第79話


 大晦日もそろそろ終盤に差し掛かろうとしていた。

 後、数時間もすれば新しい年が明ける。


「お待たせしました~」


 陽彩と俺で年越しそばをリビングに運んだ。

 

「二人ともありがと。翼、悪いんだけど蓮夜さん呼んできてくれる?」

「分かった」


 俺は、蓮夜の部屋に向かった。

 扉をノックすると中から声が聞こえてきた。


「お父さん、ご飯だぞ」

「分かった。今行く」

「何してたんだ?」

「ん。新作のスイーツを考えてたんだよ」

「なるほど。いいのは思いついたのか?」

「まあ、ぼちぼちってところかな」


 机に向かって座っていた蓮夜が立ち上がってこっちを向いた。その顔は何だか満足気だった。何か面白いスイーツのアイデアを思い付いたのだろう。

 個人的にそのスイーツがどんなものなのか凄く気になる。

 今でも、新しいスイーツを作り続ける蓮夜のことを俺はすごいと思う。俺は、まだまだその域には達していなかった。俺がやっているのはしょせん蓮夜のモノマネだ。今はまだな。そのうち、俺も俺にしか作ることができないスイーツを作りたいと思っている。それをお店で販売する。もちろん、蓮夜が優勝したスイーツの世界大会にも出場するつもりだ。そのために今はいろんな知識を取り込む。知識がないと何もできないからな。


「うまくいったら、俺にも教えて」

「もちろんだ。うまく作れたらな」


 俺は蓮夜と一緒にリビングに向かった。

 リビングに戻ると三人は椅子に座って待っていた。俺は陽彩の隣に座る。蓮夜は朝美の隣に座った。

 五人がそろったところで、朝美がいただきますの合図をしてみんなで年越しそばを食べ始めた。


「美味しい~。陽彩ちゃんは料理が上手ね!」

「そんなことないですよ。私は茹でただけですから。いつもまかないを作ってくれる朝美さんのご飯には敵いません」

「私なんてちゃちゃっと作ってるだけよ~」

「それで、美味しいんですから上手な証拠です」

「彩。陽彩ちゃんいい子過ぎ~!」

「そうなるように育てたからね」

「はいはい。お母さんのおかげだよ」

「陽彩。朝美と私で随分と態度が違うじゃない~」


 彩が陽彩の肩をバシッと軽く叩いた。そんな二人は楽しそうに笑っている。どうやら、こういったやり取りはいつものことらしい。

 

「なぁ、陽彩。お姉さんは呼ばなくてよかったのか?」

「桃お姉ちゃんは職場の忘年会に参加してる。また、後日挨拶に来るって」

「そうか」

「てか、お母さんこのまま翼の家に泊まるつもりみたい」

「そうなのか?」

「うん。だって、お酒飲んでるもん」


 俺は彩の方に視線をやった。確かに彩の前には缶ビールが置かれていた。しかも、お酒を飲んでるのは彩だけではない。朝美も蓮夜もお酒を飲んでいた。

 まあ、今日くらいはいいか。大晦日だしな。


「まあ、いいんじゃないか?」

「いいの? じゃあ、私も泊まっていい?」

「別にいいけど、部屋あるかな……」

「私は翼の部屋でもいいよ?」


 陽彩がニヤニヤと笑いながら言った。

 もう、これだけ陽彩と付き合っていればこの顔がどんな時のものなのか分かる。この顔は俺のことをからかっている顔だ。

 さて、どうしてやろうか。


「じゃあ、一緒に寝るか」

「え……」

「別にいいだろ。旅館で一緒に寝たんだし」

「そ、そうだけど、ほんとにいいの?」

「いいよ」


 陽彩は俺がそんなことを言うと思っていなかったのか動揺していた。

 俺から顔を逸らすと恥ずかしそうに年越しそばを口に運んだ。


「なんだか、楽しそうな会話をしてるわね~」

「私も翼君と一緒に寝ようかな~」

「いいわねそれ! 久しぶりにお母さんとも寝ちゃう?」

「寝ないから、お母さん酔いすぎ」

「ちぇ~。ケチ」

 

 朝美は口をとがらせて不満そうに言った。

 久しぶりのお酒とこの場の雰囲気もあって朝美はすでに酔っぱらっていた。白い肌が真っ赤になっていた。


「お母さんも翼とは絶対に一緒に寝かさないからね」

「ダメなの~。翼君は陽彩だけの物ってことね」

「翼は物じゃない。けど、そういうこと」

 

 そう言って、陽彩は彩に対抗するようになぜか俺に腕を絡めてきた。

 絶対に離さないというのがビンビンに伝わってきた。

 

「二人ともその辺にしときなさい。これ以上翼たちに迷惑をかけるならお酒取り上げるよ」

「「それは嫌!」」

「陽彩ちゃん。ごめんな。この二人酔うとウザ絡みするようになるんだよ」

「大丈夫です。酔ったお母さんには慣れてるので。でも、こんなお母さんは初めて見ましたけど」

「同窓会でも苦労したよ。この二人を止めるのには……」

「「ひっど~い」」


 まだ、あんまり酔っていない蓮夜が二人の仲裁に入る。昔からそういう関係らしい。

 俺もこんなに寄ってる朝美の姿は初めて見るかもしれない。それだけ親友との再会が嬉しいってことなんだろうな。


「翼ちゃんは私の物なの~」


 このすぐに抱き着いてくる癖は酔ってても酔てなくても変わらないらしい。朝美が俺のところにやってきて抱き着いてきた。

 俺は朝美たちから逃げるようにベランダへと足を運んだ。


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ここまで読んでいただきありがとうございます! 


気がつけば、次で80話!

早〜笑

このお話も残りわずか😂

いい終わりにできるように頑張ります!

と、言いつつもおそらく続きくと思います。頭の中に構想はあるので!

 七海と愛理の番外編も考えてるのでお楽しみに〜



『隣に住んでいるお姉さんが、俺を甘やかしてくる!?(仮)』

 しれっと、四作目のラブコメ更新!笑

 三月はお隣さんシリーズになってます😁



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