第4話 初めての外食

明里のお父さんから電話が掛かってきた



『もしもし』



あの低い声だ



『もしもし、小泉です』










‥‥‥‥‥‥‥‥‥っなんか話せよ!電話の沈黙気まずいからやめてくれよ!




『もしもし、あの、娘さんの件なのですが‥』




『ああ、そうか。それで電話したんだった』



はや!忘れるのはや!にわとりより物覚え悪いぞ



『娘から聞いていると思うが、未だ弟とコンタクトがとれなくてな。だから、弟が見つかるまで君の家に預かってほしいんだ。どうやら娘は昨日は安心して眠れたそうだからな。ホテルに泊めるくらいだったら安心して暮らせる君の家のがいいと思ったんだ』



逆に俺は娘さんに誘われて安心して眠れなかったんですよ



『それで、娘を預けるにあたって、もともと送るはずだった学費に加えて、滞在費と食費、娘の洋服や雑貨などを買うお金を送る。恐らく1ヶ月で100万円くらい送るつもりだ』


ひゃ、ひゃくまんえん?1ヶ月で100万円とかどんだけ使うんだよ!まさか、明里は凄い金遣いが荒いのか?い、いや、でも昨日のコンビニを見る限りそうも見えなかったな



『それに、君に送る謝礼金なんたが、1ヶ月50万円でどうだろうか』




俺は聞いたこともない大金に驚く




『ご、ごじゅうまん?だ、だ、大丈夫ですよ!そんな大金!』




『いや、そういうわけにもいかないんだ。ホームステイ先には謝礼金を払うのは常識だ。』




『そ、それでも50万円は少し多いのでは?』




『いいや。君には急遽に娘を預かってもらうことになったわけだ。これ以上金額は下げたくない。娘から聞く限り、君は一人暮らしをしているのだろう。金銭面的にそう悪くない話だと思うんだが』



