第2話 夜の旅

星空が広がる空の下で二人並んで歩く。


『あ!あれがコンビニですか?』



彼女が尋ねてきた。



『ああそうだよ。イギリスのと違うか?』



『はい!イギリスのコンビニはこんなに明るくないんですよ。でも、少し眩しすぎますね』



うん。そうだよ。君の笑顔が眩しすぎます。



コンビニに入ると客は誰も居なかった。


『コンビニで二人きりって緊張しますね』




『そうか?店員さんもいるし、実際四人だよな』



『京太郎はすぐそーゆーこといいますね』



『まあ、な。こういう性格なんだよ』



すると彼女がニコニコしながら言う



『まあ、そういう京太郎も好きですよ!』



『お、おう』


まあ、俺も俺の性格好きですから。別になにも思いませんよ、別に



『照れてますね~』



『照れてない!ほら、下着を買うぞ』



『まさか、私の買う下着を見るんですか?』



い、いや、俺が見るわけないじゃないですか



『見ないよ。お金渡すから好きなの買ってきな。あと他にほしいものあったら勝手に買っていいぞ。俺は外で待ってるから』



『わかりました!では早く外に出てください!』


おお、追い出されちゃったよ


5分ほど経っただろうか



ピロピロピロー



『お待たせしました。アイスを買わせていただきました!』



『おおアイスか。じゃあ早く帰って食べるか』



踵を返そうとすると、腕が後ろに残る。



『コンビニではダメですか?』



え?か、かわいい。女の子に帰らないでって言われてる気分だったわ。てか、なんでそんなコンビニがいいんだ?



『い、いやダメじゃないけど。まあ、他に客もいないしな。』



『ありがとうございます。では入りましょう。』


再びコンビニに入る。


彼女が買ったのはコンビニ限定のソフトクリーム。ほぉ、限定品ね。なかなか目の付け所がいいじゃないか。限定品って若干値段高いけど、すごい美味しいんだよな。


『どっちにしますか?』


バニラとチョコのソフトクリームを差し出してくる。んー、悩むな。まあ、ここは無難にバニラを食べてもらいたいから、チョコでいいか



『チョコがいいな』



『では、どうぞ。』



二人で食べ始める。



『凄く美味しいです!コンビニのアイスはこんなに美味しいなんて思いもしませんでした!』



『それな!コンビニって無駄にレベル高いんだよな』



すると、彼女が俺のアイスを見てくる。



『チョコも食べたいです』



気に入ってくれたようだからチョコをもう一個買ってくるか。



俺が席から立とうとすると彼女の柔らかいところが俺の肩に当たった。



パクっ


俺のアイスが食われた。


え?


『うんっ!チョコも美味しいですね!』


俺のソフトクリームにバニラがちょんと付いている

おーーい

俺のアイスに少しバニラが残ってるよー

ミックスになっちゃったよー


俺はなるべく自然に返事する



『な、なら良かった』



『私のバニラも食べますか』


私のバニラ!?おお是非とも!と思ったとき、男性店員二人の冷たい視線を感じた。こわっ!絶対後で後ろから刺されるよ俺!


『いや、ここのバニラだけで我慢しとくよ』



俺はチョコに付いたバニラを見せる。



『え、ああっ、すいません‥‥』


黙り込む彼女。


やべっ、これ完全に引かれたな。自分でもキモいと思ったもん。




『ごちそうさまでした!』



俺は殺意を感じながらコンビニを出る。




『ただいま』


彼女は不思議そうに尋ねてくる



『ただいま?なんですかそれは?』



もう知らないことなんかないだろって位話せてたけどただいまを知らないとは。驚きだ。




『なんだ、家に帰ったときに言う言葉だ。なんだ、英語で言うと、ア、アイムバックか?』



『あー I'm backですね!わかりました』


なんて発音のよろしいこと。



『発音いいね。ってイギリスにすんでたからか。英語はペラペラなの?』



『はい、日本語よりは上手ですよ』


え!?日本語より上手いのか!もうそれどんなレベルだよ。


『あと、フランス語とスペイン語も話せます。といってもスペイン語は日本語と同じくらいですが‥‥』


まじかよ。バカだと思ってたのに。それに日本語と同じくらい話せたらもう怖いものなしだね!



『海外旅行に行くときは私を連れてってくださいね。必ず役に立ちますから!』


ふっ、俺が海外など行くものか。そもそも、日本国内でもほとんど何処も行かないんだぞ!



『いや、俺は旅行に行かないからな。』



『なんでですか?私と二人きりが嫌なんですか?』


え?二人きりなの?それなら迷うなー

と思考を巡らせていると彼女が悲しそうに言う。



『まあ、そうですよね‥‥女の子と二人きりは嫌ですよね‥‥』




『い、いや、行くよ!君と一緒なら何処にでも行く!寧ろ行きたい!』


また気持ち悪いこと言ってるよ俺



『何処にでも?』



『いや、そ、その、海外ね、海外。それより風呂沸いたから早く入りな!』



『私と何処までもいきたいなら、やっぱり一緒にお風呂に入りませんか?』



それって俺に好意を向けてるってことか

それなら俺は入ってもいいんじゃないか‥‥

いや、だめだ!まだ会ってから一日もたってないよ!だめだよ俺!


