本編
ここは何処? 私は……え?公爵令嬢になってる!?
第1話 目覚めたら知らない部屋
目覚めたら見慣れない天井だった。何か安い物語のような展開だけどこれはどう言うことなのだろうか。よく見ると高そうなドレスの端が目に入った。ドレスの裾を持ち上げると、どうやらこのドレスは私が着ている物だった。
「なに…これ?」
さらに混乱する。これはどういう事なの? ますます理解できない。周りを確認してみる。
今座っているソファも高そうだけど、いつの間にここに来たのだろうか。いや、夢だなこれ。そうに違いない。じゃないと私がドレスを着ていることが説明できない。
とりあえずソファを撫でる。ふわふわでふかふかだ。実に触り心地がいい。横になったらすぐに寝れそう。ああ、これはソファに座って転寝(うたたね)をしていたってことなのだろうか。
現状を確認していると部屋のドアがノックされた。
「お嬢様。ご支度は済まれていらっしゃいますか?」
「え? あ」
私が返事をしたと判断されたのか、ドアの外に居た人が部屋の中に入って来た。メイド服? 夢にしては私が知らないような服装が出て来たな。そういえばこのドレスも私の知識の中にあっただろうか。
ロングスカートのメイドが私のところまできて、服装を確認し始めた。後ろの結びが少し緩んでいたのか、メイドは後ろに回って結んであった紐を直しているようだ。
改めて思うけど、やっぱりメイド服はロングがベストだよね。コスプレとかで超ミニのメイド服とかあるけど、あれはもう別物と言って良いはずだ。私はあれをメイド服とは認めない。
「ドレスの方は問題ないようですね。ですが、お嬢様。転寝していましたね? 御髪が乱れております」
メイドはそう言って私の所に端に会った板のようなものを持ってきた。
あ、鏡か。と言うかドレスはある程度直してくれたけど髪は自分でやれと言うことか。そう思って鏡を覗き込んで私に更なる疑問と混乱か舞い降りた。
あ…あれ? 私の顔じゃない。いや、どっかで見たことがあるような…どこだったっけ?
私は髪を直すことも忘れ、今ある思考に没頭する。
最近見た? うん、確か最近見た記憶がある。確かあれは……ゲーム? あ、乙女ゲーの振られ役だった公爵令嬢!
とにかく主人公の性格が悪いと評判になった乙女ゲームに出ていた令嬢の姿そっくりじゃない!
別にあのゲームに思い入れなんてなかったし、夢で見るほどの内容でもなかったはずなのだけど。ただ攻略キャラがかっこいいだけの駄作だったし、主人公が婚約者の居る攻略キャラを奪っていくとかどんな内容よ! って感じで、突っ込みどころ満載のストーリーだったからなぁ。販売元は何を思ってあんな物を作ったのか。まあ、ある意味話題作ではあったけどね。悪い意味で。
「どうなさいましたか? 何やら驚かれているようでしたが」
「あ、いえ。何でもないわ。気にしないでくださいませ」
思考に意識を持ってかれている状態で話しかけられたから咄嗟に公爵令嬢っぽい口調で返してしまった。普段こんな話し方はしないから、もしかしたらこの体に染みついている条件反射か何かかもしれない。
差し当たって本当にこの状況は何なのかを考えなくては。そもそも思い出す限り、さっきまで外に居たはずなのだけど。
・――
休日の買い物帰りに突然の雷雨。さっきまで晴れていたと思ったらいきなり雨が降ってきて、建物に避難する前に豪雨になった。
本屋によってから家に帰る途中だったのだけど、最悪。鞄から水がしたたり落ちているから、中にある本はもうずぶ濡れになってしまっているだろう。
楽しみに待っていた新刊だったのだけど、今更急いでも手遅れだからこのまま帰ろう。気落ちしながらそう考えたところで視界が真っ白に染まった。
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