いしますね」


 そうして私たちの所にやって来た兵士の後をついて、昨日の話し合いに使った兵舎に到着した。そこには既にオルセア皇子が昨日と同じ位置に座って私たちを待っていた。何か昨日と違って兵舎の中の香りが違うのだけど、もしかして事前にお香でも焚いていたのかしら。


「やあ、ミリアさんとデュレン。すまないね。昨日に今回の時間について話していないのを朝になってから気付いてね。伝令の兵士を送ったのだけど大丈夫だったかい?」

「ええ、問題はありませんでしたよ。それに時間については私も聞かなかったのが悪いですから」


 私がそう言ってオルセア皇子に笑顔を向けると、皇子は嬉しそうに笑顔を返してきた。

 うーん。さすがに見惚れそうな笑顔ね。


 昨日はいきなりの訪問だったし話自体が短かったから、座ることなく話していたけど今日は予定に入っていたおかげかしっかりと椅子が用意されているようだ。まあ、もちろん私のだけなんだけどね。デュレンは一応私の従者としてここに居る訳だし、あったところで座らないだろうけど。


「それで、ベルテンス王国への侵略に関しての話し合いなのですが、正直今話し合えることはあまり多くはありません。我が皇国の軍を動かすには私の父親である皇の判断による指示が必要ですし、ここの前線位置に居る兵はどちらかと言えば偵察や情報収集を主に担当している者が大半です」


 それはそうだろうね。皇が国の頂点として真っ当に機能している中でいくら皇族だからと言っても、たかが皇子1人の判断で軍を動かせてしまうのは色々と問題が起きるだろうから。


「現状ベルテンス王国の内情に関してこちらはあまり把握出来ていません。ですが、その辺りの情報はレフォンザム公爵から父上に宛てられた密書に書かれていると記されていたので、それである程度は把握できるでしょう」


 あれ? それじゃあ話し合う事ってほぼ無いのではないのかしら? そもそも侵略の協力をするってことだけど、それってベルテンス王国の情報を渡したり、内部協力者を募ったりって感じのはずだから、本当に何を話し合えばいいのかしら?


「それを踏まえた上で話し合えることは、侵略に関しての細かい部分、どの程度の被害を想定するか、敵対分子の扱いなど。それと侵略を終えた直後はどのように収めるのか。そして侵略が終わった後のベルテンス王国をどうするのかですね」


 あー、それもそうか。終わった後のことはあまり考えていなかったわね。とりあえずミリアを虐めていた奴らに復讐する事しか考えていなかった。

 まあ、少なくともグラハルト商国の関係者は凡そ排除は確実かしら。乗っ取りに成功したとしても残っていたらただの不穏分子にしかならないしね。


「そうですね。その辺りのことはしっかりと話し合う必要がありますね」

「では、先に侵略をする際に関することを話し合っていきましょう」


 そうしてオルセア皇子とベンテンス王国への侵略計画について本格的に話し合いが始まった。まあ、あくまで私たちがまとめた計画は草案のような感じに扱われることになると思うけどね。

 そもそもミリアもオルセア皇子も成人してそれほど経っていないし、国を動かすわけだから最終的には上の立場の者、まあこの場合はアルファリム皇国の皇が判断することになるはずだ。

 そういえばオルセア皇子の歳っていくつなのかしら? おそらくミリアと同じくらいだと思うのだけど。

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