第80話

 俺は朝美たちから逃げるようにベランダに出ると雪が降っていた。

 さすがに寒いな。

 

「寒いね」

「陽彩」

「中はすっかりと盛り上がっちゃってるよ」

「まぁ、いいんじゃないか。楽しそうだし。お父さんもいるから大丈夫だろ」

「だね。てか、もう今年も終わりか〜。そして、受験・・・・・・」

「不安なのか?」

「ちょっとだけね」

「大丈夫だろ。陽彩が頑張ってるのは俺が一番よく知ってる。あんなに頑張ってるんだからきっと大丈夫だよ」

「翼がそう言ってくれるなら心強いかな」


 横に立っている陽彩が俺の肩に頭を乗て甘えてきた。俺はそんな陽彩の頭をそっと撫でる。手はかじかんで冷たかったけど、心は温かくなった。だが、受験前に風邪をひいてしまってはいけないので、部屋の中に入ることにした。


「そろそろ中に入るか」

「そうだね」


 中に入ると三人は飲み疲れたのか机に伏せて眠っていた。


「まったく……」

「あはは、気持ちよさそうに寝てるね」

「お父さんまで寝てるし」

「ごめんね、お母さんが迷惑かけて」

「毛布持ってくるわ」


 俺はそう言うと、両親の寝室から三人分の毛布を持ってきた。

 リビングに戻ると、陽彩は後片付けをしていた。


「片付けさせてしまって悪いな」

「大丈夫だよ」


 俺は三人に毛布をかけると、片付けの手伝いをすることにした。


「俺たち受験生だっていうのにな……」

「ほんとだよね」


 陽彩は可笑しそうに笑いながら皿洗いをしていた。

 俺は陽彩が洗い終わった皿を拭く係をしていた。

 お皿を洗い終わると俺たちはソファーに座ってカウントダウンのテレビを見ていた。

 

「翼もこの番組見るんだ」

「そうだな。毎年見てるかな。陽彩も見てるのか?」

「うん。私の家もこの番組を見ながら毎年年越ししてるよ」

「今年はいろんなことがあったな」


 俺はしみじみとそう呟いた。


「ほんとだよね。一番の驚きは翼と一緒にいることかな」

「それは俺も同じ」

「ね。翼のこと三年になるまで知らなかったのに、まさか今こうして恋人同士になってるなんて……。人生って何が起こるか分からないね」

「マドレーヌのおかげだな」

「確かに! あの時のマドレーヌは本当に美味しかったな~」

「また、いつでも作るよ。これから先何度だって機会があるんだから」

「そうだね。翼、これからもよろしくね」

「こちらこそ、よろしくな」

 

 そうこうしているうちに、テレビの中に人々新年に向けてカウントダウンを始めていた。

 俺たちもそれに合わせてカウントダウンを言う。


「「ハッピーニューイヤー!」」

「さて、新年も無事に迎えたし、俺たちも寝るか」

「そうだね。本当に一緒に寝るの?」

「嫌か? 嫌なら、俺のベッドで一人で寝てくれてもいいぞ」

「それは寂しいから一緒に寝る!」

「じゃあ、俺の部屋に行くか」

「……うん」


 俺は三人の毛布をかけ直すと陽彩と一緒に部屋に向かった。そして、ベッドに入って寝る準備に入った。

 俺の右側に陽彩が寝ている。その顔は緊張しているみたいだった。

 

「やっぱり緊張する……」

「俺もしてるんだからそんなこと言うな。余計心臓がドキドキいうだろ」

「寝れそうにないかも」

「とか言って、すぐに寝るんだろ」

「……」


 早!? 

 陽彩の方を見るとすでに寝息をかきながら眠っていた。

 緊張はどこに行ったんだよと思った。

 きっと、今日一日ずっと気を張っていただろうから疲れたんだろうな。


「お疲れ様」


 俺はそう言いながら陽彩の頭を撫でると眼をつむって眠りにつくことにした。

 お互いの両親の顔合わせは無事に終了ってとこかな。そもそも、知り合いみたいだっただから、顔合わせて言うには微妙なところだけど。

 眠りにつくまでの間、俺は未来のことを考えていた。

 大学を卒業したらすぐにお店を出そう。そして、陽彩と一緒にお店をやろう。その夢を叶えるために俺は真っすぐそれだけを見て大学生活を送ろう。

 俺は陽彩の手をそっと握ると眠りに落ちた。


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