第24話 悪戯仲間にゃ信置く者を
針金を固定しドライバーを回す。確かな手ごたえ。
忘れ物をしてきていないかショルダーバックを覗く。
「えっと……ピッキング道具よし、USBも回収した。中にデータを保存できたのは確認済。SDカードは使わなかったから入れっぱなしで、なんかよく分からない機械も全部ある」
すべて確認を済ませ写真部の部室前から五、六歩離れると、どっと息を吐いた。
「はぁ~っ、ドキドキしたぁ。今日は配管のメンテで文化部総休みって本当だったんだ。すごいな
極度の緊張から解放され思わず
心臓の音が大きすぎたせいだ。完全に油断して、
「あら、
「ひゃぎっ!?
飛び上がって振り返る。そこには、両手に執行部員を連れた
人に会うと思っていなかった
そんな彼女の青い顔を見て、
「みんな先に行っておいて。友達なの」
連れの二人は
「にゃ、
「私は生徒会の会計監査で少しね。
言いながら
髪を後ろで一まとめにし、前髪もヘアピンで固定している。手にはビニール手袋を付け足元はなぜかサイズの大きい新品の上靴を履いていた。ちらちらと特定の部屋へ注がれる視線、そして腰のショルダーバッグから覗く針金……。何より
「前科……」
「えっ!?」
「塀の中の知り合いには紹介状書くから安心して馴染んでね……」
「ちょっ、後生です! 投獄前提はやめてっ! 話を聞いてください!」
涙目でとりすがる
「ぷっ、くふふっふふっ冗談よ。本当に可愛らしいんだから
そっとショルダーバックの針金を中へ押し入れてジッパーを閉めてやると、
「もちろんです。とめき先輩が主犯です。ちなみにこの後女子寮にもお邪魔する予定です」
「白状しすぎよ。部へ貸し出してるパソコンのパスワードを訊かれたのはそういうことね。証拠集めなんでしょう? 女子寮ということは、犯人は内部生か技能特待生かのどちらかかしら。でも、どうやって入るの? うちの寮は個室にも電子ロックがかかっていて専用のカードキーがないと……」
「偽装ID? を預かりました。これでなんか全部屋入れるそうです」
「セキュリティを強化する必要がありそうね……。予算案提出しておこうかしら」
「そのほうがいいと思います」
真面目な声に深く同意する。
「彼が身内以外にその辺りを任せるとは。
「いえ、便利にパシられてるだけだと思いますけど」
真顔で異論を唱える。
「そうだとしても、彼は信用できないものを使いはしないと思うよ」
やけに確信の籠った視線に、
◇ ◆ ◇
馴染みの警備員に
「こお~ま~ざあ~ちゃんっ。居るう?」
大きなリクライニングチェアに完全に隠れてしまっている部屋の主へ呼びかける。すると椅子が回転して、赤毛の少女が姿を現した。
「なんだ
「やっぱここに居たんだなあ。お疲れ様。ジュースいる?」
扉を閉めて横につく。フルーツミックスジュースを差し入れすると少女が目元を和らげた。この部屋の中で一人のときの
「なんだ、また懐かしい飲み物を」
「初等部入る前から好きだったっしょお?」
「変なことばかり覚えているな。それで、貴様がわざわざ足を運ぶとは何用だ? 今月は先月からの引継ぎを含め三件の仕事を請け負っている。貴様の言うことを聞く
「新しい依頼じゃなくてねえ。ほらあ、
「……まだだが」
「ええ~。サボってたのお
半笑いでほっぺをつんつんすると、
「総録画時間がどれだけ膨大か分かっているのか! そもそも仕事量が多い!
「ダメえやめてえっ。オレたちの仲だろお」
「気色悪い声を出すな。不快で耳の穴が
「え……なんでそんなん持ってんのお? 『僕アンパンマン!』押しちゃったあ」
本当に渡されてちょっと引いてしまう
「ふんっ。今夜は手が空いている。急ぎなら明後日までには終わらせてやるが」
「マジでえ?
「無駄な発言しかできないのならその喉仏えぐり取ってやろうかっ」
「やめてえ美少女ボイスになっちゃうう」
「なるわけないだろう、解剖学を学びなおせ! ~っ体をくねらせるな気色悪いっ!」
「全部やっちまう必要ないぜえ。時間と人の目星はついてる。そこだけ抜き出して整理してくんねえ?」
「また何かやっているのか貴様は」
「生徒会長の依頼でなあ。なあに、オレの目標には影響ない。安心しろよ
目を細め、八重歯を見せて
「全部ちゃあんとぶち壊してやるからよお。それがオレと『僕アンパンマン!』いいとこで押しちまったああ! と、とにかく、この資料読めばわかるから、あと頼んだなあ」
いろいろ
「ふんっ。クズが格好つけるからだ」
嫌いな男の失態に心底愉快そうな笑みを浮かべた後、
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