第70話 【永遠のバームクーヘン】

 高校三年生の最後のテストも終わり、最後の冬休みに入ろうとしていた。

 教室の窓から外を見てみるとちらほらと雪が降っていた。


「ひーちゃん! 雪だよ!」


 俺の前に座ってる雛形がそう言った。

 さすがにこの寒さの中、屋上でご飯を食べるには無理があった。なので俺は仕方なく教室で昼食を食べていた。

 一人で食べるはずだったんだけどな。どうして、こうなったんだろうか。

 俺の隣には陽彩。その前に有川。その隣に雛形がそれぞれ自分の机を持ってきてくっつけて座っていた。


「ほんとだ~。積もるかな?」

「どうだろうね」

「積もったらみんなで雪遊びしようよ~!」

「いいわね!」

 

 女子三人で盛り上がっていて俺は蚊帳の外。まあ、いいんだけどね。もともと、一人で食べる予定だったからな。俺は黙々と弁当を食べていった。


「何やる~?」

「やっぱり、雪だるまは作らないとね」

「かまくらも作りたい!」

「さすがに、そんなに積もらないでしょ」

「分からないじゃん」

「愛理は雪合戦したい~!」

「痛そうだから却下」

「翼は何がしたい?」


 楽しそうな会話をしてるなと思っていたら、急に陽彩が俺に話を振ってきた。前に座っている二人も俺のことを見ていた。


「全部すればいいんじゃないのか」

「そうだね! 全部やろう!」

「そうね。受験が終わって、まだ雪が積もってたらやりましょう」

「やろう! やろう! ここに、受験が終わったら雪で遊び隊を結成します!」


 何それ? 

 俺の頭の中にははてなが浮かんでいた。そんな俺とは対照的に陽彩と有川はお腹を抱えて笑っている。

 もしかして、雛形がそう言うことを言うのはいつものことなのか?


「愛理ってほんとに言葉のセンスないわよね」

「だね。私の時もそうだったし」


 私の時ってことはやっぱり雛形がこんなことを言うのはいつものことなのだろう。


「もう! いいから結成するよ!」


 そう言って、雛形は四つのテーブルの真ん中に右手を置いた。その上に有川が手を置いて、さらにその上に陽彩が手を置いた。


「何してるの。翼もだよ」

「え、俺もなのか?」

「当たり前じゃん!」


 よくわからなかったけど、俺は陽彩の手の上に自分の手を置いた。


「受験頑張って、みんなで遊ぶぞ~!」

「「おー」」


 雛形がそう言って、陽彩と有川が手を真上にあげた。俺は、そのノリがよく分からなかったがとりあえず合わせておいた。


「じゃあ、その楽しみのために受験頑張りますか!」

「そうだねー!」

「そうね」


 雛形と有川も大学に進学するらしい。ちなみに、二人とも県内だそうだ。陽彩はそのことを喜んでいた。 

 三人ともいい笑顔をしている。そんな三人を見て友情って素敵だなと友達のいない俺は思った。

 窓の向こうで降る雪は大粒に変わっていた。


 

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