『いや、入 『冗談ですよ。また引っ掛かりましたね』


いや、別に入らないよ。俺は一人で入るの方が好きだもん。



『では、入ってきますね。覗かないでくださいね』




『おう。覗かないわ』



====================================


『お風呂ありがとうございました~』


明里が出てきた。


『おう。じゃあ俺はいってくるわ!』



『まさか、こっちが狙いだったんですか?』



ん?こっち?


『こっちってなんだ?』



『私の入ったお風呂を堪能することです。』



『ばっ、馬鹿か!?俺がそんなことするわけないだろ!』



『赤面してますよ!照れてるんですね~』



『う、うるさい!じゃあ入ってるからな!そっちこそ覗くなよ!』


『そんなこと言うなんて、覗いてほしいんですか?』



『からかうな!』




俺は急いで風呂に入る。


ふぅ。今日は疲れたな。てかなんだあいつ。

急に俺をからかいやがって。

これにあいつが入ったのか。ふぅ。

いや、別に意識してる訳じゃないけど、そういうこといわれるとね。ね!


====================================


俺が風呂から出ると明里はテレビを見ていた。


『私の入ったお風呂は堪能できましたか?』


俺は負けたままでいられないと思い、からかい返す


『ああ、お前の出汁で疲れた体が癒されたよ』



『そ、そ、それならよか‥‥‥‥す』



赤らんだ顔を俯けて言う。



『ん?何て言ったんだ』



『なんでもないです!』



ふ?勝ったな!俺が勝ち誇った顔で見ていると明里に言い返される



『それより、京太郎?何故私を名前で読んでくれないんですか?まさか、照れてるんか?』


くっ、痛いところを突かれたな。俺はいつも女子のことを代名詞でしか呼ばないのである。

なんか名前で呼ぶのは抵抗がある。別に恥ずかしい訳じゃない


『照れてなんかないよ。ただ、まあ、なんだ、

ただ呼ばなかっただけだ。』



『じゃあ呼んでくださいよ。京太郎には名前で呼んでほしいです』



『あ、うん。ほんま』


明里は不満げに言う。


『何で苗字なんですか?』



『ファーストネームじゃなきゃだめか‥‥‥

あかり?』




『なんで疑問系なんですか?』



『わ、わかったよ。あ、あかり』




すると明里は子供のように微笑む



『ふふっ、やっぱり照れてるんですね!』




俺はこの時感じた自分でも説明できないような気持ちを言葉で表現することができず、声だけを漏らした



『あぁ』




『ついに認めましたね。私の勝ちです。』





『ああ、うん。というか、もう11時だぞ。そろそろ寝るか。』




『そうですね。私も今日は疲れて眠いので寝させていただきます。』



『じゃあ、布団敷くから少し待っててくれ。』


俺は畳の部屋へ行き、ずっと使ってない押し入れから慣れない手付きで布団を敷く。意外と疲れるな。




布団が敷き終わり、寝室から声をかける



『おーい、準備できたぞー』



返答がない。俺はリビングに行くと彼女はうたた寝をしていた。

長いまつ毛に、透明感のある綺麗な髪。

こう見ると本当に綺麗な顔をしてるんだな。


『おーい起きろー。布団で寝るぞ』


俺は明里の肩を揺する。


『んーー、はぁ、んー、あ、おはようございます』



『おやすみなさいだ!これから寝るんだよ!』



すると彼女は目を見開き胸に手をよせる



『あ、そうでしたか‥‥‥‥‥って、ま、まさか、襲おうとしてたんですか?』




『違うわ!どうやったらそんな考えに至るんだ!布団用意したからソファじゃなくてそっちで寝ろ』



ゆっくり立った明里の足はおぼつかない



『私を布団まで運んでください』



布団まで運べだって?それってもしやー

いや待て、ただ運ぶだけだ。他意はない




俺の肩に手をかけて布団まで歩く。




『ついたぞー』


俺が肩にもたれ掛かる明里を布団へ寝かせようとすると明里俺の手を引いた。

ガタッ

二人の顔が互いに向き合う。

所謂床ドン状態だ。


近くで見る明里の顔はどこか色っぽい。俺が恥ずかしさから目をそらそうとすると、それを引き留めるかのように話し出す。




『襲ってもいいんですよ?』




はぁ、もう1つのことしか考えられないが、

俺は爆発寸前の理性を必死に抑えながら言う




『襲うわけないだろ。今日は疲れただろうから早く寝な。』



すると彼女は見透かしたように言う



『やはり、京太郎はつれないんですね』



やはり、か‥‥


俺は体を起き上がらせ和室の扉へ向かう




『じゃあ、おやすみな』




『ええ、おやすみなさい』



ふぅ‥‥なんとか一日が終わった

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