確かに耳寄りの話ではあるが‥‥



『でも貰えません。俺は今の生活でも過ごしていけるので大丈夫です』




『いや、ダメだ。とりあえず貰ってくれ』




『いや、でも‥‥』




『君がだめでも、こちらから勝手送らせてもらう。もし君がそれを自分のために使うのが嫌ならそのお金で娘を日本の色々な場所に連れていってくれ』



これ以上断っても恐らくこの人は引かないな

まあ、彼女のために使うのなら、いいか‥‥



『分かりました。受け取らせていただきます。でも、それ以上は金額を上げないでください。』



『ああ、分かってる。では、よろしく。娘を頼んだぞ。』



『はい。分かりました』



プー プー プー




『あの人何か言ってましたか?』



電話を終えたのを見計らって明里が尋てきた



『ああ、明里のことをよろしく頼むと言ってた。』





『そうですか‥‥では、これからよろしくお願いしますね!』




『ああ。あ、あとお金の件何だが、明里の食費や滞在費や洋服を買うお金のなどを送ってくれるらしい。』



『それはよかったです。私もこれで日本の洋服を買うことができますから』



『ああ、あと‥‥いや、何でもない』



俺は明里に謝礼金をもらったことを言おうか迷ったがやめた。



『はぁ‥‥これは隠し事の匂いがしますね~何かあったんですか?』



くそ、やっぱり聞いてくるよな



『い、いやその、なんだ、明里と暮らせることになって嬉しいって言うか何て言うか‥』



やべぇ、誤魔化すために口走って恥ずかしいこと言ってるよ



すると明里は顔を赤らめてながら俯きがちに言う



『そ、そ、そうですか。それは‥か‥‥‥す』




『ん?何て言った?』




『何でもないです!それより、昼御飯はどうしますか?』



時計を見るともう十二時を過ぎている



『昼飯作るかー‥‥っても冷蔵庫に何も無いんだよな。どうするか‥』


カップ麺は朝も食ったしなーと考えていると明里提案してくる



『外食にいくのはどうですか?私レストランにいってみたいんですよ!』


なるほど。いい案だ。でも、俺はお断りだ。



『いや、俺は外に出るのが好きじゃないから行かないぞ!』




『えー!?何でですか!?昨日は一緒にコンビニ行ってくれたじゃないですか!』



『昨日コンビニ行くときは夜で比較的涼しかったからな』



『今日だって涼しいですよ?』



『いいや、暑い。だから出たくない』



『何ですかその子供みたいな理由は。でもまあ、仕方ないですね。価値観は人によるので今日は我慢します。でも、いつ連れていってくれんですか?』



『んー‥‥涼しくなったらな』



『分かりました。それまで待ちます‥‥って、まだ六月ですよ!これからもっと暑くなるんですよ!いったい連れていくのはいつになるんですか!』


明里は大声で反論してくる



『んー冬かな』



『それじゃだめです!やっぱり今日行きますよ!』



『いやだ、俺は暑いから行かない』




『暑いからって‥‥何で暑いのが嫌なんですか?レストランは涼しいからいいじゃないですか!』




ふっ、こんなこと言われるのは想定内。だから返す言葉も決まってる



『いや、良く考えてみろ。行きは良いとしてレストランでご飯食べたらお腹一杯になるだろ?その状態で、めちゃくちゃ暑い中家に帰るんだぞ。絶対気持ち悪くなるに決まってる!』




『そんなになりませんよ。満腹の時帰るのが嫌ならどこか寄り道していけばいいじゃないですか!』



『俺は人混みが嫌いだ。出来るだけなかには要りたくないんだ』


すると明里は悲しげに言う


『分かりました。京太郎は私と行きたくないってことですね。嫌なら遠回しにじゃなくて素直にそう言えばいいじゃないですか‥‥』





『い、いや、別に一緒に行きたくないとかそういうことじゃない』



『じゃあ、一緒に行きましょうよ』



『で、でもな‥‥‥んっ!?』



突然明里が俺の手を握ってきた。



『ダメですか?』



ダメじゃないです!柔らかいです!



『わ、わかったよ。いいよ。一緒に行こうか』




『ふふっ、押しには弱いんですね』



明里にあざとく笑われた

くっ、またやられた‥‥


====================================


『なに食べます?』


メニュー表をもった明里が聞いてくる

そう、俺たちは人気ファミリーレストランのスココに来ている


『んーそうだな。俺はこのビーフハンバーグがいいかな』



『それ美味しいですか?』




『ああ。スココといったらこれってくらい人気があるし上手い!』




『なるほど!では私もそれにします』



『おお、じゃあ頼んでいいか?』



すると明里はベルを取り尋ねる


『あ、私が頼んでいいですか?たしかこのベルを押すんですよね?』





『ああ、押してくれ』



『では、押させていただきます!ポチッ!』


ピンポーン


店内に響き渡るベルの音



『おおっ!音大きいですね』



そんな驚くか?イギリスにはベルないのかよ




『あっ店員さんが来ました!』



『楽しみすぎだろ。レストランは遊園地じゃないぞ』




すると聞き覚えのある声が聞こえる



『お待たせしました。ご注文は‥‥って、小泉?』



俺は突然の知り合いに驚く



『お、おお、高城(たかぎ)か!ビックリした。ここでバイトしてたのか?』



高城は頭をかきながら言う



『う、うん。最近し始めたんだ。ほら、うち貧乏だからさ。私も働かなくちゃね。』




『そ、そうか。まあ、バイト頑張れよ!』



『言われなくても頑張ってるよ。んで、今日は何しに?美人な彼女とデート?』



『は?ち、ちがうよ!こ、こいつは俺の家にホームステイしに来た人だよ。名前は本間明里』



明里は慣れたように挨拶をする



『はじめまして。本間明里です。京太郎君の家にホームステイをさせていただいています。どうぞよろしくお願いします』



『凄い挨拶だね。絶対どこかのお嬢様でしょ!』



そういえば明里の家庭事情をよく知らない気がする。



『本間さん。こっちは俺のクラスメイトの高木美沙。馴れ馴れしいけどいい奴だから仲良くしてやってくれ』



『馴れ馴れしいとか一言余計!』


俺は頭にチョップされる



『明里ちゃん。高城美沙だよ。よろしくね!』




『え?は、はい‥‥』



ん?なぜ困惑してるんだ?



