第15話 皇都へ移動…
話し合いは順調に進んだ。人的被害は最小限に、その他に関してはある程度は許容する形にと言う形で纏まった。そして敵対勢力に関してはグラハルト商国の関係者は全て排除、それ以外存在は状況次第で対処することになった。侵略の際に出た物的被害に関しては、現在ベルテンス王国で腐敗政治にかかわっている貴族家を取り潰しにしてそこから資金を得る形になる予定ね。
そこまで話し合ったところで昼の時間になった。まあ、昨日と同じように食事が用意されていたので断ることが出来ずに皇子と食事をとることになった。
昼食も食べ終わって食後の紅茶を出され、この後はまた話し合いの続きね、と思っていたところに話し合いの最中にも皇子の隣に居た秘書なり執事だと思っていた兵士が現れた。
「オルセア皇子。準備が整いました」
「ありがとう。さて、それでは行こうか」
ん? どういう事なのかしら? 話し合いをする兵舎に行く…だとそもそも準備をする必要は無いはずだから準備の部分がつながらない。
そして、差し出されるオルセア皇子の手。エスコート的な奴? 何でこの状況で?
「え…っと?」
とりあえず、差し出された皇子の手に私の手を添える。そして少しだけ皇子の力を借りて椅子から立ち上がった。そしてそのまま皇子に連れられて昼食を食べた兵舎から外に出ることになった。
いや、オルセア皇子。そろそろ手を離してくれませんか? もう手を繋ぐ必要はないですよね?
「え、あの、手を」
「いいじゃないか。互いに婚約者が居ないのだから、問題は無いだろう?」
まあ、そうですけどね? でも、この世界って結構貞操観念がしっかりしているのですよ? 婚約者だろうと人前で手を繋ぐのはあまり良いか押されないのですけど。それとも、アルファリム皇国はその辺りが緩い国なのでしょうか?
「あの、そ…そうは言いましても」
「さて、こちらですよ」
私が必死に言葉で抵抗しようとしても完全に無視されてしまった。これはもう離すつもりは無いようだ。仕方ないので皇子のエスコート?に従って歩いていく。この方向だと基地の外に出てしまうのだけど、どこに行くのでしょうね?
でもエスコートしてくれているのだけど、腰に手を回すとかはしないのね。碧の時に男性が女性の腰に手を回すのは大抵が性的な目的があるとか見聞きしたことがあるし、そう言った関係かしらね。本場のエスコートを見たことが無いから何とも言えないけど。
ミリアの記憶にもその辺りのことはあまりないのよね。長い付き合いのはずのグレテリウス王子は何をしていたのかしら?
「さて、着いたよ」
目の前には私がここに来るまでに乗って来た荷馬車とは違う、よく見る貴族が利用している馬車がある。いや、え? 本当にどういう事かしら? 何で馬車の所に連れてこられたのかしらね。わからないわ。
「えっと、これはどういう事でしょうか?」
「ああ、さすがにここで決められることには限りがあるし、ミリアさんもずっと宿で過ごすことは出来ないだろう? だから一旦計画の報告のついでに城に戻ろうと思ってね」
確かにずっと宿で過ごすのは持ってきた資金的には難しい。出来ない訳ではないけど貴族として色々とあるから、それを考慮すると何れ家に戻る必要があるとは思っていた。でも、アルファリム皇国の城に行くことは想定していなかった。と言うか普通はそんなことは考えないと思う。
「ほら、おいで」
先に乗り込んだオルセア皇子に馬車に乗るよう催促される。いや、おいでって私は何扱いを受けているのだろうか。
拒否することも出来ないので、馬車に乗り込もう。そして、馬車の踏み板に足を掛けたところで皇子に腕を引かれて一気に馬車の中に乗り込んだ。しかし、まさかここまで強く引き上げられるとは思っていなかったので勢いが付きすぎて、そのままオルセア皇子と抱き合うような姿勢になってしまった。
「あ、えっと。…ごめんなさい」
「あ、あーいや、悪いのはこちらだ。必要以上に力を入れてしまった。申し訳ない」
顔が近い。いや、ほぼ密着している状態だから当たり前だけどね!? と言うか思いっきり皇子にもたれ掛かっている体勢だから変に力が入れられない。ちょっと待って! サスペンションみたいな振動吸収機構が付いているのか馬車が揺れて余計に力が入れられないのだけど!?
「す…すいません。体勢が悪いのか力を上手く入れられなくて」
うわぁ本当に顔が近いのだけど。あ、まつ毛長い…っじゃなくて、ああもう! さっき手を引かれていた時から意識しない様にしていたのに、これは駄目だわ。手が大きいとか、所々硬いところがあるから剣だこかしらねとか、結構体重が掛かっているはずなのによろけないから力が強いのねとか、それに薄っすらと香水の香り…って、何か皇子が笑顔なのだけど!?
「ごめんね? 失礼するよ」
「? えっ!?」
皇子が少し屈んだと思ったらいきなり抱きしめられた。突然のこと意図がわからず私の思考が途切れ、そのまま皇子を見つめることしかできなくなった。そして皇子はそのまま流れるように私を横抱きしてゆっくりと馬車の座席に私を座らせた。
もうこの段階で私の許容できる範囲はとうに超え、恥ずかしさのあまり顔を手で覆うことしかできなかった。今、絶対に顔は真っ赤に染まっているはず。
いや、ミリアもそうだけど|私≪みどり≫も碌に恋愛経験がないのだから、オルセア皇子のような美男子に優しく抱きしめられるとかどうして良いのかわからなくなるのよ。
「大丈夫かい? 動けないようでしたので抱きかかえてしまったのですが、嫌…でしたか?」
「っ! い…いえ、大丈夫です。ありがとうございました」
恥ずかしさのせいでまともに皇子の顔を見ることは出来なかったけど、少しだけ見えた皇子の表情はかなり嬉しそうだった。いや、私は一杯一杯なのだけどね!?
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