『ってか明里ちゃんは何歳?』



『16です』



『ってことは高2?』




『はい。そうです』



そうなのか。なんとなく同い年くらいってことは分かってたけど。俺全然明里のこと知らなかったな




『どこの高校に通うの?』



そういや、どこなんだ?



『宮之原高校です』



『まじ!私たちと一緒じゃん!ってことは転校生か!学校でもよろしくね!』


同じ高校か。まあ、俺の家からだと自然にそうなるか



『はい、学校でも仲良くしてくださいね』



『うん!それで、お客様、ご注文は何にしますか?』



『じゃあ、このビーフハンバーグを二つ頼めるか?』




『分かりました。以上ですか?』



『うん』



『では、確認させていただきます。ビーフハンバーグが二点でよろしいですか?』



『うん』



『では、ごゆっくりお過ごしください。小泉、彼女と仲良くね!』



『う、うるさい!』



注文が頼み終わり高城が厨房へ戻る



『ここのハンバーグは本当に上手いからな』



『そうですか‥‥』



ん?何か元気ない?歩いて少し疲れたのか?せっかく来たんだし、元気になってもらわないと



『食後にデザートでも食べようかな』



俺はメニュー表を取り明里に尋ねる



『何が食べたい?パフェとかケーキとかたくさんあるぞ』



彼女は静かに答える



『私はいりません。ハンバーグだけでいいです』



『そう言わずに食おうぜ。コンビニでアイス買ってたし、甘いもの好きなんだろ?』



『いりません』


ん?何で不機嫌なんだ?もしかして、俺が行くの嫌がってたことまだ根にもってんのか?

まあ、とりあえず謝っとくか‥



『ごめんな』



『はぁ‥私が何で怒ってるか分かりますか?』



やっぱりお怒りだった



『まあ、分かっているつもりだ』




『じゃあ聞きます。何でそういうことしたんですか?』



『いや、最初は暑いから嫌だったけど、別に今は嫌じゃないっていうか、むしろいいっていうか。まあとりあえず、あの態度は謝るよ。ごめんな』



すると明里は首をかしげながら言う



『な、何を言ってるんですか?』



え?ご志望とちがった?



『いや、だって俺が行くの嫌がってたから怒ってるんじゃないのか?』



『ちがいますよ!私はそんなことでは怒りませんよ!』




え?ほんとに違ったわ



『え?じゃあ何に怒ってるんだ?』



『そ、それは‥‥』




明里は急に下を向きもじもじする。

やっと顔を上げたかと思えば顔を赤らめながら言う



『だ、だって、名前で呼んでくれなかったじゃん』



俺は急にため口になって驚く




『え?いつだ?』




『高城さんが来たとき!』



『え?そうだっけ』





『そうだよ!私を本間さんって言って紹介した!私を明里って呼ぶって約束したのに!』




『それは、なんだ、下の名前で呼んでたら勘違いするだろ?だからだよ』



『どう勘違いするの?』



『それは、付き合ってたりとか?』



『別にいいじゃん!そんなこと気にしなくたって。』

拗ねたように言う


えっ?気にしなくていいの?


俺が言葉に詰まっていると発言を撤回された



『や、やっぱなんでもない!!別に良くない!で、でもみんなの前でもいつもみたいに私のことは名前で呼んでほしいな‥‥』



上目遣いはずるいだろ!承認せざるを得ない!



『わ、分かったよ。できたらそうする』



『わ、分かればいいです。さ、さて!ハンバーグはそろそろですかねー?あ、デザート頼むって言ってましたよね?私は断然パフェがいいです!特にイチゴが好みです!』



とりあえず元気を取り戻したからいいか。でもな。んー、やはり女の子ってなにを考えてるかはよく分からない



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